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『スマホのバッテリー交換義務化となっても、EUでは「ガラケー」のような方式にはならない理由』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2023.8.25


スマホのバッテリー交換義務化となっても、EUでは「ガラケー」のような方式にはならない理由

 EU圏のスマートフォンバッテリー交換義務化の話が話題となっているが、どうやらこれにはある種の抜け道があるようだ。確かに昨今のメーカーの動きを見ていると、規制の行先は我々が思っている形とは違うものになりそうだ。
EUのバッテリー交換義務化でも「ガラケー」のようにはならない。理由は「工具の使用しての交換」は規制されていないため
メーカーが懸念する技術の停滞と品質の担保。自己修理はこの辺りが課題か
規制に向けて修理も簡単に。着々と準備されているAppleやGalaxyのスマートフォン

7月16日に『スマホ含む全デバイスを2027年までにバッテリー交換型にせよ。新規制案を欧州理事会が採択』という記事をお伝えしました。

スマホやNintendo SWITCHのようなバッテリーを内蔵した電子機器について、EUで販売する場合は「バッテリー交換式にせよ」という規制案を欧州理事会が採択したというニュースを取り上げたわけですが、分厚くなるんじゃないか、防水性能がなくなるんじゃないか、という懸念が多数挙がりました。

最悪、ヨーロッパ向けの端末だけが別仕様になったり、ヨーロッパでは販売しないというメーカーや機種が登場することすら心配されました。

しかしどうやら、そこまで時代を逆回しするような心配はいらないようです。

 EU圏のバッテリー交換義務化の話については、日本のみならず欧州のメディアも各所で報じている。筆者も先月韓国で行われたGalaxy Unpackedにて欧州メディアの方と意見交換したが、その際にこの話題について少し面白い話も聞けた。

と韓国で欧州メディアから情報収集した内容をまとめてくださっている記事がありましたのでご紹介します。

「バッテリー交換式」と聞いて皆がイメージしていた、簡単なプラスチックのフタを開けてバッテリーパックを差し替える方式には限定されず、バッテリー交換に必要な専用工具や手順書をメーカーがユーザーに無償提供するならOK。となりそうとのことなのです。

バッテリーパック型でないぶん、端末設計の自由度や技術革新性の面では過度な心配はいらないようです。しかしながら、依然として課題はあります。


バッテリーパック型の課題

改めての整理になりますが、多くの人がイメージした、バッテリーパック型の交換方式で問題になるのは「技術の停滞」と「防水性能等の品質確保」でした。

バッテリーパック型しか選べないとなると、革新的なデバイスが登場しづらくなることが「技術の停滞」の課題です。

また、バッテリーパック型ではフタのパッキンに防水性能を依存せざるを得ないため、高い水圧に耐えられる端末を作る場合は厚みが増すなど、日常使用に適さない形状になりかねません。

これらを心配したため、欧州委員会の「バッテリー交換式」には異論が多かったわけですが、「分解キットをユーザーに無償提供する」形式でよければ、分厚い端末・防水性能ゼロの端末だらけになることは避けられそうです。

 現時点のiPhoneであれば"星型のドライバー"、接着剤を溶かすための"ウォーマーや溶剤"、リアパネルやディスプレイを外すための"ピックと吸盤"、バッテリーの端子を外すための"プラスチック製のヘラ"を提供すれば良いことになる。もちろん、リアパネルやディスプレイを再度接着するための"シール剤"も必要となる。

こんな作業をユーザーに強いてもOKなら、実のところ端末のカタチはあまり変化がないかもしれません。しかしそれでも「分解型」でも課題はあります。


分解型でも課題が残る

・技術の停滞

最近主流のバッテリー内蔵型のデバイスは、バッテリーパック型をやめたおかげで小型化が進みました。またユーザーが分解することを想定しなくてよいため、より複雑な基盤構成も採ることができます。

 そんな問題が最も該当するものは、Galaxy FoldやFlipなどをはじめとした折りたたみのスマートフォンだ。このタイプの機種に関してはヒンジを挟んだ双方にバッテリーが搭載されており、他の機種に比べても修理するのが困難と言われているものだ。

先日も取り上げた折りたたみスマホは、ユーザーが分解することを考慮していたら早期には実現できなかったタイプの進化形態です。折りたたみスマホ独特のヒンジ構造と、ヒンジをまたぐ双方に取り付けられたバッテリーと基盤という構成が非常に複雑です。

こういう進化の仕方を停滞させてしまうのではないかという懸念は引き続き残ります。


・防水性能の担保

ユーザーが分解して元に戻した際に防水性能が失われてしまう課題も懸念されます。

工場で専用ロボットや熟練工が防水シールを兼ねた接着剤を隙間なく塗布し、適切に固着させることができて初めて防水性能が発揮されます。ユーザーが専用工具やヒートガンを駆使して分解できても、正しく元に戻すことが出来なければ、普通の使い方でも浸水して故障してしまいます。

「ユーザーがバッテリー交換できるようにせよ」の目的は製品のライフサイクルを伸ばし資源保護することのはずです。しかし、不適切な施工で浸水や故障、分解や組み立てに失敗するなどして、端末ごと廃棄せざるを得ないものが増えてしまっては本末転倒です。


個人での廃バッテリーの処分方法が問題

ユーザーが自分自身でバッテリー交換ができるということは、手元に廃バッテリーが残るということです。ということは、衝撃に弱く発火する可能性もあるリチウム系バッテリーを安全に保管・廃棄する方法が必要です。

使えなくなったモバイルバッテリーを捨てようとした経験がありますか?

「家電量販店に置かれている電池回収ボックスに入れればいい」と思っている人は多いと思いますが、誤りです

「充電式電池」のボックスであって、リチウムイオンバッテリー用ではない

充電式電池用のリサイクルボックスにリチウムイオンバッテリーを入れる人が後を絶たなかったのか、現在では多くの場合、家電量販店から電池のリサイクルボックスが撤去されています。そしてレジで店員さんに声をかけて、回収可能なバッテリーかどうかを見てもらい、OKなら預けることが出来る、という手順になっています。

膨らんだバッテリーはレジで受け取りを拒否されます。
分解して取り出した剥き出しのバッテリーも受け取りを拒否されます。

リチウムイオンバッテリーのリサイクルマーク

見た目に異常がなくても、リサイクルマークが入っていないバッテリーは受け取りを拒否されます。安く売られているモバイルバッテリーはリサイクルマークがないことが多く、入っていても偽造の場合もあります。

https://camera10.me/blog/mobilebattery-sutekataより引用

有名メーカーのAnker製やcheero製のモバイルバッテリーも、昔はリサイクルマークがついていませんでした。私もAnker製のバッテリーを家電量販店に持ち込んだ時、リサイクルマークがないことを理由に回収を拒否されたことがあります。


家電量販店で受け取りを拒否されたバッテリーについては、「メーカーや自治体に問い合わせること」となっています。しかし両方ともあてになりません。

安く売られている海外製モバイルバッテリーのメーカーには連絡手段がほぼありません。連絡がついたとしても回収対応をしてくれるはずもありません。(上記のAnkerの場合はメーカーが自主回収しています。)

自治体に問い合わせても「家電量販店に相談してください」と堂々巡りの応答をされたことがあります。

膨らんだバッテリー、取り出した剥き出しのバッテリーを適切に捨てる方法を誰も提供してくれないので、燃えないゴミで出してしまう人が後を絶えないのです。とはいえ、火事になるので燃えないゴミで出すのは絶対にやめましょう。


日本でもバッテリー廃棄方法の確立を

リチウムイオンバッテリーのリサイクルマークを発行している、「資源有効利用促進法」に基づき「小型充電式電池」のリサイクル活動を推進するための団体、一般社団法人JBRCも、実態に即していません。

※解体された電池パック、破損電池、膨張や水濡れした電池、ハードケースに入っていないラミネートタイプの電池等は回収対象外です。

膨らんで使えなくなったバッテリーこそ捨てたいのです。
膨らみがちなのはメーカーに連絡の取りようがない海外製です。輸入禁止されていない以上、買われてしまいます。

EUでは自分でバッテリー交換できる構造をメーカーに義務化するとしても、日本では引き続き個人での分解は推奨されないかもしれません。しかし、これほどリチウムイオンバッテリーが普及した現在、適切な廃棄方法を日本でも社会的に構築してほしいと願います。


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