『web3も有名人起用が増加。ナイキ&アディダスの「事件」に見るインフルエンサーマーケティングの課題』~【新しいweb3ビジネスのアイディアのタネ】2022.11.19
■ナイキとアディダス 対応の違いに見る両社の差
ナイキもアディダスも、有名人を起用してスニーカーの売上を伸ばす戦略を取っているという点で共通です。
今回取り上げるのは「特定インフルエンサーへの依存度が高いと危険」という話です。
■2社とも、擁立した有名人と反ユダヤ主義発言問題で離縁
両社とも、擁立する有名人が反ユダヤ主義的な発言をしたことに対して、その有名人の擁立をやめる決断をしました。
最終的に判断した結果は「離縁」と同じなのですが、簡単に言うとナイキはカイリー・アービング選手と離縁する判断を問題発言の翌日に発表し、アディダスはカニエ・ウェストとの離縁までに数週間かかりました。
カイリー・アービング選手とカニエ・ウェストの影響力の違いもありますが、一番大きかったのはナイキとアディダスの彼らに対する売り上げ依存度です。
■「ごく少数の個人の成功や人気への依存度を減らす」と投資家に断言
210億ドル(2兆9000億円)の8%というと16.8億ドル(2350億円)にも上ります。インフルエンサーの効果は絶大だということがよくわかります。
しかし1人に対する依存度が高すぎると、今回のアディダスのように判断を遅らせる・鈍らせることが起きがちです。
決断がもっと早かったらカニエ・ウェストモデルが出せないという影響に留められたかもしれませんが、決断が遅かったためにブランドイメージ全体に傷がつきダメージが拡大したはずです。
アディダスはカニエ・ウェスト1人の知名度に頼り、インフルエンサーと一体化させた製品を作る戦略で売り上げを伸ばしました。
対してナイキは、インフルエンサーを多数起用してリスク分散しつつ、インフルエンサーの名前を外しても製品の魅力自体が維持されるところに留めるイメージ戦略を採りました。
結果的にリスク分散できていたナイキの方がダメージコントロールがうまくできて正解だったことがわかりましたが、トラブルが起きないことに賭けてビッグネームの動員力を使うことがナイキに対抗するのに必要な手段だったのかもしれません。
■web3プロジェクトに有名人起用が増えてきたからこそ考えるべきこと
最近web3プロジェクト界隈で有名人をアンバサダーとして起用するケースが増えてきました。知名度を借りて認知や集客ができることは非常に大きなメリットですし、プロジェクトにとって大きな信用アップにつながるのもメリットです。
著名人がいよいよweb3プロジェクトの宣伝に協力していただけるようになったということ自体、web3が一般普及し始めるマスアダプション段階・キャズム超えを目指すタイミングがそろそろ来たなと思わせてくれます。
しかしナイキとアディダスの件を鑑みると、過度な依存、過度なイメージの一体化はリスクを伴うということもわかります。
インフルエンサー・アンバサダー・KOL(Key Opinion Leader)、いろんな呼び方がありますが、彼らは人間です。人間の行動は読めません。
まだ始まったばかりのweb3プロジェクトでは予算の制約から多数の有名人を起用してリスク分散することは難しいかもしれません。
ならば、まずやれることはプロダクトのブラッシュアップです。プロダクトをしっかり磨きファンとの関係を築くことが最も重要で、それ自体が有名人への依存度を下げる最も効果的な手段になります。
有名人の力をお借りしつつも、しっかり良いものを作り上げていくことが重要。私自身もweb3プロダクトのひとつを担っている者の一人として改めて肝に銘じます。