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”情報を共有する”と言う事

御殿場の要約筆記サークル「さくらんぼ」で実践した「バリアフリー」→「ユニバーサルデザイン」を意識した字幕提供の実践例を紹介します。

文字情報をベースに「みんなが情報を共有する」と言う事を今一度かんがえてみよう、ということでスタートしました。

1.背景

これまで、福祉系や市民活動系のイベントというと音声情報だけで進行することも数多くありました。

最近では合理的配慮などの考え方も進み、要約筆記や手話通訳が付くイベントも増えました。

スタートは聴覚障害のある方に向けて・・・ということでしたがいまは 個人が抱えている障害だけで状況がきまるわけではなく「環境が障害を生むことがある」という点も加味し、現状の提供状態でお客さん全体は満足しているのか?という点から、トライをしていくことになりました。

2.前提

今回は御殿場市で行われた「ふれあい祭り」をベースに字幕をどう提供するかを考えました。

御殿場市では、要約筆記の派遣事業があって、市のイベントには割と文字がつく状況にあります。

基本は障害者手帳のある方からの要請に基づいて筆記者が派遣されたり、イベント開催者が依頼したりするわけですが御殿場の場合は手帳がなくても、窓口へ相談をすれば、派遣が可能です。

今回も、市から派遣された通訳者によって字幕がつくことから、今回は関係者と合意がとれる範囲で 最大限のUD対応を!ということをやってみることにしました。

3.シチュエーションと目標

今回は、
①音声をつかう打ち合わせ/合意がとれていない
②支援に従事できるのは、要約筆記者
③インターネットは利用できる
という環境でした。

お客さん層をみると、子供からご高齢の方まで幅広く、いろんな障害を持った方も含め 様々な方が参加するイベントでした。

また、地域柄、駐屯地などがある関係で外国人の方も来場する可能性があります。

であれば、今回の目標をどうするか、ということで
①要約筆記者が使っている環境を流用し、
②利用者に優しい表示(ルビや英語)
を実現することにしました。

図で表すと、こんな感じでしょう。

4.実現手段

今回は、音声認識だけで…というわけではなくなってしまったのでいろんな組み合わせで実現することにします。

図でいうとこんな感じ。

接続が複雑なのは、ご愛敬です。っていうのも、①を実現するためですので。

今後は、まあちゃんをつかったり、UDトーク®を使えばもっと簡単になりますので、これは今後使ってもらうとして…

今回はIPtalkネットワークのデータを変換する形でまあちゃんに流し込んでいます。

ITBCを立ち上げた状態で、転送機能をつかいます。転送機能は、まあちゃんに内蔵されています。

この機能をスタートさせて、接続すれば、自動的にITBCで受信したIPtalkの文章をUDトーク®と共有することができます。

5.実現結果

実際の屋内舞台モニターではこんな感じで表示しました。IPtalkのデータは、まあちゃんがすべて機械的にルビ付けをし、モニター投影しています。

これをつかえば、子供でも漢字が読みやすいのと同時に、漢字を覚えるのが難しい方でも、読みやすい環境が実現できています。

会場のもう1つのモニターでは、機械英訳も出しました。

要約筆記者は日本語を勉強していて、きれいな文体を実現しようとする技量をもっています。

また、要約筆記の場合は、前ロールとよばれる事前原稿を用意している事もあります。

きれいな文章は、翻訳もすんなり意味の通る形になります。実は非常に相性の良い技術なのです。

なので、文章打ち込みのような「労働集約的」な業務は機械にシフトさせて人間の仕事を軽減させたうえで、こういう「人間ならではの仕事」に注力することで、利用者がしっかり理解できる情報を提供できる、という一例かと思います。

実際にこれを提供していた場はこんな感じです。

6.応用編

1つのシステムで完結していると、できる幅は小さくなりますが、新しいシステムを使い、繋げていくと、もっと色んなことができます。

たとえば、UDトーク®開発会社であるシャムロックレコードの最新システム「UDトーク® ARモード」。

iPad越しに覗くと、こんなふうに「話している人の上」に表示できます。

こういうようにITシステムをつなぎあわせることで「誰が話しているか認知しづらい」環境にある方にも周りの皆さんと同じように情報提供することが可能になります。

このシステムはシャムロックレコードさんのシステム提供で試験的にトライしてみました。

もう民間企業がリリースする道具で簡単に実現できる世の中です。

7.まとめ

今回のトライによって、ユニバーサルデザインの原則「誰でも利用可能であるようにデザインする」という状況を簡単に作り出すことができます。

原則1:公平性ーだれでも利用できる(英語・日本語…)
原則2:自由度ー使いたいものを自ら選べる(要約筆記/サークル)
原則3:単純性ーすぐ使える。(今回は前で見るだけ)
原則4:分かりやすさールビなどで誰でもわかる

少なくとも、この1~4をクリアできてます。

ツールや提供側の制約に囚われず、「何を実現したいのか」をベースに考えていくと、もっともっと 多くのひとが便利に使える、
必要とされる環境を実現できるし、固有の技能をしっかり発揮できるかと思います。

今後も、実践例は積極的に公開していきたいと思います。

■ツールへのリンク

<UDを実現する道具 (文字通訳以外でも活用できます)>
UDトーク:https://udtalk.jp
まあちゃん:http://www.caption-sign.jp

<要約筆記で使っている道具>
ITBC2:http://www.caption-sign.jp
IPtalk : http://www.nck.or.jp/iptalk.html




開発したり研究したりするのに時間と費用がとてもかかるので、頂いたお気持ちはその費用に補填させていただきます。