翻訳アプリを作って1年運用してみた。
今年1年、お金がかかるアプリをつくって、運用してみました。やり始める前には覚悟がいるけど、実際にやったら楽しかったし得るものが多かったっていうお話。
1.ターゲットを決める
今回つくったアプリは、「話した言葉を即興で翻訳して字幕に出す」アプリです。ゆかりねっとコネクターって言います。こんな感じで翻訳が出せるアプリ。
このアプリは、ゲーム配信やVtuberの方々、動画作成の方々が主に使ってくださっているアプリです。
これを作るにあたってですが、普段やっている活動・研究の関係で、音声⇒日本語にする部分は、優秀な携帯アプリ(UDトーク)と連携させてもらえる状況にありました。(Shamrock Records,Inc の青木社長、ありがとう!)
この高機能な音声認識を使って、「言葉の壁こえてコミュニケーションできないか」、それも「エンタテインメント」の領域で…なんて考えていたときに、「ゆかりねっと」という音声認識型発話アプリをみつけ、「連携できたらいろんなことできるな」と思い、勝手に連携を始めたところがスタートです。
2.運用にはお金がかかる
当然、エンターテイメント領域では「適当なもの」は評価されず、相手にもされません。それだけ品質を求められます。なので、翻訳に関してはクラウド型のAPIをつかって品質を担保することを考えました。
しかし、これは「使っただけお金がかかる」代物です。実際、どれだけウケるのかもわかりませんし、一度始めたら そう簡単に「提供止めます」っていうのも(できないわけじゃないし、背に腹は代えられないけれど)それもなんだかお粗末ってものです。
なので、多少の赤字は、経験値だとおもって飲み込むことを覚悟して、提供を始めました。
3.PCは課金プラットフォームが弱い
運用してわかったことは、「携帯電話アプリは課金回収システムがプラットフォームとして成立しているが、PCではその仕組みが弱い」ということです。
最近ではようやくサブスクリプションという形が浸透してきましたが、PCではプログラムは買い切りでスタートしてきた文化もあり、そのようなプラットフォームは個別の(仕組みが複雑でお金もかかる)システムが必要でした。
ソフトウェアのVectorさんをみても、基本的には買い切りです。APIを使うようなアプリケーションには向きません。
しかも、ユーザさんは「面倒なことは嫌い」です。毎月支援のために払い込み設定をするなんてことは やはりめんどくさい。(現に、noteをベースに支援をもらっていた時期は、まばらでした)
そう考えると、1度登録するだけで、任せきりにできるユーザさんに優しいプラットフォームが必要、ということに気づきます。
4.pixivFANBOXというサブスク型支援システム
ちょうど、そんなことをまとめで書いていた時、「pixivFANBOX」をつかうといいんじゃない?と声をかけていただきました。
どうも、創作者を支えるシステムとのことで、たしかに簡単にみえたし使っているひともそれなりにいたので、登録して運用したところ、これが双方にとってHappyなシステムだということが分かりました。
きっと、このシステムが導入できていなかったら、このシステム維持はうまくいっていなかったかもしれません。
同時に、定期的にご支援いただけることへの感謝と説明責任をはたすという点から、毎月の利用実績をFANBOX上のブログで実施することにしました。
5.利用者が増えてからの課金増加
当初は、Google Cloud Platform にある翻訳エンジンをつかって進めていましたが、まぁそれなりのお値段するのです。($20/100 万文字)
5月の時点で400万文字・・・おおよそ9000円ぐらいになっているわけです。正直、この伸び方をみて「ちょっとまずいかな」と思い始めました。
この時点では 毎月 ¥-5,000円程度の赤字。5月時点で累積赤字が¥7,000 円程度。このまま進むと多分1年持たないな、と。
なので、ここで他社の翻訳も使うことを考え始めます。
色々調べてすぐ使えそうなのは、Microsoftの翻訳APIだということが分かります。価格としては、100 万文字あたり ¥1,120。おおよそ半額で提供できるなら、まずはこれにシフトして様子を見よう。
プログラムを一気に巻き替え、6月から様子を見始めました。
(そういうこともあり、6月は過渡期で利用が下がっている)
6.支援価格の設定
サラリーマンをやっていると、この「値付け」・・・いわゆる自分が提供しているシステムに対しての価値設定がとても難しい。
最初、使いやすさを考えて「200・500・1000」と設定しました。
ほとんど使わないケースを想定して200円、過酷に使うからとか応援したいからって言っていただける方は500円、1000円と設定していますが、実際のところ、この200円が妥当であったのかは正直今でも自信はありません。
ある人に聞くと「安すぎ。もっと価値があるなら思い切った設定をしないと」といわれてしまいましたが(^^;
FANBOXって、あとから設定をずらしたりすることはできなくて、ある意味値下げは気楽に設定できても、値上げはやりにくい仕組みなんですよね。
「その登録を一回終了して、改めて登録してもらえば値段は変えられるけど、その分支援離れも覚悟しなきゃいけない」というシステムです。
このとき、「お金が欲しいんだっけ?それとも、もっと支援してあげよう、もっと使いこもう!と思ってもらえるようにしたいんだっけ?」という葛藤がうまれ、結果的に値段を変えずに続けています。
そういう意味では、40人以上の方に継続的に支えて頂き、1年後の収支もそこまで悪くない状況という点では選択が正しかったのかな、なんて思います。
7.支援者の増減
FANBOX特有の話なのですが、支援者の増減がリアルタイムに見える仕組みです。たとえば、こんな風に。
これ、見始めるときになっちゃうんですよね。精神衛生上よくないんで、あまり見ない方がいいです、はい。
がくっと下がっていたら何かあるんでしょうけれど、仮に1名減ったといって「何が理由で減ったのか」をずっと考えて気を病むよりも、次の1名に手を挙げてもらえるように品質やPRをするほうがずっと精神的に良い状態を保てます。(個人の事情で去る方も多くて、理由を考えていたらきりがないのです)
8.1年収支
今回の仕組みは、「これでめちゃ儲けようというわけではなく、トントンぐらいになっていればいい」という点から始めているので、今の状態がめちゃくちゃ悪いわけじゃなくて、来年もこれぐらいの比率で拡大していけたらトントンになるのかな、なんておもっています。
こういうのは、やってみないと分からないし、いい経験させてもらえたんじゃないかな、と思っています。
結果的に、1年で12万円のAPI利用料となったわけですが、12万円でおおくの方に「コミュニケーションがとれる環境」をご提供できたなら、12万円以上の価値があるんじゃないかなぁ、とおもっています。
9.やってみておもしろかった
いろんなバグ報告は来るし、リクエストもあるし、改善したいところもあるんですが、ほんとこれはやってみなければ体験しえなかった事ばかりです。こういう経験は(すこしお金はかかるけど)やってみた方がいいですね。
45人もの方々に支えて頂いたり、紹介動画・ブログを書いていただいたり、実際に配信で使っていただいたりしながら、ここまでやって来れたことは楽しかったし、ほんとよかった。
来年は、いろいろ改善したい点がでてきているので、やっていきたいし、VR領域でも実現したいことがあるので、トライしてみたいですね。
あとは、Vtuberさんにもドンドンつかってもらいたいし、ぜひ輪にはいってきてもらいたいなぁ、なんておもっています。
本体の英語化も、ほぼ終わっているので、海外の方にも使ってもらえたらうれしいかなぁ。
とまぁ、1年を総括してみましたが、結果、あの時やろうと思ってなかったら、この景色はなかったわけで。ほんと良い体験をさせていただきました
今後もよりコミュニケーションが取れる世界・環境を目標に、皆さんと一緒に歩み、このツールを育てて、提供・維持向上していくつもりです。
今後も「ゆかりねっとコネクター」共々、宜しくお願い致します。