カセツ展ルポルタージュ

カセツ展行ってきた。


東大今井研究室の研究発表の展示で、仮設足場用の鉄骨を使った仮設建築を研究するというもの。3Dプリンターを使った接合部を製作し、壁体を作ることで空間を構成する。

整ったシステムのようでいながらよく見てみると結構試行錯誤して製作した痕跡が見えてきて、良かった。研究しながらの施工になったから、施工期間は1,2ヶ月ほどかかったらしい。


外壁パネル接合部

外壁パネルの接合ディティールは素晴らしい。横からプラ段を差し込んでボルトで固定するというシステム。光を入れながら視線を遮り、音や風は薄く遮る。外界との境界は薄く、柔らかく境界を設定する。

建具レール

建具上部レールは市販のアルミチャンネル。下部は無垢の角棒を3本合わせていた。

ドア下部レールのディティールが定まっていなかった。入口側のレールは接合ユニットの中に入っているけど、戸袋側のレールはビスで外から止められている。外壁パネルを優先させる。定まっていないシステムを許容するディティール。良い。

内壁パネル

タイプA
タイプA


タイプB

内壁パネル接合部も2種類のディティールがあるのか。3枚目の鉄骨に直接結びつけるディティールで良い気もするけど、どんな理由があるんだろ。

と言っていたら宮地が教えてくれた。縦の鉄骨接合部に差し込むタイプAが基本のディティールであり、すべての接合部に鉄骨が入っている場合は3枚目のタイプBが採用されるとのこと。すべての内壁に対して横材が入っているわけではないらしい。

床パネル


床板にCLTを使っていてなんかうけた。別に合板で良い気がするんだけどなんでだろうな。確かに合板だと床板っぽくないから集成材を使いたかったけど、床板の方向を合わせるためには支持点的に弱い方向になるからCLTを使ったとか…?にしても実物のCLTって初めて見た気がする。 しっかり面取りもされていて良かった。


接合も結構しっかり検討されていて、固定するために単管用のジョイントと根太みたいな材を繋いで、それを床板とビスで接合している。ジョイントと根太のユニットを作って鉄骨に付けてから、床板置いて上からビス打てばいいかと思ったけど、床板のサイズを決定しちゃえばそこまでしっかり位置決めしなくてもジョイントはくっつけられるのではと後からアライさんに言われて確かにと納得。ビスも見えないしね。

手すり 麻紐仕上げ

ブレースを手すりにして、麻紐を巻きつけることで手すりとしてのアフォーダンスみたいにしている(?) 麻紐仕上げって巻くの大変だろうな…

屋根の勝ち負け


鉄骨が屋根を突き破るディティール。最高。

屋根自体をセットバックさせるのではなく後から削ったように見えるのは、ここが納まらないことを想定していなかったんだろうな。ここのぶつかり合っている状態を許容しているように見える。

ネガティブな手癖

ある程度決まった接合システムに対し、細かい寸法などは現場で合わせているように見える。建具レールや鉄骨と屋根の取り合いが上手くいってないことがその顕著な例だろう。

やっぱり一度出来上がったシステムに人間側が追いつけなかったり、システムに不備があったときにどうやって納めるかみたいな。そういうところにぐっと惹かれてしまう。粗探しをしているみたいで少し申し訳ない気持ちもありつつ、そういう不完全さをどうやって受け入れるのかという対応に人間らしさを感じるんだよな。

ドアのレールの収まりにしても、その部分を設計し直せば良いんだろうけどそうするわけにもいかない(研究室には3Dプリンターは1台しかないらしい)。仕方ないからここは外からビス止めにするか。という誤読をしてしまう。

システムが破綻したときに、どっちを優先するの?という問題に対して出てくる納め方からは結局その人の手癖が見えてくるってことか。嶋田がゼミでやってることってこういうことなんですね。最高。

福島先生が言ってる手癖とは、法規やセオリーにはない建築のぼんやりとした部分が、設計者の感性によってこれが良いと定義されて決定される、自分ルールのようなものだろう。


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