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『自動円転機能搭載「SBI Web3ウォレット」web3マスアダプションの課題』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.1.27

■SBI VCトレード、自動円転機能搭載「SBI Web3ウォレット」提供開始

暗号資産(仮想通貨)取引所などを運営するSBIグループのSBI VCトレードが、日本円だけでオンチェーンNFTの売買が可能な「SBI Web3ウォレット」を1月25日より提供開始した。

「SBI Web3ウォレット」はSBI VCトレードがSBI NFTとGincoと共同で開発したウォレット。パブリックチェーン上でのNFT事業展開において、事業者及びユーザーが暗号資産を持たなくとも、オンチェーンでNFTの売買が可能となるサービスだ。同社によると、このような仕組みのウォレットサービスは日本初だという。

暗号資産ウォレットといえばMetaMaskがクリプトネイティブにとってはデファクトスタンダードですが、多くの人にとっては非常に使いづらいのは事実。

MetaMask自体の「わかってる人向け」すぎる使いづらさはもちろんのこと、MetaMaskに入れておく暗号資産を入手するために取引所の口座開設手続きも大変、ましてや海外の取引所を使おうとすると言語の壁や法的な問題にも直面します。

この「SBI Web3ウォレット」は暗号資産を意識しないですむUXを目指して作られたもので、MetaMaskより理解しやすいのだろうとは思います。しかし今回のニュース内の表現を見ると解消すべき課題も感じます。


■クリプトネイティブは1%未満

クリプトネイティブと呼ばれる人の人数は世界人口の1%未満と目されます。日本では1億2600万人の全人口に対してネイティブNFTを購入できる人は多くて2万人程度とも言われますので0.01%しかいません。キャズム超えの16%は遥か彼方先です。

こんな市場規模では当然ビジネスは成立しづらいですし、大企業も積極的に参入できません。大企業が予算投下しなければマスアダプションも実現しづらいか遅くなります。

トークンや暗号資産の取引が絡むweb3サービスは今後もっともっと増えてくるとは思いますが、そんなweb3サービスが大勢の人に使われる「マスアダプション」を実現するためにはウォレットのUX改善が必須です。


■暗号資産を意識せず取引可能

中央集権ウォレットなんて、と1%未満のクリプトネイティブに非難されても、99%以上の一般人にとってはカストディウォレットは安心感が高く便利です。

SBI VCトレードにアカウント開設して日本円を入金しておけば、暗号資産を意識することなく取引できるというUXは間違いなくわかりやすいものです。


■接続できるdAppsが中央集権的営業依存では意味がない

ウォレットの使い勝手がよくなり多くの人にとってわかりやすくなったとしても、使えるサービスがウォレット提供会社の関連企業のものだけでは意味がありません。

(3)dApps(分散型アプリケーション)との接続機能
・ゲームやマーケットプレイスなどのdAppsと接続・利用が可能に
・接続dAppsは今後追加予定(現在はSBINFT Marketのみで利用可能)

MetaMaskの代わりとして使えるようになることが現段階ではウォレットの究極の姿です。上記のようにSBINFT Marketのみで利用可能という「使えるサービスまでワンセットになった囲い込み的中央集権」ではweb3のマスアダプションには寄与しません。

接続できるdAppsを個別に営業開拓しなければならないウォレットは普及しないはずで、MetaMask代替を目指してほしいと思います。


■自動円転機能は企業参入を促す

今回のリリース文でタイトルにも引用される注目ポイントが「自動円転機能」です。

(2)自動円転機能(暗号資産⇔日本円)、自動暗号資産調達機能
・ユーザーの暗号資産⇔円の交換を自動執行
・ユーザーはSBI VCトレード口座内の暗号資産及び日本円でのNFT売買が可能

コンシューマ向け便利機能のように読めますが、企業にとっても非常に助かる機能です。

会計処理が複雑になることや価格変動の大きさから暗号資産を持てない企業がたくさんあります。また暗号資産を保有することに決めた企業でも、法人所得税を確定させるために期末に保有している暗号資産を一度すべて売却する運用を強いられたりもしています。

企業がNFTビジネスなどに乗り出す際、自動円転機能があるウォレットに売上金が入るようにしておくことで常に日本円で売り上げをを立てられ、見なし「暗号資産を保有していない」という状況を作れるはずです。

このことにより多くの企業がNFTビジネスに参入することを可能にします。

ただ、先述の通りウォレット提供会社の関連企業のプラットフォームに囲い込まれたり、ウォレットの仕様に合わせてdAppsを開発しなければならないようなものではweb3ビジネスの可能性を大幅に縮めてしまいます。

ウォレットは中央集権的かもしれないが、連携できるサービスは分散型で相互運用性の高いものであるべきです。


■メルカリウォレット、Twitterウォレットなど登場するか?

MetaMaskの代わりとなる、使い勝手がいいウォレットのニーズはとても高いはずです。セルフカストディウォレットはクリプトネイティブにしか使いこなせず、さらにクリプトネイティブであっても送金ミス、GOX、詐欺被害など事故や問題に直面しがちでもあります。

web3がまだクリプトネイティブのもの感がある現在ではウケがよくないのですがw
ウォレットは自己責任型ではなく分散管理型のものでないと残り99%の人にリーチするマスアダプションは果たせないと考えています。

メルカリやTwitterが外部接続可能なウォレットを提供する可能性はあると思います。これらがMetaMask同等にweb3サービスにフラットに接続できるようなウォレット仕様であればいいなと思います。

また街中でウォレットが使えるようになる方向も同時に叶うといいですね。

暗号資産や独自トークンが街中で使えるソリューションは例えば「/Slash Web3 Payments」などが登場しています。交換業免許が必要で普及に課題はありますが、ゲームで稼いだトークンがコンビニで使える体験が実現できれば非常にわかりやすいはず。

暗号資産とポイントプログラムの交換ソリューションも登場しています。これ自体はポイントで暗号資産が手に入るという一方通行で、双方向化するにはポイント側が前払式支払手段や二号暗号資産の規制に対応する必要があり簡単ではないのですが、概念として「ウォレットを介してすべての買い物につながる」を実現するのにポイントとの交換も役立つかもしれません。

web3がバズワード化したのが昨年2022年。今年2023年もはや1か月が経とうとしていますが、真にweb3が広まるにはウォレットの改善は必須です。

カストディ型ウォレットの普及で非クリプトネイティブな潜在ユーザーが爆発的に増え、web3への大企業の参入が起きサービスが充実し、サービス拡大に伴ってweb3ユーザーが増えるというサイクルが発生するのが今年から2025年までの2年間の動きだと予想しています。

メルカリやTwitterのユーザーが全員、潜在的なweb3ユーザーと見なせるようになるウォレットが登場すれば一気にそのサイクルに入るはず。MetaMaskの代わりになるカストディウォレットが登場するかどうか、どこが先鞭をつけるかに注目です。

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