おかげさまで7周年
これまでの7年
モリカトロンは、2017年8月17日に生まれました。今年で7年。
第一印象は、よくやってこれたな。ほっ。しっかし、忙しかったな。
です。
ゲーム、エンタメAIの研究開発に特化した会社なんてのは、2017年当時どこにもありませんでしたので、「お手本」がないスタートとなりまして、紆余曲折の連続でした。(現在も絶賛曲折中ですが…)
業界に対してどんなお手伝いができるか、どんなことを求められているのか、そこにどうAIを活用していったら良いか、一つ一つが手探りでした。
ローカルのデバイスで動くことが前提とされるゲームにおいて、当時のディープラーニングに代表される多層型のニューラルネットワークは巨大すぎ、簡単には使えませんでした。
AIの正しい認知
また、AIに対する業界内の認知度も今よりうんと低いものでした。
「AI」というのは、その言葉の知名度に反して、その機能は意外とちゃんと知られていません。
さらに、ゲーム業界では、現在の生成AIブームよりうんと前から、ゲームAIという「コトバ」がよく使われていました。ただその内容は、いわゆる機械学習とはかなり違い、例えば、「体力が50%以上残っていたら戦え、そうでなければ逃げよ」程度の条件分岐でさえAIとよんでいたりします。
もちろん、AIの正式な定義はないので、間違いというわけではないのですが、自分たちが推し進めようとしていた機械学習系のAIとはかなり距離がありました。
「AIとはそういうもんだろう」という先入観を一旦捨ててもらうことになるので、マイナスからスタートすることも少なくありませんでした。また、逆にAIを「魔法の杖」のように思われ、「どんなやっかいな問題もAIを使えばなんとかなっちゃうんでしょ?」というムチャな期待値から始まることもあったりで、「等身大」のAIを理解してもらうところから始めることもたくさんありました。
これはクライアントが不勉強ということではなく、AIというものが意外とわかりづらい技術であるということです。
2017年当時より今はずいぶんとAIの正しい認知も広まってきていますが、まだまだAIの啓蒙活動も重要な仕事です。
エンタメにAIを取り入れる啓蒙活動
私自身は30年前から、AIを使ったゲームを開発してきましたが、モリカトロンを立ち上げる際に、自分のAIゲーム制作は優先度を低くしていました。
それよりもゲーム業界全体に対して「AI活用の必要性、面白さを伝える」そのために最新のAIの研究とゲーム応用の技術を開発して提供をすること、業界の啓蒙活動、AI人材の育成を第一の目標としようと決めていました。
2012年にディープラーニングが生まれ、同じ頃、AAAゲームの開発規模が大きくなりすぎて、チキンレースになりつつある状況が進む中、今こそゲーム開発にAIを活用すべき時代だと思ったからです。
AI人材の育成も最初から大事な「仕事」だなと思います。仕事と言っても直接の収益という意味での仕事ではなく、ゲーム、エンタメ業界に貢献するという意味での仕事です。
AIエンジニアの育成はもちろんですが、今一番必要なのはAIプランナーだと思っています。AIをゲーム、エンタメツール、サービスにどう使えばよいか。AIを使うことで従来と違う新しい「楽しさ」を生み出すことができるか。それをどう商品としてまとめたらよいか。そういうことを考えられるプランナーが必要です。
ただし、そのためには、AIの機能、ポテンシャルを前提に置きつつ、同時に面白いアイデアを考えなくてはなりません。ゲーム企画やエンタメサービスを考える文化系脳とAIの機能を理解する理科系脳、両方を持ち合わせている必要があります。こうした人材はどうやったら見つけたらいいのか、どう育てたらいいのか、そこからのスタートになりますので、なかなか大変な「仕事」ではあります。
しかし、問題想起型のAIプランナーと問題解決型のAIエンジニアがタッグを組んだとき、最強のチームが生まれるのは間違いないことなので、がんばる意味はあるなと思っています。
これからの7年
これまでの7年、どのくらい世間、というかゲーム業界のお役に立てたのか、自分たちではよくわかりませんが…
2022年ころからは生成AIが実用レベルにまで技術進化してきて、いよいよゲーム及びエンタメ領域でAIを使うための環境が整いつつあるなという実感があります。
これからの仕事を7年間で区切っているわけではありませんが、というか現状のAIの進化スピードを考えると7年後の未来なんて全く予想不能と思っていますが、これからの7年は今までの7年に比べて、AI活用のカードがもっともっと増えて、やれること、やるべきことが加速的に増えていくだろうなと予測しています。
それに合わせて、モリカトロンがやることも今以上に多様化していこうと思っています。ただ、基本的な理念はかわりません。
AIをゲーム、エンタメ領域に活用するための研究開発、業界へのAIの啓蒙、AI人材の育成です。
また、ゲームに使われるAI技術は、他の業種にも転用可能です。例えば、ゲーム業界のUI、UXに対する知見は他の業種よりかなり進んでいます。ゲーム制作では、UIのシンプルさ、視認性、合理的な階層構造などに対して厳しく吟味します。ゲームの面白さに直結する重要な要素だからです。ゲーム業界は厳しく鍛えられているので、UI、UXの知見は他の業種に比べて大変進んでいると思います。
ゲームAIの技術もまたしかりです。ゲーム内で使うAIもまた厳しく鍛えられていくことが期待できます。正しいだけでなく、楽しいAI技術は他の業種のサービスにも必要な技術になるでしょう。ゲーム業界で鍛えられたAI技術がコアとなって、他の業界を牽引していく、そんな未来も夢ではないと思っています。
これからも力が続く限り、エンタメAIの可能性を信じ、研究開発を進め、成果の発信も積極的にしていくつもりでいますのでこの先も、ご支援ご鞭撻、そして“ご発注”を何卒よろしくお願いいたします。
2024年8月吉日
モリカトロン株式会社 代表取締役 森川幸人
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