薄肉円筒から応力集中、き裂、クリープ変形まで幅広い問題を考える――近刊『基礎から学ぶ弾塑性力学』まえがき公開
2022年5月中旬発行予定の新刊書籍、『基礎から学ぶ弾塑性力学』のご紹介です。
同書の「まえがき」を、発行に先駆けて公開します。
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まえがき
機械設計において、部材に生じる応力が降伏応力に比べて十分に低くなるよう材料や部品の形状が決定される。しかし、最近では、応力の評価精度が格段に良くなったこと、破壊現象がかなり理解されるようになったことから、降伏応力を超えるような応力、さらにはき裂の発生も許容するような設計(極限設計、損傷許容設計)がなされるようになってきている。これにより、安全で軽量な機械構造物を実現するとともに、寿命に至るまでのライフサイクルを事前に予測し、管理できるようになった。したがって、機械設計に果たす材料力学、弾性力学、そして弾塑性力学の役割はこれまで以上に大きく、かつますます重要になっている。
著者は、「基礎から学ぶ弾性力学」を著し、降伏応力を超えない弾性状態のもとで複雑な形状の部品に生じる応力分布を求める方法について詳述した。本書では、弾性状態からさらに部材が過大な荷重を受けて永久に変形が戻らない塑性状態におかれたとき、部材に生じる応力と変形をどのように求めたらよいのか、を解説する。塑性は、弾性のようなフックの法則、重ね合せの原理が成り立たない非線形な現象である。このため、コンピュータを利用して数値解析により応力を求めなければならない。よって、本書では数値解析手法の代表的なものである有限要素法についても解説している。さらに工学上重要な問題として、応力集中問題、接触問題、構造物の弾塑性問題についても紹介するとともに、設計上これらの問題にどのように対処したらよいのかを説明していく。
これまでの弾塑性力学に関する教科書は、主にその学びの先が塑性加工につながるよう記述されているものがほとんどであった。これに対して、本書は、最近の機械設計法につながるよう配慮した。前書と本書を通じて材料力学、弾性力学、弾塑性力学を順次学んでいくことで、最新の機械設計法の基礎を身につけてもらいたい。
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◆機械設計につながる弾塑性力学について基礎から学べる入門書◆
弾性状態からさらに過大な荷重を受けて永久に変形が戻らない塑性状態。この状態におかれた部材に生じる応力と変形をどのように求めたらよいのか、を考えていきます。
材料力学の復習から始め、弾塑性の変形、降伏現象を理解し、各種問題を解いていく構成です。基本的な薄肉円筒問題から厚肉円筒問題、回転円板問題、応力集中問題、き裂問題、クリープ変形問題まで幅広い内容を扱い、ていねいに解説していきます。最後には、非線形である塑性現象を解くために必要な数値解析手法として有限要素法を使って解析します。
章末には演習問題が用意されているので、解いて理解を深めることができます。