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もり塾の歩き方(2)自己紹介は重要なビジネスツール。相手の記憶に刻む「脳内名刺」

あきらめていたかつての夢「書く仕事」。
60歳目前、でも人生100年ならは、まだ折り返し地点。
これが最後の挑戦と、私、野村紀美子は昨年「もり塾ブックライター・編集ライター養成コース」に挑みました。これはその受講体験記。今回は第2話です。
いよいよ開講! でもその前に課題が出ました。自己紹介くらい大したことない、と、甘くみていましたが……

課題「自己紹介」で、自分を見つめ直した

いよいよ「もり塾ブックライター・編集ライター養成コース」の初回の講義。
事前課題が発表されていました。
「自己紹介を3分間(文字数だと約900文字)で行ってもらうので、準備と練習などもしておくように。内容には入塾のきっかけも加えること」
というもの。

若いころ入学、進級、就職をしたとき、毎年のように自己紹介をしたものです。
その後は、部署の移動や、転職、子どもの保護者会や習いごとの教室など、徐々にその機会は減っていきます。

私はあまり目立ちたくなかったので、たいていは立ち上がって名乗るのみ。
出身校や所属部活、趣味などを添える程度で、簡単に済ませるのが常でした。

スピーチやプレゼンなどで「原稿を書いて読み上げる」のは、あまり好きではありませんでした。
顔を下に向けたままで、声がくぐもり、棒読みになって表情も乏しくなりがちです。
読み間違えて言い直したりしたらカッコ悪いと思っていたので、要点をメモにまとめて、なるべく下を向かずに簡潔に話すことにしていました。

とはいえ、課題として出たからには、シナリオほどではないにしても内容だけはしっかりと考えようと思い、ペンを取りました。

「私は、3人姉妹の母です」

かつての私は保護者会などで、冒頭にまずはこの一言。

しかし、今や末の娘も28歳。
今の私は「母」という役割を日常的に行ってはいないことに気づきました。
現在の職業も、長く勤めた会社を辞めて違う仕事に転職したばかりで、声高に発表する気も起きません。

そうなると、「果たして自分は何者であるか?」を自分に問い直し、「それをどんなふうに伝えるか」、「どこまで個人的な部分を開示するか」についても検討しなくてはなりませんでした。

紹介できるほどの自分を、見出せないまま初回講義の日は迫ってきます。

でも、このときの私は「自己紹介は自分の顔と名前を覚えてもらうための単なる儀式、その後も長く関わる集団なら、いずれわかること。多くを語る必要はない」と軽く考えていました。
家族の話を少しと、講座の志望動機を簡単に述べるメモをまとめ、読み上げるための原稿は作りませんでした。

初回講義当日、先生の自己紹介を兼ねた開講にあたってのスピーチ。
何かを読んでいらっしゃるようでしたが、顔は時々目線を斜めに移す程度で、下を向かずにすむ位置に原稿を配置していたのでしょう。カメラ目線も多く表情も豊か、声に張りもあり、話し方にリズム感があります。
経歴や開講の経緯などの内容が、とてもわかりやすく伝わってきたのを覚えています。

その後は、受講生の自己紹介。
原稿を用意した方は、時間もほぼピッタリで、流れるように聞きやすかった印象。
自分のスピーチはというと、うまくメモの内容を話したつもりでいましたが、後から動画を見てみると顔を覆いたくなります。内容もイマイチ、話の流れが悪く、ぎこちない感じ、時間も1分オーバー。
初対面の人たちの前で「自分とは」を語ることに抵抗を感じていた自分が、ありありと映っていたのでした。

初対面の相手に、どんなインパクトを刻むのか

ビジネスシーンでは名刺交換の際、会社名、所属部署、役職名と氏名。次に担当業務となどを長くても20秒ぐらいで名乗ります。
状況によっては、その場の雰囲気づくりのため、さらに一言二言付け加えることもあるでしょう。
趣味のサークルや、もり塾のようなスクールなどでも、初回の自己紹介は慣例です。

その短い時間の中で覚えているのは、「すごい経歴の人」「声がきれいな人」「自分と共通点がある人」「OL」「主婦」など簡単なカテゴリーと印象です。
会社名や出身地などは、名刺やメモがないと、案外覚えていないもの。
大人数の人と会ったときは、名前と顔が一致する人数もごく僅かです。
一度しか会ったことがないのに覚えているとしたら、外見、話し方や声、話の内容、肩書きやバックグラウンドなどに、何か強い印象や特徴があった場合が多いでしょう。

学校や職場では、名前を覚えてもらうことはもちろん、人柄や仕事ぶりもだんだんとわかっていきます。
しかし、一期一会のような相手の場合、その後も関係が続くかどうかの決め手の一つが、自己紹介で何を語るかではないでしょうか。
また、場面や相手によって、どんな自分をどのように表現し、伝えるかで印象が左右されることも多いです。

自分をポジティブに捉えて、道を開いていく

フリーランスで生きていくなら、人脈作りも重要」というのを聞いたことがあります。

経験も実績もない私が、この先フリーのライターとして生きていこうとするとき、どうやって人脈を作ればいいのでしょう。
今まで出会った人たちに頼るとすると、私は、どんな印象を持ってもらえていたのかと思うと不安です。
自信がないからと言って尻込みしていたら、いつまでも道は開けません

もり塾を卒業し、フリーライターと肩書きを入れた名刺を作ったものの、どこの会社にも所属していない自分。誰かに紹介してもらいたいならば、まず、自分で自分を紹介できるようにならなければならないと思いました。

今、再び自分に問います。「紹介したい自分とは?

60年近くも生きてきたのだから、何かしらの個性や誇れる技術、自分では価値を感じていなかったけれど、一朝一夕でほかの人には真似のできない何かがあるはず。

それを、探し出し、掘り起こし、生かしていく

後に、講座の先生や同期の仲間たちに言ってもらえたことで気づきましたが、私の場合、かつてのアパレル販売の経験が、その一つです。
初回講義のときは現職ではなかったので、発表する自信がありませんでした。

自信のない部分に目が行きがちですが、客観的視点を持って、自分をポジティブに捉え課題発見に繋げます。
今の自分に少しの理想をプラスすると、目指したい自分の像が出来上がります。
それに向かって努力をすると、自信が生まれる。
その自信によって相手への印象が強まる。
そんなループが出来上がったら最強です。

名刺ホルダーだけでなく、相手の脳内に、どれだけ自分を保存してもらえるか。
「脳内名刺」とも言える自己紹介を極めていこうと思います。 (続く)


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