読書メモ:質と量の観点から、すべてのビジネスマンにオススメできるビジネス本大賞受賞本『経営戦略全史』三谷 宏治さん
2020年8月に人生で初めて、本を写す(写経すると言っています)ことを始めた本です。メモしかしていませんが、この本は『世界標準の経営理論』のもう少しライト版かつさらに読みやすくて名著ですので、noteにてシェアします。漫画版も出ているようなので、そちらを読んでから本著 or 『世界標準の経営理論』を読み始めるのも良いかもしれません!ちなみにこちらの初版は2013年(!)、『世界標準の経営理論』は2019年と発想としては三谷本が早かったということは三谷さんの先見の明を表すものかも。
※本noteの内容はすべて 『経営戦略全史』 三谷宏治 2013年より引用しております
はじめに
60年代に始まったポジショニング派が80年代までは圧倒的でそれ以降はケイパビリティ派
ポジショニング派:ポーター
大テーラー主義 定性分析
ケイパビリティ派:ジェイ・バーニー
大メイヨー主義 人間的議論
しかし、ミンツバーグ(1939~)がアウフヘーベンする
すべては、状況次第。外部環境が大事な時にポジショニング派的に、内部環境がダイジな時はケイパビリティ派的にやればよい
ただ、21世紀に入って状況は激変
ポジショニングもケイパビリティもあっという間に陳腐化する時代へ
そこで出てきたのがアダプティブ戦略(米軍のイラク戦争での大失敗の果ての成功)
第1章 近代マネジメントの3つの源流
巨人たちの午後1 科学的管理の父テイラーと人間関係論の始祖メイヨー
正当な尺度を作って測って資本家と労働者の双方が徳になるようにする、がテイラーの科学的管理法
合理的経済人ではなくて、社会人・情緒人である。労働条件と生産条件は関係ない、雑談だけでみんなの生産性があがった
テイラーが怠業と不信、恐怖が支配する19世紀の向上に「科学的管理法」を導入した
ショベルの最適化
大きさと、用途に分ける
運ぶ量の最適化
労働者は労働条件の改善と経済的インセンティブで動く→『価格的管理法の原理』(1911)
①タスク管理
②作業研究
③マニュアル精度
④段階的賃金制度
⑤職能別組織
メイヨーが「社会的存在としての人間」を見出した
労働環境も生産性と関係ないことが実験の結果わかった
2万人を前に雑談(面接)をしただけで生産性が向上した
労働意欲は労働条件より人間関係が決まる:経済人から社会人へ
人は経済的対価よりも社会的欲求の充足を重視する
人の行動は合理的ではなく、感情に大きく左右される
人はフォーマルな組織よりもインフォーマルな組織(派閥や仲良しグループ)に影響されやすい
人は客観的な職場環境の良しあしより職場での人間関係に左右される
コラム マズローの夢、釈迦の諦念
マズロー 欲求階層説 (1943)
①生理的欲求>②安全欲求>③愛・所属の欲求>④自尊の欲求>⑤自己実現の欲求
釈迦
四苦八苦 無知と煩悩
人は感情の生き物だが、それはコントロールできる。特に欲を失くすことで幸せになれる
フェイヨルが企業活動を定義し全社的統治プロセスを作った
フェイヨル フランス人 鉱山経営のプロ
はじめて企業活動における必要不可欠な活動を6つに分類・整理した(1917)
技術活動・商業活動・財務活動・保全活動・会計活動・経営活動(アドミニストレーション)
組織レベルがあがるについれて経営活動の比率はあがるべき、社長は50%を経営活動とした
経営活動(経営管理プロセス)
計画→組織化→指令→統制→統制(POCCC)
第2章 近代マネジメントの3つの源流
巨人たちの午後1 科学的管理の父テイラーと人間関係論の始祖メイヨー
バーナードは世界恐慌で苦しむトップたちを『経営者の役割』で鼓舞した
世界恐慌→大きな外部環境変化に対して経営者がどういった方向を打ち出し、どう対処するかで企業の命運が決まった10年
「組織はシステムとして外部環境変化に対応せよ」『経営者の役割』バーナード(1938)
要件は3つ:①共通の目的=経営戦略 ②貢献意欲 ③コミュニケーション
ドラッカーは「マネジメント」の有用性を世に広めた”伝道師”
ドラッカーの問い
企業を中心としたこの「産業社会」は社会として成り立つのだろうか?そして「社会的存在としての人間」はこの産業社会において幸せになれるのだろうか?
答:「分権化」と「マネジメント」が彼の答え
企業とマネージャーの存在意義を明示した『現代の経営』(1954)
企業経営を3つの側面にわける
①顧客の創造:企業は顧客に価値を創造するためにある
②人間的機関:企業はヒトを生産的な存在とするためにある
③社会的機関:企業は社会やコミュニティの交易をなるためにある
目標による管理:MBO, Management By Objectivesと自己管理の原則
アンゾフは「市場における競争」の概念を持ち込んだ「経営戦略」の真の父
そもそも「戦略」は軍事用語。ランド研究所で働いたアンゾフが「市場における競争」という概念を持ち込んだ @企業戦略論(1965)
3Sモデル:意思決定の対象を戦略strategy, 組織structure, システムsystemsで考える
経営戦略を「現在と未来を繋ぐ方針」として「ギャップ分析」とした
未来の自社の姿(to be)を描き、自社の現在地(As Is)を明確にして、その差を埋める
経営戦略を
事業戦略(各事業の方針を決める)・企業戦略(全体を管理・統合する)
「競争に勝つにはコアとなる強みがなくてはならない」
4つの戦略的要素が成功する経営戦略(特に多角化)には次の4つの戦略要素が大切
①製品・市場分野と自社能力の明確化
②競争環境の特性理解
③シナジーの追求
④成長のベクトルの決定
アンゾフマトリクス
市場浸透戦略:既存の市場を相手に既存の製品で戦う
市場開拓戦略:既存の製品を新しい市場に売り込む
製品開発戦略:既存の市場に新しい製品を開発し、売る
多角化戦略:新しい市場に新しい製品を開発する
内的アプローチの提示、『戦略経営論』(1979)
外部環境への順応だけでなく、内部要素の重視
戦略作成だけでなく実行とコントロールの重視
社外環境のハード面だけではなく社会政治面の重視
なによりも外部環境の「乱気流度合い」に併せて、企業の戦略や組織は「同じレベルで」変わらねばならない
チャンドラーは本当に「組織は戦略に従う」と言ったのか?
戦略と組織という題名だが、
本当に伝えたかったことは「組織と戦略は相互に関連する」
経営者にとって事業戦略は変えやすく、組織戦略は変えにくい(実行が難しい)から、事業戦略に沿って組織戦略を立案・実行していくのが無難
バウアーはマッキンゼーをつくり「組織戦略」を推し進めた?
アンドルーズは「戦略プラニング手法」を広めたが、戦略自体はアートだと信じた
ポーターのHBSの師匠
近代マネジメントの到達点『ビジネスポリシー』
swot分析を考え出した
目標達成にポジネガx要因 内部・外部
SWOTマトリクスはただ整理するだけのツール
企業戦略はある種のアートと考えていた
コトラーはマーケティング界のドラッカー
戦略的マーケティング・プロセス
R・STP・MM・I・C
(R)調査
(STP)セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング
(MM)マーケティングミックス
(I)実施
(C)コントr-る
ロージャース 『イノベーションの普及』 (1962)
イノベーター(2.5%)
アーリーアダプター(13.5%)
アーリーマジョリティ(34%)
レイトマジョリティ(34%)
ラガード(16%)
ジェフリー・ムーアが1991年にアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間に容易に超えられない大きな溝(Chasm・きゃずむ)があることを説いた
第3章 ポジショニング派の大発展(1960年~80年代)
ヘンダーソンによるBCGの誕生と3つの飛躍「時間」「競争」「資源配分」
ジョン・クラークソン -2代目のBCG CEO
経験曲線を開発
当時の日本企業の戦略を説明
アラン・ゼーコン
「事業に自信があるなら借金を増やせ」
低価格で経験量を増やしてコストを下げ、借入金を増やすが配当は抑えて、「持続的成長」を達成していた
経営者たちの最大の武器となった「成長・シェアマトリクス」
プロダクトポートフォリオマネジメント
作ったのはBCGの1年目の天才コンサルタント リチャード・ロックリッジ
ヘンダーソン(BCG創業者)が生んだ「大テイラー主義」
ポーター ポジショニング派のチャンピオン登場
『競争の戦略』でファイブフォースフレームワークを提示した(1975)
『競争優位の戦略』(1985)
バリューチェーンー → フェイヨルに期限をはする
ナポレオンは勝てるところだけで戦った
トゥーロン港を取るために、小さな丘の小さな砦レギエットを取る
第4章 ケイパビリティ派の群雄割拠
コラム トヨタ生産システム。在庫は悪だ。
デミング「規模に頼らずとも、品質を上げればコストも下がり、顧客満足度も上がる」「そのためには統計を駆使して、モノだけではなく、プロセスの品質を上げよ」
国勢調査支援に来た、統計の博士
トヨタも目指していたのは「規模に頼らない生産性向上」
大野耐一『トヨタ生産方式』(1978)の副題は~脱規模の経営を目指して~
改善活動を現場の作業者が行った
アメリカではエンジニアの領域にワーカーが侵入、ワーカーへの労働強化ととらえられ、訴訟ごとになる
日本企業の精算システムはデミングの教え(統計手法)を声て、その先(人間中心の精算システム)にまで到達した
ピーターズらが放った反ポジショニング的ヒット作『エクセレントカンパニー』
マッキンゼーの7S
ポジショニング派とは一線を画す定性分析が織り込まれた分析
生産おたくのストーク、ヤンマーに学ぶ
『タイムベース競争戦略』(1990)
時間をベースにした戦略 → 1種のケイパビリティ派、しかし「測れる」
あらゆるもののコストではなく時間を図る
2つの要素
付加価値の向上
顧客の要望から対応までのリードタイムを短縮することで付加価値は上がる
あらゆるプロセスにかかる時間を短くすることでコストは下がる
ハメルとプラパラードの未来に向けた成長戦略「コア・コンピタンス」
業界分析が戦略の要などというのは神話に過ぎない、まずは自社と未来の競合相手をよく見比べて、自社のコアコンピタンスを見極めよ
ケイパビリティが先、ポジショニングは後
フォスターがリードしたマッキンゼーの「イノベーション戦略」
イノベーション理論の始祖はシュンペーター『経済発展の理論』(1912)
起業家の行う普段のイノベーションこそが経済を変動させる
キーは担当者の変更
博学センゲの『学習する組織』(1990)
個々人が旧来の思考方法(メンタルモデル)をやめて
他人に対してオープンになること(自己マスタリー)を学び
会社や社会の実際のありよう(システム思考)を理解し
全員が納得できる方向性(共有ビジョン)をつくり
そのビジョン達成のために協力する(チーム学習)
野中幾次郎(UCバークレイ博士)のSECIモデル
知識よりも戦略に対する重要性の理解や思いを持っている適切な人を集め、戦略の方針さえ決めれば、詳細の部分はチームが決めて行っていく
バーニーは「資源ベースの戦略論」で資源優位を説いた、が
イノベーション理論の始祖はシュンペーター『経済発展の理論』(1912)
バーニーのVRIOフレームワーク Value, Rarity, Imitability, Organization
第5章 ポジショニングとケイパビリティの統合と整合
ポーターが世紀末に放った反撃の一打『戦略とは何か』
…
日本企業は顧客満足を重視するあまり、すべての顧客にその求めるすべての商品サービスを提供しようとして、自社のポジショニングを失ってしまう
ミンツバーグの「コンフィギュレーション」経営戦略
状況に応じてポジショニングとケイパビリティを統合せよ
『戦略サファリ』ミンツバーグ
1976年にアンゾフは『戦略経営論』で
不連続な乱気流の時代になること、それに乗り切るにはそれに合わせてポジショニングとケイパビリティを整合させなくてはいけないこと
ミンツバーグ
「よきマネージャーは教室では育たない」『戦略クラフティング』(1987)
キャプランとノートンが提唱した管理手法
バランスドスコアカードですべてを繋いで図る
財務の視点>顧客の視点>内部業務プロセスの視点>イノベーションと学習の視点
ポジショニングやケイパビリティをつなぎ、それをさらに財務指標までつなげようとした
キムとモボルニュはポジショニングとケイパビリティを融合した
よい戦略とは敵のいない新しい市場を創り出すこと
戦略=新しい市場コンセプトの案出とそれを実現するケイパビリティの創出(バリューイノベーション)である
ブルーオーシャンは期間限定、その探索は永遠
ベゾス
ブルーオーシャンを作り続けた
環境に応じて変化しし続けた
第6章 21世紀の経営環境と戦略概論
境界の崩壊 産業・企業・機能の融合と再編
機能境界の崩壊
機能そのものではなく、機能と機能のつなぎ目にこそ問題がある、とおそらく最初に気づいたのがトヨタ
機能間をうまく繋いでいた在庫を「悪」として追放し、製造機能全体を一体として管理するために「看板方式」などを生み出した
同じことを顧客側でやったのがCRM
顧客戦略のもとにそれまでバラバラだったマーケティング、セールス、サービスの諸機能を統合的に強化しよう『CRM 顧客はそこにいる』(1998)
クリステンセンがリードする「破壊的イノベーション」を生む「リーダーシップ」
顧客志向の優れた経営は衰退する 『イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン
イノベーション自体が革命的か斬新的かは失敗に関係ない
失敗するのはリーダー企業が顧客志向でありすぎるため
新しい技術や仕組みは遠く離れたところにうまれ、急速に進化してゆく
その解決策を組織に求めた
小さな別動隊を作って、別の指標で管理して、既存顧客には売り込まず新しい顧客を開拓しよう 『イノベーションの解』(2003)
その後、答えをリーダーシップに求めた 『イノベーションのDNA』(2011)
行動で変えることができる!
①関連付ける力 ②質問力 ③観察力 ④ネットワーク力 ⑤実験力
2から5は行動
エヴァンスが見抜いた「ネット」の本質
「業界も企業も機能もすべての境界があいまいになっていく。生産者と消費者の区別すら」といったBCGのエヴァンス 『ネット資本主義の企業戦略 Blown to Bits』(1999)
インターネットのもたらず本質的変化を情報における経済性の変化であり、これまでトレードオフの関係にあった「リーチ」と「リッチネス」の労率が可能になった
情報の発信と収集におけるトレードオフのカイゼン
ラーニングの新しい動き フューチャーセンター
『The Shift ワークシフト』(2011)でリンダ・グラットンはワークシフトが必要だと説いた
シフト①:出来れば好きなことの中で複数の専門性を持つ
シフト②:他者とネットワークを作る。やすらぎを感じられる人間関係も含めて
シフト③:所得と消費による満足から脱却する
コラボレーティブワーキング ※リンダ
企業対企業、個人対個人の戦いから、企業間や個人間の「協調」こそがこれからの社会の在り方だし、狭く言えば、競争力の源になる
第7章 最後の答え「アダプティブ戦略」(2010年~)
ワッツの一撃。歴史に学ばず、衆知と対象実験に学べ
ヒトは後付け解釈が得意である
ダンカン・ワッツ (社会学者) 偶然の科学 『Everything Is Obvious * Once You Know the Answer』
すべては自明である。答えを知ってしまえば
歴史から「答え」は学べない -ワッツの主張
ヒトは現在と過去を必然と思いたがる生き物
ハロー効果-ヒトは結果に目が眩む
自己奉仕バイアスーヒトは自分に甘い
特に日本人は集団奉仕バイアスが強い
失敗しないためには逆張り!
過去(成功)から学ばない
結果(成功)だけで見ない
自分で自分を評価しない
ダンカンの提示
「現場の知を信じ、衆知を集める」
①オープンイノベーション
②ブライトスポットアプローチ
③実地の対照実験
シュミットとページがリードするグーグルの超・試行錯誤型経営
「理想の組織」はボトムアップや試行錯誤を許さない
理想の組織
統制の取れたチーム
統一的大局観
厳格な指揮命令系統
それでも現場では試行錯誤やボトムアップが行われた
HR・マクマスター
命令ではなく作戦マニュアルで行動を変える
一枚岩の「理想の組織」こそ失敗しやすい、また理想の戦略はない
現代戦における戦略は現場での試行錯誤とそのフィードバックによってのみ成立する
デザイン思考の循環的プロセス
観察に夜発見、これが「ビジネス・エスノグラフィー」
「どんな収納が欲しいですか?」ではなく、実際に「何が収納として使われていますか?」「どれが不便そうか?」
まとめ
B3Cモデルフレームワークで戦場を定義せよ
上段で事業へのスタンス、下段で勝ち方を決める
上段に企業戦略 (invest or not)
下段に事業戦略 (how to win)
市場の魅力度
規模 (自社比)
成長性 (PLC)
収益性 (5フォース分析)
事業特性
アドバンテージマトリクス
上位集中度分析
コストビヘイビア分析
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