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『「先生になりたい」を取り戻す、AIが変える教師の未来』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.10.16

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■Qubena教科書×AIコンテンツ、2025年4月より令和7年度版の新教科書に準拠対応

株式会社COMPASSは、同社が開発・提供する学習eポータル+AI型教材「Qubena」の「Qubena教科書×AIコンテンツ」において、中学校の問題を令和7年度版の新しい教科書に準拠対応することを2024年10月15日に発表した。提供開始は2025年4月予定。
Qubena教科書×AIコンテンツは、文部科学省検定済みの主要教科書に準拠した問題を、児童生徒一人ひとりの習熟度に合わせてAIが出題するサービス。

これまでの紙の教材や集団授業では、生徒それぞれの学習進度に応じた柔軟な対応をすることが難しいという課題がありました。全員が一律に同じペースで学ぶことを求められ、個々の生徒の理解度や興味に合わせたサポートが不足しがちでした。

しかし、AI教材の登場によって、このような課題が解決されます。AIは生徒一人ひとりの学習進度や習熟度に応じて最適な問題を提供し、個別化された学習体験を実現します。これにより、生徒は自分のペースで効果的に学ぶことができ、学習の質が大きく向上します。

AI教材の導入によって、教師が抱える課題も大きく改善されます。例えば、これまで多くの時間を割いていた授業準備や評価業務がAIによって効率化されることで、教師は本来やるべき「教えること」や「生徒と向き合うこと」に集中することが可能になります。AIが教師の補助を担うことで、教師の負担が軽減され、生徒との関わりにより多くの時間を割けるようになります。

今回は、AIが教師側に与える効果について考察してみます。

教師の成り手不足の現状

AIが学習に深く導入されていく未来において、教師の役割は大きく変わっていくと考えられます。現在、教師たちは多くの業務に追われており、生徒に対して十分に時間を割くことが難しい現状があります。また、「給特法」による報酬体系が労働時間と見合わないこともあり、「先生になりたい」という動機が忙しさと人手不足で満たせず、長時間労働で報酬も低い。そんな状況であることが就職を控える学生にも広く知られるようになった結果、教師の成り手不足が深刻な問題となっています。

・公立小中学校のほぼ20校に1校で教師不足が発生 ※21年5月時点
・教員不足が悪化している自治体は42.6% 23年始業日時点

そんな現状、AIと教師が分業し、教師が本来やるべきことに集中できる環境が整えることで、本来の教職の魅力を取り戻すことができるのではないかと思います。

AIで教師がやるべきことに集中できる環境に

今回の「Qubena」のようなAI教材の導入によって、生徒一人ひとりの理解度に合わせた個別学習のサポートを行い、教師は特に支援が必要な生徒へのフォローに集中することができるようになります。一人ひとりの習熟度に応じてAIが出題するということは、受け持つ生徒の習熟度を可視化し、教師がそれを知ることができるということでもあります。

また、AI教材は自主学習を最適化するツールですが、生徒のモチベーションを上げたり悩みを解消する支援をするのは引き続き人間の重要な役割です。そもそもAI教材は自主学習に向いたソリューションですが、生徒が自主学習を効果的にできるようにするには、生徒のモチベーションを高めることが必要です。

ゲーミフィケーション要素を組み込むなどAI教材自体にやる気を上げさせる工夫ができる部分はありますが、生徒が学ぶ意義を感じられるように励ますことや、挫折しそうなときに支えるなど、やる気を出させるのは未だ人間の大きな役割のひとつです。

他にも、社会的スキルやクリティカルシンキング、創造性を育てるためには、生徒同士や教師とのリアルなやり取りが不可欠であり、ここでもAIには限界があります。

働き方の面ではどうでしょうか。OECDの国際教員指導環境調査(2018)によると、日本の教員の1週間の仕事時間は、小中学校ともにOECD参加国中最長です。中学校では週に56時間と、OECD平均の1.5倍もあります。

その内訳を見ると授業時間も平均を上回っていますが、顕著なのは「課外活動」「事務業務」「授業計画準備」に費やす時間の長さです。課外活動は中学校、事務業務は小中学校、授業計画準備は小学校でそれぞれ、参加国中最長です。その一方で、教員が自らの職能開発に使う時間は参加国中最短という現状です。日本の先生が、いかに授業以外の職務に追われ、学習面の充実が後回しになっているかを端的に表しています。

また、生徒に向き合う以外の時間の多忙さもAIの導入によって解消することが期待されます。授業準備や評価、成績管理といった反復的な業務は大幅に効率化され、教師の負担が軽減されます。

「授業や生徒との向き合いで忙しいのは本望だが、それ以外の時間に忙殺されることが問題だ」という声もよく聞きます。今回はAI教材を話のきっかけにしていますが、AIが教育現場で最も活躍しなければならないのは雑務の削減かもしれません。

AI導入を教育予算削減に使うな

AIによる時間とコストの削減が実現すれば、その分のリソースを教育の質の向上や教師の労働環境の改善に再投資することが重要です。

しかし、AI導入によって削減されたリソースを理由に、国が教師の人員や予算を削減してしまうと、結局は元の問題に戻るばかりか、教育の質がさらに低下する可能性もあります。AIを教育予算の削減に使ってはいけません。

仮に財務省が言うとおりの政策を進めると、おそらく、加配定数すら削減された学校現場はさらに苦しくなり、いっそうの教員不足、欠員が起きる。今でも、少人数指導を本当はしたかったが、加配されていた人を引っこ抜いて、学級担任の欠員補充に回している小学校などは実に多いからだ(私も参画している「#教員不足をなくそう緊急アクション」の調査からも示唆される)。

そして、欠員状態で多忙を極める学校では、病休や離職が増える。そんなところに講師登録してくれる人も少なくなるので、教員不足はさらに深刻になるという悪循環が待っている。

AIで「先生になりたい」を取り戻す

AIと教師が分業することで、教育の質を高め、教師が抱える多忙な状況を改善することが目指されます。そのためには、AI導入によって得られるリソースを単に削減するのではなく、教育の質向上に再投資することが必要です。

AIと人間の教師がそれぞれの得意分野で補完し合うことによって、生徒にとって最適な学習体験を作り出すことができ、「先生になりたい」と思える環境を作ることにAIが活用されることが、最も理想的なAIの導入のカタチだと考えます。

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