『AI翻訳で漫画5万点輸出へ 小学館やJIC、新興に29億円』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.5.7
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■AI翻訳で漫画5万点輸出へ 小学館やJIC、新興に29億円
Webページはブラウザが自動翻訳してくれるようになりましたし、Gmailも自動翻訳に対応したので海外のメルマガも気軽に読めるようになりました。
しかし、日本が誇る「マンガ」はセリフを機械翻訳すれば読めるというわけではありません。セリフの吹き出しもコマごとにバラバラに配置されていて小説を翻訳するようなわけにはいきませんし、絵として描かれている効果音や擬音の部分も翻訳しないと雰囲気が伝わりません。(※小説は文学表現としての翻訳の難しさがあるので一概に比較はできませんが)
昨今の急速な生成AIの進化によって、マンガを翻訳できるようになりつつあります。
マンガに特化したAI技術を開発している株式会社オレンジに小学館や経済産業省所管の産業革新投資機構(JIC)系など10社が29.2億円を出資、翻訳速度を10倍にアップさせ、日本のマンガを海外輸出する本数を増やす計画を発表しました。
マンガを翻訳する、とは
昨年7月27にに出されたプレスリリース内に載っていたデモ動画が非常にわかりやすいのでご紹介します。
セリフや背景の擬音などテキストを自動解析、
セリフ部分を自動的に削除、
絵として描かれている「コロコロ」という擬音部分も
自動的に削除し、消された絵を生成AIで自動補完、
セリフを機械翻訳して吹き出しにはめ込み、
スマホで読みやすいように文字サイズを自動で最適化。
ここまでを「ローカライズ」というボタンを押すだけでできるようにしようというソリューションです。
右下のコマでは「コロコロコロ」が「rol rol rol」に置き換わり、左下のコマでは「コロコロコロ」と縦に描かれているところは日本語のまま「rol rol rol」という訳語が追加されているなど、吹き出し以外の表現は完全に自動化するのではなさそうですが、手作業で書き起こすより圧倒的に早いのは間違いありません。
原作者や版元の「監修」を最適化できるか?
マンガを翻訳して海外展開する際に課題になりそうなのは「監修」という作業です。
漫画家、作者の方も、自分の漫画作品が海外で読まれることそのものは嬉しいと思うだろう反面、原作が意図した訳文になっているか、AIが自動補完した擬音表現が原作の雰囲気を壊していないかなど、原作者としてこだわる部分をAIがきちんと表現できているかを最終的にチェックすることは不可欠だろうと思います。
ゼロから翻訳して作画し直すよりはずっと高速でしょうが、人間が介在する「監修」の作業はやはり時間がかかるはずです。出版社側も翻訳チェックチームや海外向けのリーガルチェックチームなど、これまでの流通とは異なる監修体制を作ることにもなります。
「監修」の機械化や高速化が次の課題になりそうです。
マンガコミュニティの翻訳も
マンガそのものの翻訳だけでなく、マンガファンが集うコミュニティサービスの翻訳も始まりました。
これまでのネットコミュニティサービスは言語ごとにサービスが分かれていることが多く、グローバルなファンの集まりは演出しづらい面がありました。
しかし昨今の自動翻訳の精度向上によって、マンガの原作ファンが世界から1か所に集まることができるようになることを目指せるようになってきました。
集英社は今回、9か国語に対応したファンコミュニティの運営にトライします。マンガ作品について語らうという共通の話題があるぶんコミュニケーションも取りやすそうです。
AI翻訳で恩恵を実感
「AIの進化で外国語の勉強は不要になる」というのはよく耳にします。まったく英語の勉強が不要になるわけではありませんが、冒頭でご紹介したWebやメールの自動翻訳は確かにありがたさを実感できています。
マンガの翻訳にも対応できるようになれば、次は映画やドラマなど映像作品、歌声の翻訳など別のカルチャー作品にも広がっていくでしょう。海外作品を日本語圏からでも鑑賞しやすくなるのは良い時代です。