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『RadioGPT以上の衝撃?ChatGPTを使ったSpotifyの自分専用ラジオ「AI DJ」』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.4.11

■SpotifyのAI DJトークを2時間聴いた夜。AIも悪くないなと思った

私のためのプレイリスト。私だけに向けたトーク。私だけのDJ。

今年2月、SpotifyがOpenAIの生成AIシステムを活用したAI DJ機能リリースしました。

AI DJは、それぞれのユーザーに合わせたカスタムプレイリストをかけてくれるのはもちろん、好みの曲やアーティストの情報も話してくれます。まるで自分のためだけに運営されているラジオステーションのような機能。

現在はアメリカとカナダのプレミアムユーザーのみに公開されています。

以前(3月1日)にラジオ番組1本丸ごとAIが作ってくれる「RadioGPT」をご紹介しました。

今回ご紹介するSpotifyで実装された「AI DJ」はこのRadioGPTよりヤバいかもしれません。


楽曲レコメンド機能×しゃべるAI DJの破壊力

新機能「AI DJ」を試してみませんか?と利用を促された。
あぁ、なんかニュースで聴いたなそういうやつ…と思いつつタップすると、予想しなかったことが起きた。Spotifyが僕に向かって喋り始めたのだ。

「あなたと会えて光栄です。私の名前はXavier。でも、友達からはXと呼ばれています。この瞬間から、Spotifyのあなた専属AI DJとして活動します。Yeah、そう自分AIなんすよ。いや待って? 聞いて? タイマーセットとか電気消すとかそういうのじゃないのよ。ミュージックよ。キミのミュージックのAIなのよ。キミが何を聴いてるかわかってますよー。Lijadu Sisters聴いてるでしょ?」

Spotifyをはじめサブスク音楽サービスには必ず楽曲レコメンド機能があります。画面にオススメの楽曲やプレイリストが表示されるのはもちろん、連続再生で次々と好みの楽曲だけを流し続けることも当然できます。

今回追加されたSpotifyのAI DJは、この楽曲レコメンドをDJ風にしゃべりながら行うものです。

余計なトークが間に挟まるのが嫌だという人も多いでしょう。先述のRadioGPTも音楽の合間に楽曲についてのエピソードやSNSから収集した時事ネタトークを挟む構成は同じです。

しかしAI DJを「自分専用に雇ったDJ」と捉えると見方が変わります。


自分専用に雇った、好みを熟知しているDJ

Spotifyのレコメンドエンジンは自分の好みを理解していて、そのことは信頼できます。

そこに、自分のためだけにパーソナライズされたトークが加わります。

自分のために選んだ曲やアーティストにまつわる話、季節の時事ネタ、(AIなのに)DJ本人の個人的な過去の思い出話などなど。

ラジオパーソナリティたるもの、リスナー全体に話すのではなく1人のリスナーに向けて話すようにすべし。
というのは昔からラジオ業界で指導されていたことです。

しかし実際のところ大勢が聴いていることを前提に話しますし、本当に自分のためだけに話すなんてことはありません。

SpotifyのAI DJは、本当に自分のためだけに選曲し、トークします。


ラジオパーソナリティと会話できるようになるか

また、メール(昔ならハガキやFAX)を投稿して、パーソナリティに読まれたら嬉しい。がラジオメディアのコミュニケーション体験なわけですが、今のところSpotifyのAI DJは会話には応じてくれません。

AI DJは喋るしかできないということ。ユーザーの話(リクエスト)を聞くことはできない(ちなみにSpotifyは独自の音声アシスタントがいたが、2022年にサービス停止している)。

しかしAI DJのベースになっているAIはOpenAI社のもので、OpenAI社といえば当然ChatGPT、つまり対話型AIが動いています。

今の技術レベルだとまだ少し興覚めしそうで、実装は少し先でしょう。しかし必ずや会話できるようになるはずです。少なくともリクエストに応じるくらいはすぐにできそうです。


大勢で聴くラジオ番組も再現可能?

完全に自分専用に放送しているラジオ番組・ラジオパーソナリティというのも興味深いですが、もう少し現在のラジオチックに、同じ番組を大勢が聴いている共感性を再現した方が楽しめるという方も多いでしょう。

それもできるはずです。

今のラジオ番組でも、常連リスナーはパーソナリティが覚えていていじってくれます。その常連リスナーのラジオネームを他のリスナーも覚えています。

こういうマイクロコミュニティをAI DJによって再現できるはず。楽曲の好み、過去のトーク内容、他のリスナーいじり。ひと通りできそうです。

架空の出来事であれば、AI DJ自身の体験談もできますし、むしろ架空話はChatGPTの得意とするところです。ただしジョークのセンスは今のところ皆無ですが。


3Dホログラム版で実存させられそう

3Dホログラム版「俺の嫁」と会話するGateboxを以前ご紹介しました。

このガラスの筒の中に自分専用のラジオパーソナリティが入っていて、自分の好みの曲を選び続け、自分のためだけにしゃべり続け、話しかければリクエストや会話にも応じてくれる。

こういう使い方なら「俺の嫁」と会話するちょっと気持ち悪さは個人的には薄れます。「部屋に好みのBGMを流してくれるDJを雇ったつもり」と思えれば欲しいかな。

ラジオはラジオの楽しみ方がありつつも、Spotifyの信頼できる楽曲レコメンドエンジンをベースにした、完全に自分専用にしゃべってくれるAI DJは新しいラジオの姿を見せてくれるかもしれませんし、これまでラジオ・音声コンテンツに触れたことがない人にラジオの楽しみ方を伝える入口になる可能性はあると思います。


反実仮想で因果関係を推論するAIも開発中

反実仮想の基本的な考え方とは、ある状況において、何かが異なっていた場合にどうなっていたかを問うというものだ。世界を巻き戻し、決定的な細部にいくつかの変更を加えて、再生し、何が起こるかを確認するようなものである。適切に調整すれば、真の因果関係を、相関関係や偶然の事象と区別できるようになる。

これまでの楽曲レコメンドエンジンに加え、ChatGPTをベースとしてトークを交えたAI DJを投入してきたSpotifyは、レコメンドエンジンが機械学習の賜物であることもあってかAIに熱心です。

「反実仮想」というAIにも挑戦しています。
歴史のifというやつで、過去に別の事象が起きていたなら今はどうなっていたんだろう?をシミュレーションし因果関係・相関関係を推論するAIです。

レコメンドエンジンの精度を上げること以外にどんな用途に使おうとしているのかはわかりませんが、AI DJのトークの精度が反実仮想AIによって上がるだとか、外界のSNSでのバズとの因果関係を推論してAI DJがバズを引き起こすトークができるようになったりだとか、ラジオをより科学的に進化させると未来っぽそうです。

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