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読書録「ペガサスの記憶」その2

 
 前回の続きです。

 今回はかれんさんの妹・ノエルさん誕生のお話。


次女・ノエルさんの妊娠と出産

ノエルさんを妊娠した著者の洋子さんは、とんでもない出産計画を考えます。

 二回目ともなれば、体型のカモフラージュは既に熟知しているから楽勝だったが、最後の二ヶ月に姿を消す口実に、もう仮病も使えそうもない。それで発想を大転換して、今度は気宇壮大に世界を股にかけた出産旅行を企んだのである。

P.93より

 この頃は敗戦後の渡航制限が撤廃されて、時間とお金さえあれば誰でも海外旅行ができるようになっていたそうです。船の中で出産すれば費用もかからず、見てまわりたい国々を周遊することもできる!これは一挙両得の名案だと思ったそう。

 臨月の身体と重い荷物を抱えてエスコートもなしに世界旅行なんて滅相もないと、家族友人打ち揃って大反対の嵐だったが、こんなときの私の決意はビクとも揺るがない。

P.98より

 本当に船に乗り込み、世界へ出発した著者はヨーロッパ各都市を巡り、マルセイユから出港した船はエジプトに寄港。臨月にも関わらず大きなお腹でラクダに乗る著者の写真が載っています。(私も10年ほど前にエジプトでラクダに乗ったことがありますが、単身でも怖いもの…)


 船の旅も最終日に近づいたクリスマス・イブの日、ついにノエルさんを出産します。

 クリスマス・イブの海はひどい荒れ方でした。皆、右へよろめき、左へ泳ぎ、空を掴みながら、それでも盛大に着飾って、カクテルパーティーに集ってきました。
 実はその朝出血を見ていて、いよいよその時が来つつあることを、私は知っていたのですが、早くから騒ぎ立ててヘリコプターでも呼ばれ、莫大な請求書が来たりしたら困ってしまうし、船上のクリスマスなんて洒落た機会をオジャンにしたくなかったので、いざという時まで黙っていることにしたのです。

P.101より

 最初の痛みが私を揺り起こしたのは十二時をまわった頃でした。
 どんどん間隔を狭めていく激痛にのけぞりながら、私は深呼吸を繰り返して、無理矢理本を読み続けました。文字が文字に見えなくなった時、私はついに教授がいる隣室の壁を叩きました。
 彼は看護師を呼びに駆けて行きました。でも赤ん坊は、彼の助けを待たなかったのです。雪崩のように体中が轟いたかと思うと、彼女は私の子宮を蹴って自分で飛び出してきたのです。そして弾けるような産声。
 私は毛布をめくって、その血まみれの生きものを、しげしげと覗き込みました。おそろしくちっぽけなくせに、そのケロリとした顔つきには、早くも同志の風格が認められました。

P.104より

 ノエルさんの名前の由来はまさにクリスマス・イブに産まれたことから。船長さんによって命名されました。



 海外旅行をしながら出産までしてしまう。
 私も海外を周遊はしたいけど…!絶対にリスクを先に考えてしまいます。ノエルさんを無事に出産できたのも、バイタリティ溢れる著者が引き寄せた力なんだろうなと思いました。
 
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