Be yourself~立命の記憶Ⅰ~⑨
◆第5章:出発の日(1)
10月28日(金)。
旅行前の最後の出勤日、私は午前中からオフィスに居た。
その日は、通販の注文数がちょっと多い日だったような気がする。
刈谷さん「はい、これ。」
私「あ、洋服ね!ありがとう!」
黒のワンピースと、上に羽織る長袖の黒のカーディガンも持ってきてくれた刈谷さん。
優しいなぁ。
早速試着する私。黒色の麻のコクーン型のロングワンピース。生地がとっても軽くて動きやすい。産後体型でお腹ポッコリの私にピッタリ。よし、デブなの誤魔化せそう。
私「いいじゃん!いいじゃん!ねぇ?」
刈谷さん「うん、いいですね。似合いますよ。」
私「こっちの羽織るやつも、ステキ!ありがとう!」
刈谷さん「どういたしましてー。」
お土産買ってくるね!と言いたかったが、お土産を買う時間があるか分からない。ましてや今の私、頭ポヤンポヤンのおバカさんになってるから、見知らぬ土地で見知らぬ通貨で買い物出来るかすごく不安だった。
私は、約束すると、どうしても守らないといけない、という気持ちになってプレッシャーになるので、気軽にお土産買ってくるなんて言えなかった。
私は、借りた洋服をしまうと、自分の席について、また考え始めた。
そして、話しかけた。
私「ねぇねぇ、ちょっと聞いてもいい?」
刈谷さん「何ですか?」
あれ、なんでそんなに冷たい感じなの・・・。
もうみんな話聞くのイヤなのかな・・・。
私「いやぁ、私、彼の事が好きってバレたらマズいよね?」
刈谷さん「いやぁ、いいんじゃないですか?」
私「大丈夫かな?」
刈谷さん「だって、どうせバレますよ。その顔じゃ。」
私「えっ!バレる?バレる顔してる?」
金さん「してる、してる。」
刈谷さん「超してる。」
私「えぇー、マズいなぁ・・・彼、私が彼のことを好きな状態だと会ってくれなかったんですよ?」
刈谷さん「いや、だからそれは、昔の話で、本当は好きだったんだってば。」
私「いや、だからそれは無いって。彼めっちゃ冷たいもん。」
刈谷さん「まだ、分かんないんですかー??」
う・・・、刈谷さん、ちょっと怒ってるでしょ・・・
私はみんなの機嫌を取るために、話を切り出した。
私「あ!お土産何か欲しいものある??でも買ってくる時間があるか分からないんで約束出来ないんだけど。」
刈谷さん「タイって言ったら、何があったっけ?」
金さん「シルクが有名だよね。」
私「あ!タイシルク有名だね!そうだ、シルクの下着とかいる?」
二人「いらなーい。」
私「えー、そうなの??」
刈谷さん「だって、洗濯機で洗えないから面倒だし。」
金さん「手洗いイチイチするのめんどくさいよねー。私パジャマだったら欲しいけど。」
刈谷さん「あー!いいよねー!シルクのパジャマ!」
私「いや、ちょっと待って、シルクのパジャマは高すぎるでしょ。」
金さん「いくらくらいなの?」
私「だって、日本で買うと4万円とかするよー。あたし欲しくて探した事あるもん。」
金さん「高いよねー。」
刈谷さん「パジャマに4万ってバカか!って感じ。タイで買うのがいくらなのかによるよね。」
金さん「あったら、私お金出すから買ってきて欲しいな。」
私「あ、それなら出来るよ!」
刈谷さん「で、いくらなの?」
私「あ、彼に聞いてみようか!」
もう、連絡出来るってなったら、ワクワクしすぎの私。
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愛
2016/10/28 11:12
すみません、質問でーす。
シルクのパジャマが売っている所はありますか??
いくら位か分かる??
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む、返事が無いぞ。困ってるのかな?あ、そうだ、男性自身が知らない事聞いた時って、たまにすごい調べて教えてくれる人いるんだよね。
そこまでしなくても、知らないって言えばいいのに、なんで?
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愛
2016/10/28 11:34
ウチの会社の女子達があったらお金払うから買ってきて欲しいって言われて。
あ、2日目のショッピングモールで探せばいいかな?
ニノ
2016/10/28 11:35
タイシルクは有名なのでホテルの近くのデパートにあると思うけど、値段はピンキリかな。
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私「値段はピンキリだってさ。」
刈谷さん「ピンとキリが知りたいわ。」
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愛
2016/10/28 11:36
隣でピンとキリの値段を知りたいと言っております。
あ、わかんなかったらいいんですー。
現地のデパートからLINEでみんなに連絡する!
じゃ、とりあえず2日目の午前中、そこのデパートに行ってみます。
ニノ
2016/10/28 11:42
初日にある程度の場所は教えますね。
愛
2016/10/28 11:42
ありがとう!
ニノ
2016/10/28 11:43
アウトレットとかもあるので、あとは好みと品質次第だと思います。こればっかりは実際に手にとって見てもらわないと人によって感覚違うからうまく伝えきれないですね。
愛
2016/10/28 11:47
だよねー。じゃ、現地からみんなに相談しよーと。
ありがとう。
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私「よし、じゃぁ、こういう事なので、現地からLINEで写真と値段を送ります!」
二人「よろしくー。」
私「あ、そんでさぁ、やっぱあたし、好きなのバレバレ?」
金さん「バレバレ。」
刈谷さん「だからバレバレだってば。」
私「そっかー・・・どうしよー・・・」
みんな帰り支度を始める。
あれ、やっぱりもう帰っちゃうの・・・。
そうだ!私話する時に気をつける事を書いておこう。
私は、みんなを引き止めた。
「あ、ちょっと待って待って、私、気をつける事メモしておくから!」
私はパワポを開いて、タイトルを書いた。
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話をする時に気をつける事
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私「はい、じゃぁ、えーとまずなんだ、私空気読めないからそれ分かっておかないとね。」
カタカタカタ・・・
私「あと恋愛の駆け引き出来ないし、言葉の裏が理解できないね。」
カタカタカタ・・・
私「あ、あと、価値観の違いを理解してもらおう。」
カタカタカタ・・・
私「ねぇねぇ、あと何かあるかなぁ?」
刈谷さん「ホテルの部屋まで付いてきたら警戒したほうがいいですよ」
私「え、そうなの?ドアの前とかでチュー出来ないの?」
金さん「部屋まで送るよって言われても、連れてきちゃダメよ?」
私「え、でもそれだったら、別れ際チューも出来ないじゃん。」
刈谷さん「ロビーで軽くじゃない。」
金さん「昔とっても好きでした。傷つけてごめんね、ありがとう、でおしまいよ。」
私「えぇぇぇぇー、だって20年も好きだったんだから、チューぐらいさせてくれよー!」
金さん「アハハハハ」
金さん「あ、あとね、家に来る?って言われたら『いいんですか?』って言うのよ。」
私「いいんですか?って?」
金さん「そ。『いいんですか?』ってね。」
まったく意味が分からない私・・・。
刈谷さん「まぁ、チューだけじゃ終わりませんって。」
金さん「もうね、出たとこ勝負よ。」
刈谷さん「森川さんがしたかったらすればいいし、したくなかったらしなきゃいいんですよ。」
私「え!いやいや!だって最後までしちゃったらバレちゃうよ!」
刈谷さん「バレませんよー。」
私「イヤイヤイヤイヤ、バレるって!絶対バレる!あそこの大きさ変わるらしいよ。」
刈谷さん「んなワケないでしょー。」
私「イヤ、TVで言ってたんだって。浮気相手のサイズになっちゃうからゆるくなったりするって。」
刈谷さん「迷信でしょー。」
私「いやぁ、まぁ、そんな身体の問題よりも、ウチの主人に隠し通せる自信がない。」
金さん「まぁ、それはそうだわねー。」
私「隠すというよりも、あんなにステキなウチの主人を裏切るワケにはいかない。」
金さん「今回のきっかけだって、旦那さんが許してくれたからなんだしねー。」
私「でしょ?だから、私は絶対最後までしない!決めた!絶対しないぞー!おー!」
金さん「まぁ、海外だからねぇ。」
刈谷さん「海外だしねぇ。」
私「イヤー!もうやめてやめてー!」
刈谷さん「まぁ、したかったらすればいいと思いますよ、私は。」
私「えぇぇぇ??もーぅ、そんな事言わないでよーぉ・・・。」
刈谷さん「じゃぁ、まぁ、お気をつけていってらっしゃーい。」
金さん「お気をつけてー。」
私「はーい・・・。」
二人「お疲れ様でしたー。」
私「はーい。気をつけていってきまーす。お疲れ様ー。」
もー、どうしよ・・・。したかったらすればいいって・・・。
私、言われた事をそのまま真剣に受け取ってしまうんだよね。
ちょっと自信無くなってきた・・・。
そして、私は、もうひとつの資料の続きを作る事にした。
続き→◆第5章:出発の日(2)
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