森見登美彦氏とわたし【出会い編】第二回

前回書いたとおり、学生の頃は京都の最高学府に通う歳上の恋人との遠距離恋愛を謳歌していた。

大学生だった当時の私は、東京の沿岸部に棲みながら書店のアルバイトをする似非文学青年だった。

恋人は頻繁に東京の私の下宿を訪れていたが、私が恋人の住む京都へ訪れたのは、遠距離恋愛開始からずいぶんと経ってからのことだった。

アルバイト代を貯め、食費や光熱費を切り詰めていざ新幹線で京都へ向かう。

京都へ行くのは中学の修学旅行以来のことだったので、興奮に近い高まりを感じたのを覚えている。
もちろん、恋い焦がれたパートナーにあえるのも嬉しかったけれども。

当時の私は、万城目学作品にどっぷりハマっていた。
ホルモォォォォーっ!と叫びたくなったり、水の力を司りたくなったり、神無月を待ちわびたりと、遅れてきた中二病に悩まされていた。

そんな私が京都へ訪れた。
金曜日の夜に到着し、土日で京都観光をしようというプランだった。

「ひろくんはどっか行きたいところある?」
「四条烏丸の交差点」

わたしは大真面目に答えた。

これが森見作品と出会う大きなきっかけだったのである。


第三回に続く


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