初学者に最適!MOSFETによる回路中心のコンパクトなテキスト――近刊『アナログ電子回路』まえがき公開
2023年3月上旬発行予定の新刊書籍、『アナログ電子回路』のご紹介です。
同書の「まえがき」を、発行に先駆けて公開します。
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まえがき
アナログ電子回路は、MOSFETやバイポーラトランジスタなどの、電流と電圧が比例関係とならない非線形な能動素子を含む回路であり、線形素子で構成される電気回路とは異なり、その動作解析は複雑である。そこで、回路の性能を解析するために、素子の動作範囲を限定することで能動素子を線形近似した等価回路が導入されている。
しかし、等価回路を用いた解析を行うには、能動素子を線形素子に置き換えるだけでなく、電源を短絡したり、バイアス回路を変形したりするなどの処理が必要で、はじめてアナログ電子回路を学ぶ人にとって、その理解は困難である。加えて、現実の不良解析、設計指針の確立や最適化などでは、能動素子の寄生効果を含めた複雑な等価回路を用いなければ必要な情報を得ることができないので、さらに理解しづらい状況となる。それゆえ、本書は、等価回路解析における回路の変形過程を、初心者が理解しやすいレベルから実践的レベルまでセクションを分けており、難易度に応じて当該箇所を選択して学修できる構成になっている。
また、アナログ電子回路では、その動作原理も、等価回路も異なるダイオード、バイポーラトランジスタ、MOSFETなど、多岐にわたる能動素子を扱うので、すべてを網羅すると、学習者が混乱することが懸念される。本書では、現在主として用いられているMOSFETを用いた回路を中心に説明し、バイポーラトランジスタを用いた基本回路の等価回路解析は、付録に記載している。
本書の構成は、以下のようになっている。最初に電気回路の基礎として、等価回路解析で必要となる知識を述べている。とくに、能動素子を置き換えるための電圧制御電圧源や電圧制御電流源および、テブナンの定理、ノートンの定理など線形回路の基本についてまとめている。2章では、半導体の基礎と、MOSFETの動作原理および基本特性に関して述べた。3章および4章では、アナログ電子回路の等価回路を導出する方法を、基本回路ごとに説明している。
アナログ電子回路の応用例は、5章以降で記載しているが、帰還回路、差動回路、発振回路、演算増幅器では、回路の概念や特徴だけでなく、具体的な回路例を併記することにより、どのように用いられるのかを直感的にわかるように説明している。また、6章の差動回路では、回路の寄生容量が回路特性に及ぼす影響に関しても記載している。
7章の演算増幅器では、加算や減算、積分や微分などの理想オペアンプを用いた基本的な機能の解析だけでなく、アクティブインダクタ回路やフィルタ回路応用にも言及する。また、オペアンプの周波数特性、大信号特性などの非理想特性についても述べる。さらには、実際にオペアンプを、MOSFETアナログ回路に組み込んで設計する応用例についても記載する。
8章では、オーディオのスピーカ駆動や無線機のアンテナ出力回路などに用いられる、電力増幅器の動作原理と、重要な指標である電力変換効率に関して述べた。9章の電源回路では、交流㽎直流変換に関しては、単純な整流回路だけでなく、エネルギーハーベストで用いられる整流回路の実際についても記述するとともに、直流㽎直流変換でも、方式の概要だけでなく、電子システムで多用される、LDOに関して詳細に述べる。
(以下略)
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MOSFETによる回路を中心として、オーソドックスな構成をコンパクトにまとめた、やさしいテキストです。
とくに、等価回路への変形過程を丁寧に説明することで、回路の動作解析の仕方を、初学者でも理解しやすいよう工夫しています。
また、具体的な回路例が併記され、どのように応用されるのかが直感的にわかるような説明となっています。
大学・高専の講義における教科書・参考書として、大変使いやすい内容です。