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『まるでスパイ映画? ARグラスで衝突事故回避 デジタルツイン活用』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.10.12

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■まるでスパイ映画? ARグラスで衝突事故回避 デジタルツイン活用

 現実世界をデジタル空間に再現した「デジタルツイン」上で衝突事故を予測し、拡張現実(AR)グラスに通知して歩行者に危険回避を促す――。東京科学大(旧東京工業大)と楽天モバイルの共同チームが、そんなスパイ映画のような危険回避システムを開発した。

まるでSF映画のような未来の交通システムです。東京科学大学(旧東京工業大)と楽天モバイルがデジタルツインとAR(拡張現実)技術を使って、歩行者に周囲の危険を知らせるシステムの共同開発に取り組んでいます。

交差点での見通しの悪い場所や、死角に隠れた車の接近を、ARグラスごしに透視して危険を察知できる、まさにARに期待されていたことが実現に近づきつつあります。

デジタルツインが不可欠な理由

今回の実験は、「ARグラスで衝突事故回避」とともに「デジタルツイン活用」とタイトルで謳われています。

単にARグラスで目の前に見えている様子に危険を知らせる情報を重ねて表示するだけではダメなのでしょうか?デジタルツインは、なぜ必要なのでしょうか?

デジタルツインは、AIが未来の動きをシミュレートするために使われます。例えば、交差点の角に建物があり、その向こうから車が急に現れるかもしれない状況で考えてみましょう。ARグラスだけだと「車がいる」ことを見せることしかできません。しかし、デジタルツインを使うと、その建物の向こうにある車の動きをシミュレートし、数秒先にどのように動くのかを予測することが可能です。デジタルツインを表示に使わなくても、AIが計算するために必要なのです。

その結果、ARグラスを通して、今は見えない車の接近が視覚的に示され、歩行者に事前に警告を与えることができます。デジタルツインは「未来の危険予測」を実現するための重要な要素です。

道路へのセンサー・カメラ設置による実現方法

実際にこのシステムを運用するには、従来から考えられていた方法では、道路や交差点にカメラやセンサーを設置することが必要です。

道路に設置されたカメラは物体認識技術を使って車両や歩行者、自転車などを認識し、LIDARなどの距離測定センサーは障害物との距離を正確に測定します。その情報を使って危険判断を行います。

カメラやセンサーを設置された交叉点だけが安全、その他は危険なままになります。地方や都市部以外の地域まで津々浦々の交差点の安全性を高めるためにセンサーを配置し続け、メンテナンスや定期交換をし続ける。これは現実的ではありません。

昔、カーナビで渋滞状況を表示するために設置されていたVICSのようなやり方で、これは無理があります。

D2D通信によるシステム実現の可能性

そこで注目されているのが、D2D(Device-to-Device)通信による方法です。

これは、交差点にセンサーを設置するのではなく、スマートフォンやARグラスといったデバイス同士が直接通信し合うことで、互いの存在や動きを把握する仕組みです。例えば、車両と歩行者が接近した際に、デバイス同士がP2P(ピア・ツー・ピア)で通信し、危険を事前に知らせます。

D2D通信を使うと、特別なインフラを設置しなくても広範囲でこのシステムを活用できるようになります。

これは、VICSに代わってGoogle Mapを使っている人同時の情報を集約して渋滞表示する方法に近い発想で、さらにセンターサーバを介しないという点で一歩進んでいます。

ただし、5Gまでの現行の通信技術では、D2D通信の通信距離や信頼性に限界があります。次世代通信規格であるB5Gや6Gが普及すれば、デバイス同士が低遅延かつ安定して通信できるようになるため、これらの課題が解決され、どこでも安全な危険回避が可能になると期待されています。

B5G、6Gで実現するD2D

1. D2D通信の通信距離の概要

D2D通信の通信距離は、利用する技術や周波数帯、また周囲の環境によって変わります。一般的なD2D通信の技術について、以下のような距離が検討されています。

  • LTE Direct(4G/5Gネットワークの一部として利用可能なD2D技術)

    • 通信距離:おおよそ300メートルから500メートル程度。

    • 特性:この技術は携帯ネットワークの一部として動作し、デバイスが基地局を介さずに直接通信できる距離が最大500メートル程度までカバー可能です。この距離であれば交差点周辺での車両同士や歩行者間の通信に十分であると考えられます。

  • Wi-Fi Direct

    • 通信距離:おおよそ100メートル以内。

    • 特性:Wi-Fi DirectはWi-Fi技術を用いたP2P通信方式ですが、その通信距離は100メートル以内に限られます。交差点などの狭いエリアではこの距離でも十分であるかもしれませんが、交通事故を防ぐには、車両のスピードなども考慮するとやや不安な面もあります。

  • 5G D2D通信(B5G・6G技術によるD2D通信)

    • 通信距離:数百メートルから1キロメートルを目指す。

    • 特性:5GやB5Gの進化に伴い、D2D通信の通信距離もさらに広がることが期待されています。特に、ミリ波(高周波数帯)を使うことで、通信の直進性が高まり、特定の方向に対して長距離通信が可能になる場合があります。ただし、ミリ波は障害物に弱いという課題もあります。

2. 交差点での出会い頭の事故を防ぐための距離

交差点での出会い頭の事故を防ぐためには、通信距離に関して次の点が考慮されます。

  1. 必要な通信距離

    • 交差点での出会い頭の事故を防ぐためには、少なくとも車両が交差点に進入する前に互いの存在を把握できる通信距離が必要です。具体的には、車が時速50kmで走行している場合、運転手が反応するためには少なくとも30メートル以上の距離が必要とされることが多いです。これに加え、リアルタイムの危険通知を行うための通信遅延を考慮し、余裕を持った距離が望まれます。

    • したがって、100〜500メートル程度の通信距離が確保できれば、交差点における出会い頭の事故防止には十分であると考えられます。この距離内であれば、車両や歩行者が交差点に接近する段階で、事前に相手の存在を検知し、適切な警告を出すことが可能です。

  2. 通信距離と信頼性のバランス

    • D2D通信では、距離が長くなると通信の信頼性が低下する傾向があります。特に都市部では、建物や車両など多くの障害物が存在するため、信頼性の高い通信を行うためには、障害物に対する対策(例えば中継デバイスの導入)も必要です。

    • 5Gや6GのD2D通信では、通信距離を確保しつつ低遅延で情報をやりとりすることが可能になるとされており、交差点のような視界が遮られる環境でもリアルタイムにデバイス同士が連携できるようになることが期待されています。

3. 技術的な課題と今後の展望

  • 障害物に対する対応: 都市部の交差点では、建物や車などの障害物がD2D通信に影響を与える可能性があります。5Gのミリ波は直進性が強い反面、障害物に弱いため、直接視界が取れない場合には通信が途絶えるリスクがあります。これを解決するために、他の車両やデバイスを中継ポイントとするメッシュネットワーク型のD2D通信の導入が考えられています。

  • エネルギー消費: D2D通信を長距離で行うと、端末のバッテリー消費が増大する可能性があります。特に、車両同士の直接通信などでは高出力が求められるため、エネルギー効率の向上も重要な課題です。

B5Gや6Gは、従来の通信規格に比べて、より多くのデバイスを同時に接続できる能力を持ち、超低遅延と高い信頼性を実現します。特にD2D通信(デバイス間直接通信)を支援する技術が盛り込まれており、デバイス同士がセルラーネットワークを介さずに直接通信することが可能です。これにより、車両同士や歩行者とのリアルタイムな情報共有が実現し、交差点での事故を未然に防ぐための迅速な対応が可能になります。

ARで出会い頭の衝突事故ゼロへ

交通事故は多くの場合、不注意や見通しの悪さが原因です。しかし、ARグラスがその「見えないリスク」を可視化することで、事故を未然に防ぐことができる世界が現実のものとなりつつあります。

今回の東京科学大学(旧東京工業大)と楽天モバイルの実験は、ARグラスが実際に交通事故を防ぐだろう未来が結構近くまで来たと思わせられます。ひとつひとつの技術要素はまだ積み重ねが必要ですし、実用的なARグラスの登場も待たれます。しかし、2030年ごろには全部が出揃っていて、ARで出会い頭の衝突事故がゼロが目指せるようになっている、、、といいですね。

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