『暗号資産の「匿名性」はキャッシュレス決済普及には効かない。市場ニーズと区別することの重要性』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2023.12.26
■ビットコインなどの仮想通貨の「匿名性」とは何を示しているのか?
昨日の夜は某所で忘年会でした。
コロナ禍を経てようやくリアルに会えるようになり、久方ぶりに近況を話している中で、「お店で暗号資産決済をする時に、匿名性を高める技術」が、暗号資産決済を普及させる!と盛り上がったんだーという話を伺いました。
私は「匿名決済が暗号資産のキラーになるとは思えない」と即座に応答しました。
多くの人は決済の身バレでは困っていない
理由はシンプルで、街のお店が「クレジットカードは匿名化されていないからお客さんが来てくれない」などの匿名化の課題を抱えておらず、またお客さん側も、「身バレするからクレカを使いたくない」という人も多くないからです。つまりユーザーニーズが薄いのです。
今あるお店の抱えるペイン、課題は
・電子決済やクレカの決済手数料が高い。
・売上から入金まで日にちがかかる。
現金商売がなくならないのは主にこのせい。
です。
そしてお客さんも、個人が特定されない範囲で購買履歴を決済事業者に渡すことで「ポイント」を獲得できる方を選んでいるのが現状です。
つまり、買い物における身バレ・匿名性では、多くの人は困ってないわけです。
買い物履歴を匿名にしたいニーズが全くないわけではなく、悪い方法で手に入れたお金で買い物したいケース、風俗店など来店したことの足跡を残したくないケース、売上金をごまかして脱税したいケースなどはあると思います。しかし、それらのニーズは世の中のメジャーではありません。
Web3の中の課題と市場ニーズを混在しがち
いわゆる暗号資産ミキサーのように匿名化するソリューションは世の中にはあります。マネーロンダリングに使われがちだということで各国が規制をかけている分野ですが、もとは暗号資産が国以外が発行したお金であることの特性を延伸させるかたちで、取引を他人に知られたくない、特に国に捕捉されたくないというニーズから開発されたものです。
Web3、ブロックチェーン、NFT、暗号資産の界隈の人と話している時によく「中の課題」を「社会の課題」「市場のニーズ」とごっちゃにしがちだと感じることがよくあります。自分もよくやってしまうので、「中の課題解決」と「市場のニーズ」を分けて考えることは意識的にやらなきゃな、と改めて自戒します。
ブロックチェーン技術で匿名ネット選挙も実現?
お店での支払いでは「匿名性」は普及の鍵にはならないとしましたが、せっかくなのでブロックチェーンの匿名性が活きる例として「ネット選挙」を取り上げたいと思います。
かなり前の記事ですが、DAOでも用いられることがあるガバナンス投票の仕組みや技術を使い、ブロックチェーンによるネット投票を実現させたことを取り上げた記事です。
改竄不可能、なりすましなどの不正も防止でき、ネット投票なので24時間&場所を問わず投票が可能、開票作業も自動で瞬時、そして投票システムを開発する場合のセキュリティ担保などにかかる工数も大幅に低減できるというメリットがあるとされています。
ブロックチェーンを使った投票は「誰が」投票したかの個人を特定することが困難です。毎選挙で専用のウォレットや投票権FTを作るなどは必要ですが、選挙では投票者の匿名性が活きます。
国政選挙に使うにはハードルが高いですが、マンションの管理組合の議決投票など、身近なところから使われるようになるといいなと思います。
封筒に入った紙束と、手書き記入する議決権投票用紙と、郵送用の封筒。この手書きアナログなマンション管理組合の運営を早くDXしてほしいと、管理組合から書類が送られてくるたびに強く感じています。