
ネコがいる理想の風景とはネコと魚とおっさん編 ヴェニス イタリア
とにかく島に行くのが好きな僕は、ヴェニスの近くにあるブラーノ島へいくことにした。陽射しが眩しい早朝、僕はヴァポレット(水上バス)に乗り込んだ。嬉しさのあまりこぼれ出てくる爽やかな笑顔を、乗客に振りまきながら約40分の船旅が始まった。
アドリア海に浮かぶ島
船は順調に進み、ヴェニスが小さく見えるようになる頃、前方に四方をレンガで覆われた小さな島が現れた。同乗していて世話を焼いてくれるおばあちゃんに、「ばあや、あの島は何だい」と聞くと、「あれはお墓の島よ。有名人も何人か眠っているけど、この前の雨で今は水浸しね」と教えてくれた。一体どんな状況になっているのか見てみたくもないが、いろんなものがプカプカ浮かぶ姿を想像しただけで怖いので、それからは楽しいことを考えることにした。
やがて1時の方向にブラーノ島が見えてきた。初めはおぼろげだった島の姿も、近付くにつれ次第に姿を露にしてきた。島の中心には傾いた尖塔が建っていて、地図で見る限り大小2つの島から成り立っているようである。船は島の北東部にある水上バス停に到着した。早速適当にネコ探しに出発した。細い道を曲がると目の前には、カナル(水路)があり、両岸にはこれぞイタリアといわんばかりの、原色で彩られた町並みが飛び込んできた。そして家々の間にかけられた洗濯ロープには、太陽を待ちわびていた洗濯物や、色鮮やかな傘などが青空の下で気持ちよさそうにはためいていた。
「ネコはどこだろう」と美しい町並みを楽しみながらも、獲物を探す猛獣のように鋭い目で辺りをうかがいながら歩いていると、カンポ(広場)に出た。どこからか魚を焼く匂いがするので匂いの方向に目をやると、おばあちゃんが七輪で魚を焼いていた。よくこういった風景にはネコがいて、分け前をもらうのを待っているのが定番で、僕自身そんなのは理想論だと思っていた。が、なんといたのである。白黒のブチネコがおばあちゃんの後ろで分け前の魚をもらって食べていたのだ。本当にこんなことってあるんだなと喜びつつまた島を当てもなく歩き始めた。

たくましく生きる島のネコ
漁船が停泊している一角があり、そこには漁を終えたばかりの漁網が天日干しされていた。青空に生える漁網を撮影していると、端で何かにがっついているネコを発見した。近付くと逃げるので、遠くから慎重に様子をうかがうと、ジャストサイズで網にかかり、取れなくなった小魚をおいしそうに食べていた。どこに何があるかを知っているのはさすがネコといったところである。この周辺にはもっとネコがいると僕の勘がいっているので、キョロキョロと不審人物のように歩き回っていると、ちょうど朝の漁から帰ってきたばかりのおっさんが、獲物を陸に揚げているところに遭遇した。
そのすぐ後ろには、獲物をじ~っと見つめる2つの小さな影の姿もあった。おっさんはでっかいバケツ2杯にニシンのような魚を山盛りで大漁の感じである。ネコたちは「魚くれ」熱視線をおっさんに発していたが、おっさんはどうやら「絶対にお前らに魚なんかやらんもんね」という、あくまで無視という強硬な姿勢を崩さない。しかしその均衡はすぐに破れることになる。おいしそうな魚の誘惑に負けたネコが、重い腰を動かしておっさんの足元で「ニャ~ニャ~」と甘えた声を出しながら擦り寄っていった。するとおっさんは、初めは鬱陶しそうにしていたが、ネコと遊び出した。そして、「お前らには負けたよ」といったか知らないが、各ネコ1匹ずつにしんのような魚をあげていた。
僕は「なんだおっさんもネコ好きなんだ」と思うとなんだか幸せな気分になった。

その船はどこへいく?
ブラーノ島でのネコ探検を終えて、来るときと同じヴァポレットに乗り込んだはずだった。が、40分経過する頃には、今まで見たことのない島へ進んでいることに気が付いたのだ。
「ここは一体どこやねん」と変な関西弁で取り乱しながら地図を見るが、まったく見当がつかない。これ以上乗っているとどこへいくかわかったものじゃないので、とにかくヴァポレットを降りることにした。そういえば来るときよりもでかい船だ。慌てながらもこの観察眼は我ながらさすがである。それにしてもここはどこなのだろうか。とまどいつつも次にやってきた小さなヴァポレットに乗り換えると、なんとかヴェニスに帰ることができた。結局1時間以上もかかるハプニングだった。その後の調査で、偶然流れついたあの島は、映画の舞台として有名な「リド島」であることが後に判明した。
くたびれ気味で宿に帰ると、アンドレが僕の部屋の前で、待ちくたびれた様子で座っていた。

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