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【AI受託開発事例】ゲームとAI、ソフトウェア開発の強みを活かした協働を実現|ベリサーブ様


❚ インタビュー概要

■インタビュー参加者  
AIQVE ONE株式会社 取締役CTO 
 松木 晋祐氏(写真左)
株式会社ベリサーブ  
 プロダクトソリューション事業開発部
 エンタメQAソリューション開発課所属
 田中 志弥氏(写真右)

■お取引概要  
次世代ゲームテスティングソリューション「Playable!」の開発

■開発の課題
人力に依存していたQAの自動化

モリカトロンAIラボでは、これまで次世代ゲームテスティングソリューション『Playable!』について、さまざまな記事を公開してきました。
こうしたなか2024年9月、同サービスを販売するAIQVE ONE株式会社取締役CTOである松木晋祐氏と、同社の親会社であるベリサーブのプロダクトソリューション事業開発部エンタメQAソリューション開発課所属で、同AIの開発に携わった田中志弥氏にインタビューを行いました。

❚ 頻繁なアップデートに伴うテストで強みを発揮

――Playable!の強みや特徴を教えてください。

田中志弥(以下、田中):Playable!をざっくり説明しますと、ゲームに特化したテスト自動化ツールです。このツールのテスト対象は3Dアクションゲームであり、新製品であるPlayable!Mobileはモバイルゲームに特化しています。

これらの製品の特徴は、自動化テストのためにプログラムを書く必要がないところです。生成AIを活用しているので、日本語でテストの指示を出せるのです。そのためコードが書けないテスターでも使えるという強みがあります。また、生成AIが日本語の指示を解釈するので、ある程度柔軟なテストが可能となっています。

Playable!は、現在人海戦術的なアプローチにたよっているゲームのテスト環境を変えていくことを目指しています。将来的に労働人口が減る日本においては、反復的なテストはAIツールに任せて、人間は高度な開発支援的QAを担当するのが理想と考えています。


――Playable!を使えば、コリジョンチェックやアイテムの回収のような網羅的なチェックができるのですか?

田中:目的が明確なテストについては、壁抜けチェックに特化したツールのほうが最適な場合があります。Playable!を使ったテストでは、人間とPlayable!をふくめたツールの役割分担が重要となります。

松木晋祐(以下、松木):Playable!で使われているAIの特徴として、ざっくりとした指示でも動くかわりに「確実にこのタスクをやりなさい」という厳密な指示の実行を得意としていないところがあります。厳密なタスクをPlayable!にやらせるには、厳密な指示を出す必要があるのです。Playable!を使いこなすには、どのタスクをやってもらうかを人間が的確に判断することが大切になります。


――Playable!にどのように指示を出すと、うまくタスクを実施してくれるのでしょうか。

田中:何をしたらタスクが成功なのか、あるいは失敗なのかといった条件を与えることが大事になります。例えば「画面上の敵を倒す」といった指示では、「画面から敵がいなくなる」という条件を与えるとうまく動作します。
そして、何が成功で何が失敗であるかを最終的に定義するのは、人間の役目となります。

現時点のPlayable!には、人間が見つけられないような不具合を見つけることをあまり期待できません。Playable!が得意なのは、ゲームのリリース前に毎回実施するデグレチェックのようなものです。Playable!を使えば、アップデートで生じた微妙な差異を吸収して、一貫して同じ品質のテストを実施できます。こうしたテストは、人間が実施すると見逃す箇所があったりするものです。


――モバイルゲームでは、アップデートの直後に不具合が見つかって運営が謝罪する、という流れをよく見かけます。デグレチェックが得意なPlayable!は、こうした問題に対して強みを発揮できると考えられるのでしょうか。

田中:ゲームが肥大化する一途である現在では、アップデートの度に人手で網羅的なデグレチェックを行うのは難しくなっています。Amazonは1日に40回から50回のアップデートを実施しているという有名な話がありますが、こうした状況ではテストを自動化せざるを得ません。Playable!は、頻繁なアップデートに伴う自動化テストに強みを発揮できると思います。


製品化に至る苦労をモリカトロンと共有できた

――Playable!開発の過程でモリカトロンとの関係が生じたわけですが、その経緯を教えてください。

松木:ベリサーブは以前からゲームQA業界に参入したかったのですが、この業界はすでに大手の会社が大きなシェアを持っていました。こうした状況でこの業界に入るには、何かしらの強みが必要となります。その強みとしてテスト自動化を掲げたうえで、ブームが到来していたAIも使ってみようと考えました。

そんななかゲーム、AI、そしてソフトウェア開発の3つの強みが揃っている会社を探すと、モリカトロン株式会社しかありませんでした。2年ほど前の話ですが、モリカトロンでもゲームQAのプロジェクトに取り組もうとしていたので、(モリカトロン株式会社代表取締役の)森川さんとお話しさせて頂きました。

モリカトロンと一緒に開発してわかったのは、モリカトロンがR&Dに特化した組織ではないことです。研究だけではなく、研究成果を製品化する過程で経験する生みの苦しみのようなものを、モリカトロンと共有できたことがすごく嬉しかったです。


エンタメ産業で培った知見を多業種にも生かしたい

――モリカトロンとの共同開発に関して、感想をお聞かせください。

田中:モリカトロンとは、Playable!の改善点やユーザ視点から喜ばれることをいっしょに考えていけたところが、すごく助かりました。

松木:モリカトロンはゲームのドメイン知識が豊富なうえに、AIについても生成AIブームのずっと前から取り組んでいるので、安易に技術的な流行りに流されないところが素晴らしいと思いました。解決策も生成AI一択ではなく、ナレッジグラフを提案して頂いたことがありました。

また、モリカトロンから毎週動画で成果報告をあげて頂いたことも、非常に助かりました。動くものを短時間で見せるというのは非常に難しいことなのですが、そうしたことを当たり前に実行していたことから、モリカトロンのエンジニアの自信を感じました。

――モリカトロンに今後期待したいことは、何ですか?

田中:現状でもよくして頂いているので、今後とも引き続きよろしくお願いします、というのが率直な気持ちです。ですが、現在活用している技術ではPlayable!の限界が見えている部分もあるので、その部分について研究して、その成果を製品に落としこみたいです。


――Playable!の改善点として、どのようなことを考えていますか。

田中:改善に取り組んでいることは2つあり、1つはタスク実行精度を上げていくことです。もう1つはコストの問題です。Playable!ではOpenAIのAPIを使っているので、このAPIの使用費用がかかります。

松木:また、最近ではAIであっても100%の精度を発揮できるわけではないということが共通認識として浸透してきていますが、そうは言っても100%が求められるケースもあります。これら問題について、代表の森川さんをはじめ、
モリカトロンのメンバーはAIの最新技術に関する知識をお持ちなので、一緒に建設的な議論を行いながら、日々機能の改善策を検討しています。

――2024年11月にPlayable!Mobile正式版がリリースされますが、Playable!に関する中長期的な計画を教えてください。

田中:現在のPlayable!Mobileβ版は限られたお客様にしか使って頂いておりません。今後は、ユーザがWebから申し込めばすぐに使って頂けるようにして、どんどんお客様を増やしていきたいと思っています。

また、現在の想定ユースケースはUnityで制作されたリアルタイム操作を要求されないゲームのQAに制限しているのですが、もっと幅広いゲームジャンルにも対応できるようにします。さらにUnityだけではなくほかのゲームエンジンや、ゲームに限らずウェブサービス全般に適用範囲を広げて、ユーザを増やしていきたいです。

松木:AIQVE ONEでは「エンタメ技術で未来を照らす」というビジョンを掲げ、ゲームをはじめとするエンタメにおけるテクノロジーを、エンタメ以外の業界に活用することを目指しているのですが、Playable!をゲーム以外のQAで活用するのはまさに目指していることの実現となります。様々な業界にエンタメで培った技術を届けていくなかでPlayable!も活用して頂いて、弊社とお客様がいっしょに成長することを願っています。

またPlayable!が、日本でゲームQAに携わっている方々が持っている価値を発揮する手助けになるツールになってほしいとも願っています。

❚ モリカトロンお問い合わせ先

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