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『VTuberの著作権は誰のもの? “中の人”と“ママ”が知っておきたい、アバターの権利関係』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.8.28
■VTuberの著作権は誰のもの? “中の人”と“ママ”が知っておきたい、アバターの権利関係
多くのVTuberは、そのアバターを作った「VTuberのママ」(イラストレーター)と、それを使って配信する「VTuberの中の人」(演者)がそれぞれ存在する。ではもしも、悪意を持った第三者がVTuberのアバターを勝手にグッズ化して販売した場合、誰がどのような対応をすべきだろうか?
言われてみれば確かに。
VTuberの見た目をつかさどる「アバター」にはデザイナーがいます。
そしてそのアバターを操作してキャラ付けをしている「中の人」がいます。
視聴者からはアバター=VTuberそのものに見えますが、アバターという著作物を「中の人」がどういう契約内容で利用しているかによっては、アバターを勝手にグッズ化された場合に訴え出る権利が「中の人」にはないということが生じます。
ポイントをBingChatで800文字に要約
前半部分をBingChatに800文字以内に要約してもらいました。
VTuberのアバターに使われるイラストや3Dモデルは通常、著作物であるため著作者に著作権と著作者人格権が発生します。
個人のVTuberは、第三者のクリエイターにアバターの作成を依頼することが多いと思われますが、VTuberがアバターを利用する方法は大きく分けて「著作権の譲渡を受ける」「利用許諾を受ける」の2つが挙げられます。
著作権の譲渡を受ける場合は、アバターの著作権を譲り受けることで、複製権などの全ての権利を入手する方法です。
利用許諾を受ける場合は、著作権をクリエイターに残しつつ、クリエイターとVTuberとの合意により「●●の範囲で利用して良い」という許諾を得る方法です。
特に個人間でアバター作成を依頼する場合、この2つが曖昧になっていることが多いですが、法的には大きな違いがあります。
利用許諾を受ける場合、VTuberは「クリエイターが許諾した範囲でのみ利用できる」ことになります。また、VTuberはアバターの著作権を持っていないため、第三者が著作権を侵害している場合、その侵害を止めるよう請求することができません。
実害が及んでいない著作権者は訴えに消極的になりがち
実際にアバターを勝手にグッズ化された場合にダメージを被るのはVTuber=「中の人」であることが多く、アバターをデザインした著作権者は直接的な被害を受けていないという関係になりがちです。
そうなると、被害を受けた「中の人」が著作権者であるアバターデザイナーに「勝手にグッズ化された人に対して販売差し止めを訴え出てほしい」と言っても、なかなか動いてくれないでしょう。
VTuberが活躍することで継続的にアバターの利用料金をもらえるような利用契約を結んでいるなら、VTuberが活動停止してしまうと著作権者も被害を受けるため、訴え出ることに協力してくれるかもしれません。
しかし大手VTuber事務所ではなく個人でライトにVTuber活動をしている人の場合、アバター利用に料金が発生しないものを使っていることがほとんどなはずです。そんなアバターは著作権の規定が曖昧なことも多いと思われます。
AIがデザインしたアバターは著作権が発生しないケースも
ご紹介した記事の中では、この著作権問題について
この問題はかなり根深く、残念ながら分かりやすい解決策はありません。2つの利用方法を知った上で、クリエイターとVTuberの両者で話し合う必要があります。
明確な解決策がないので、VTuber=「中の人」とアバターデザイナーで話し合うべし、と結論付けています。
しかしクリエイターが人間ではなくAIの場合は、法的には更にメンドウです。
によると、基本的には、機械(AI)が自動的に作った生成物については、著作物性が認められず、著作権は発生しないとされています。ただし、AIが創作のプロセスに関与していたとしても、人間がAIを“道具”として使っている場合には、人間の思想または感情による創作的な表現ということで著作権が発生すると考えられています。
つまり人間の関与度が低い場合、著作権は生じません。するとアバターを第三者に勝手にグッズ化されたとしても、著作権者がおらず誰も訴え出ることができないということになりかねません。
肖像権やパブリシティ権の侵害で訴え出る方法もあるか
首相官邸ホームページに、アバターを第三者が無断使用するケースについての論点整理がなされた資料が公開されています。
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著作権侵害だけでなく、主に「中の人」がアバターに人格を与えている主体と位置付けて、肖像権やパブリシティ権の侵害が成立するケースも想定されています。
パブリシティ権は、日本においてその権利に関する明文の規定はありません。しかし以前から、多数の下級審裁判例で認められてきました。そして、平成24年になって、初めて最高裁がパブリシティ権とは何かということに言及し、パブリシティ権を権利として承認しました。その判決こそ前記ピンク・レディー事件判決【最判平成24年2月2日(民集66巻2号89頁)】(以下「本判決」という)です。参考として判決文の一部を紹介します。
パブリシティ権についてはもともと法律で定められた権利ではなく判例で位置付けられた権利だとされています。しかしVTuberが操るアバターについてもパブリシティ権が認められるかは争いがあるかもしれません。
アバターがひとりの人格を示すようになる現代から近未来にかけて、肖像権やパブリシティ権が「中の人」に帰属するということを、法的にはより明確にしていく必要がありそうです。