no.1『小さな宇宙』
私の二の腕を這うように
あなたの柔らかい黒髪がさわさわと音を立てている
瞼の蓋をトルコ石のような涙で飾って
ずっと私
見ていられる
あるときは文字を
あるときは身体を
あるときは影を
あるときは空を
重ねて、混ぜて、結い上げながら
これからどうしようかなんて私たち
心の臓でケラケラ笑った
心地よい部屋の温度をなぞりながら
私は私でいることを手放して
私があなたの声になる
あなたの指も溶けていく
炭酸水に満たされたビーカーの中では
目盛りは意味を成さなくて
永遠のような時の中では
一瞬こそが特別なのね
それを引き伸ばし続けること
それが幸福な人生というものらしいから
誰に教えてもらったかは忘れてしまったけれど
あなたは私の上で少し口角を上げると
その口元から鮮やかな泡をこぼした
ビーカーから溢れてしまわぬようにと祈りながら
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