『GameFiやメタバースでの必然性のあるNFTの使い方を妄想してみる』~【新しいWeb3ビジネスのアイディアのタネ】・Web3ニュース2022.7.24
■NFTである必然性
昨日までマインクラフトがNFT禁止した話を取り上げていましたが、GameFiにしてもメタバースにしても、NFTである必然性があまりない使われ方が多いなと常々感じていました。
今日は必然性のあるNFTの使い方ってなんだろう?を考えてみたいと思います。
今のGameFiはトークン中心
STEPNではシューズがNFTである必然性はありません。実際ゲームプレイ中はオフチェーンDBで管理されていますし、ユーザーにとっては歩いてEarnして最終的に「換金」できさえすればいいのでシューズがNFTかどうかを普段意識しません。
メタバースの土地もNFTである必然性がありません。運営会社がゲーム内のアイテムとして「土地」をゲーム内で売って占有権を与えればいいだけです。
そのため現在の多くのGameFiやメタバースの場合、NFTではなくトークンの方に意味がある設計になっていると感じます。
GameFiにおけるNFTは開発の民主化のため?
今のGameFiにおいてNFTは運営が初期・短期にお金を集める機能を担います。ゲーム内アイテムを法定通貨で販売しても売れないのに、「NFT」と呼べば売りやすいのが現状です。
実際多くのゲームでNFTは従来型DBに管理されます。外部に持ち出すときだけオンチェーン化しますが、外部に持ち出してもやれることは規格が合えばOpenSeaで売買できるくらいです。NFTアイテムはNFTでなくてもゲーム内の機能は実現できます。
しかし「NFT」と呼べば売りやすいというのも立派な「NFTである必然性」かもしれません。
最近のゲームはコンソールゲームでもスマホゲームでも開発費がかかりすぎます。巨大資本を持っている人、集められる人しか参入できないため民主的ではなくなってしまいました。
短期的に収益を上げられるならより多くの開発者がゲーム業界に参入できます。たくさんの人が参入できればいろんなアイディアのゲームが登場し、ユーザーの選択肢が増えます。
でもできるなら運営側の経済事情にNFTである必然性を持たせるのではなく、ユーザーやゲームシステム側から見てのNFTである必然性があった方が確固たるものになるはずです。
■必然性がある使い方を妄想してみる
前置きが長くなりましたが、今回はユーザーにとってNFTの必然性がある使い方はどんなものがあるかな?を妄想してみます。
1.外部連携のためのNFT
たとえば他のゲームとアイテムを共有するための共通規格としてNFTを活用するケースはNFTである必然性を作りやすい例のひとつです。
逆に、ひとつのゲームタイトルに閉じていることがNFTである意味をなくしている大きな理由です。中央集権的にリリースされる場合DBやシステムを作りこんでしまえば何でもできるからです。
逆に複数のゲームタイトルやゲームメーカーを横断して使用できたり、ゲームアイテムではないものをゲームに持ち込めるようにする場合にはNFTは使えそうです。
厳密にはインターオペラビリティとはちょっと違うかもしれませんが、過去にあった外部連携のアイディアをいくつかご紹介します。
・バーコードで対戦「バーコードバトラー」
昔、世に溢れているバーコードを読み込ませて対戦する「バーコードバトラー」というゲームがありました。今はキングオブバーコードというスマホゲームも出ているようです。
・音楽CDで対戦「モンスターファーム」
CDを読み込ませてモンスターを召喚、強いモンスターが出るCDを探すのが楽しかった「モンスターファーム」というものもありました。
もともとはCD全盛期に開発されたものですが、2019年11月28日にNintendo Switchに移植されたそうです。今だと新譜がフィジカルCDで発売されることも少なくなりましたので過去のアセットで戦う感じになりますね。
・バーコードバトラーのNFT版はアリ?
こんな感じで世の中にあふれるNFTを持ち込むとモンスターや武器が召喚される、みたいなものは作れそうです。
NFTアート的には激安なものだったのにゲームに持ち込んだらエクスカリバーに化けた。となればそのNFTアートはゲーマーにとっては垂涎の的。高値で取引されるかもしれません。
ただスマートコントラクトでは何を参照しどういう計算式で何が出るかのロジックが公開されてしまうので、その条件に合うNFTを生成するチートとの闘いかもしれません。
2.入場券NFTの共通仕様化
ゲームの場合、ステータスや見た目を伴う武器や防具は価格や世界観も含めて共通化するのは難しいかもしれませんが、入場券NFT・パスポートNFTのように「持っていると入れる」という制御だけなら共通仕様化しやすそうです。
ゲームやメタバースだとたとえ話が難しいので、現実世界で例示してみます。
・水族館の年間パスポートを全国共通化するNFT
現実世界で例えると「全国各地にある水族館の年間パスポートを共通仕様化したい」と考えた時はNFTパスポートにしてしまった方がシステム開発が楽なはずです。
入場券の発行、流通販売、認証、収益分配について共通仕様を話し合いで決めて、その仕様に合った入場ゲートのシステムを全国の水族館に配備しようとしたら何十億円もかかると思います。
有効期限付き年間パスポートNFTを作り、ウォレット接続で所有の有無や期限確認をする。売上は共通のトレジャリーウォレットに入れて、利用箇所・利用回数に応じて各水族館のウォレットに自動分配する。
ユーザーも年間パスポートが不必要になったらNFTマーケットプレイスで売れる。としたらある程度初期費が高くても買う人も多そうです。使わない時は貸し出して初期費を回収する人も現れるでしょうし、レンタル利用してほしいので水族館に行く人が増えるように自ら宣伝活動をするでしょう。
全国どこでも自由に水族館に入場できる、ユーザーが勝手に宣伝してくれる、すると水族館の来場者は増える。水族館は年間パスポートNFTの一次販売益・二次流通ロイヤリティに加え、来場後の飲食やお土産などで入場券以外の収益が狙えます。
水族館・年間パスポートNFTホルダー・来場者の三方由しです。
開発も比較的安価、水族館側も公開されているNFTの仕様に則って後から対応することもできますし、なんなら動物園も博物館も美術館も相乗りできるかもしれません。
価格の差異の吸収の仕方や法定通貨で売買できるようにする際のマーケットプレイスの選定など検討が必要なところはありますが、従来型のセンターサーバで運用する巨大な認証システムよりはずっとNFTの方がリアリティがあると思います。なんならNFTと呼ばないほうが一般浸透は早そうな気がします。
・STEPNのシューズをパスポートNFT化
ゲーム・GameFiなら、STEPNのS国のシューズをパスポートNFTとして使う新たなX to Earnなら、ゲームメーカーやゲーム業界が共通規格の策定会議を開かずに勝手に作れそうです。
新しいGameFiサービスに参加する入場証になるという理由で改めてSTEPNのシューズが売れ始める現象が起きるかもしれません(笑)
・「スゴ得」のBGC版
有料のスマホアプリを月額固定費で使い放題にするサービスがありました。(今でもあるのかな?)
ドコモでは「スゴ得」、auは「スマートパス」、ソフトバンクは「App Pass」と呼ばれていました。
初期に有料のNFTを購入して開始することが多いブロックチェーンゲーム(BCG)でも、「スゴ得」的なNFTを持っていれば複数のBCGを楽しめる、というのはいかがでしょう?
先述のSTEPNのシューズを持っているといろんなGameFiに参加できる、のさらに幅広い版のイメージです。
3.ゲーム履歴証明にNFTを活用
戦績など履歴の証明書をNFTで発行し、さまざまなゲームを横断して活用します。PlayStation Onlineでも戦績が共有されますが、あれのBCG共通版です。
PS Onlineや免許証のように運営会社が管理、権威団体がお墨付きを与えた証明書ではなく、パブリックチェーンで観察・検証可能であるからこそ証明書として有効になる、というのはWeb3らしいと感じます。
・有力ギルドやイベントへの優先参加権
ブロックチェーン上の履歴を証明書NFTで表現できれば、有力なギルドに参加できたり大会でシード権を得られたりする。なりすましも防止できます。
この際のNFTは売買不可。あくまでも自分の証明書です。
・同じ趣味のゲーマーを探せる
もっとライトな使い方では、プレイ履歴と評価の記録によって好きなゲームジャンルが記録されたNFTが発行され検索可能なら、ゲームの好みが近いプレイヤーを探せるようになります。
・ゲーム内のアクションログを広告活用
趣味嗜好や行動量などのログがNFTとして記録・参照できればターゲティング広告に使える、とはよく言われますがそれのゲーム版です。
特定条件に到達した人に称号NFTを付与し、広告主というスポンサーがつくという関係性を構築します。これまでのターゲティング広告はウザいだけでしたが、個人にスポンサーがつくかたちならいかがでしょう。
またギルド内での働きっぷりによって求人が得られたりするHR(Human Resouces)Techにも使えそうです。
■妄想の中から次のアイディアが生まれる
どれも妄想ではありますが、今の必然性のないNFTより少しは有用っぽいんじゃないかと思っています。
GSTが5円を割り込んだSTEPNのS国には大損した人が大量にいるので、シューズを別に使えるなら乗り換える人も結構いそうな気がします。流行ったサービスに上かぶせするマーケティングはちょっといやらしいですが、1件でも実例が出たら雨後の筍かもしれません。
Crypto KittiesのNFT重視からAxie Infinity、STEPNのFT重視に移行してNFTがないがしろになっている今、次は揺り戻しで意味のあるNFTの使い方が発明されるんじゃないかなと期待しています。