タロット17:星(The STAR) 星からの贈り物は”エルピス”という名の預言書
塔に続くカード、17:星 The Star のお話です。
17:星のカードは「希望のカード」とも言われてたりしますね。
ただ、ウェイト版を作ったウェイトさんも、星のカードを「単なる希望」として安っぽく読まれることは否定しています。
クライアントさんからも「星と太陽の違いって何ですか?意味が近いですよね?どっちが良いんですか?」と聞かれることがあります。
確かに「希望」を中心とした解釈だと、確かに太陽に意味が近く区別しづらい感じもします。
では星には、太陽の持つ幸福さとは違った、どんな希望の意味/解釈があるのでしょうか?
星のカードも塔同様に、後から加えられたカードと言われています。「17:星」の絵柄はタロットの歴史の間で長く変わってきたようです。
星のカードは、天体に浮かぶ星々に捧げられた 3 枚のカードのうちの最初のカードです。星に続くのは、月→太陽の順番。
The Towerから引き継ぐ、一番目の天体のカードにはどのような意味と役割があるのでしょうか?
まずは星に一般的にどういう解釈や意味があるのか、ざっと見ていきましょう!
先ずは、星の一般的な意味を知らべてみる
ウェイト版に描かれている星は、一つの大きな八芒星と、小さな八芒星が7つ。
これらは北極星とその周囲を回転している北斗七星だとも、シリウスとその周りを囲むオリオン座だとも言われていますが定かではありません。
「7」は創造主が天地創造に費やした期間です。
これは我々が現在使用している暦において、一週間を構成する7日間にもなりました。
そして、八芒星は別名ベツレヘムの星と言われています。
そう、キリスト誕生を告げた星。
17:The Star(星)の成り立ち
星に導かれる者たち
こちらは、15世紀半ばに描かれたエステのカード。
裸の女性ではなく、男性二人が描かれています。
男性二人は占星術師もしくは天文学者と言われています。
現代ではこの2つの職業は大きく変わりますが、当時は占星術師=天文学者でありました。
左の男性はユニークな帽子を被っていることから、異国の人だと推察されます。(西洋画においてユニークな帽子をかぶっている人は、だいたい異国の人。魔術師のページも参考にしてね)
この人は「東方の三博士」の一人だとも考えられます。
東方の三博士、占星術の学者たち
「東方の三博士・三賢人」とは、占星術の学者たち。
キリストがベツレヘムで誕生した直後、東の国では誰も見たことがない星が西の空にみえ、その星に導かれてベツレヘムへの道を進みます。
預言書の内容を手に入れた彼らは更に星に導かれ、イエスキリストの誕生に立ち会い、三つの贈り物を捧げた人たちです。
こちらの画像は、イタリアのサンタポリナーレ・ヌオヴォ聖堂のモザイク壁画であり、この三博士(三賢人)が描かれています。
右上には八芒星が描かれていますね。
ベツレヘムの星は八芒星(オクタグラム)で描かれていることがお分かりでしょう。
イエスは金星
明けの明星は、金星のことですが、キリストを表す言葉でもあります。
そう、キリストはこうおっしゃっています。
私は「輝く明けの明星」だと。
イエス・キリストの星への言及により、タロットでも「星」が後の「希望」を強く象徴するようになっていったのかもしれません。
ベツレヘムの星を目指して
こちらは、ミンキアーテのデッキ。
聖杯の贈り物を手に持ちながら、ベツレヘムの八芒星に従います。
下記はヴィスコンティ・スフォルツァ・タロット。
タロットの歴史を語る上で外せない、ヴィスコンティのデッキでは高貴な衣装を纏った女性が八芒星(金星)を掲げています。
このデッキはオリジナルでは存在せず、1475年以降に追加されたカードだと言われていますが、残念ながら彼女が誰なのかはわかりません。
タロットが17世紀頃にパリに渡った頃にも、描かれていたのは占星術師が中心のものが多くありました↓。
コンパスを持って星を見ていますね。
17世紀、マルセイユ版で現在の星に近い絵柄↓が登場します。
マルセイユ版がベースにしたと言われているのが、左:ケアリー(ケーリー)シートと呼ばれるカットされていないタロットのシート。
1500年頃イタリアでつくられたと考えられています。
ケアリーシート描かれているのは、水瓶座の男性だと言われています。
ここら辺あたりから、急速に星のカードは「水瓶座」との結びつきが強くなってきます。
そして描かれるのは男性から女性になり、星の中の女性はより神格化されていきました。
オカルティストたちは、カバラやエジプト神・錬金術などを集めて新しいタロットをつくりあげてきました(それの一つがRWS)。
星に描かれるカードの女性は、ニンフだともエジプトの女神イシスだとも言われています。
さらに時の流れと共に、女神が注ぐ水はエリクサー(永遠の命を授かる水)ですとか、女神には永遠の若さと美しさがあると性格づけられていきました。
17:The Star(星)の解釈
カードに描かれているのが天文学者であれ、裸の女神であれ、このカードの解釈は最初から「星の予兆 - sign -elpis」と「星からの贈り物 - gift」であることには変わりません。
星が星のカードである所以です。
星の啓示
西の空に今までなかった星が告げたのは、イエスの誕生と言う「予兆」です。そしてその主の来臨を告げるのも「星」の輝きでした。
クリスチャンにとっては、明けの明星はキリストの誕生と死を克服する「希望」を告げています。
この点から「希望」というワードは決して否定するものではありませんが、ライダーさんも言っている通り「単なる希望」では読みが浅いかもしれません。
それに余談ですが・・・
タロットのルーツとも言われているヴィスコンティ家のデッキでは星とは別に「Hope(望徳)」というカードが存在していました。
神を信仰するのに必要な三対神徳の一つで、ざっくり言うと「希望」と言う意味を持ちます。
そのカードがこちら↓。
そもそも「希望」とは何でしょう?
希望とは、良いものなのでしょうか?
悪いものなのでしょうか?
ゼウスから与えられた”パンドラの箱”の中には、あらゆる厄災が入っていました。
パンドラの箱を開けてしまった後、唯一その箱に残ったものが「Elpis(エルピス)」と言われています。
一般的には良きことに対する「希望」と解釈されるものです。この残った「希望」により、いつかは幸福が手に入るという希望を人は持てるようになったと言われています。
しかし、Elpisha必ずしも「良いものだけ」と言う確定的な解釈もされていません。
(ドラマでも「希望、あるいは災い」と表現されてましたね。)
パンドラの箱の底に残った唯一のElpisは、人々に「希望」を与えるものでもあり、希望を残すことによって人々は”希望”を知ることになってしまった「厄災」だとも言われています。
そもそもゼウスは箱に、ありとあらゆる厄災や不幸・禍いしか詰め込んでいませんしね。。。
夜中の星は、月と太陽を前にして何を伝えるか
タロットでは「星」の後に、18:月、19:太陽と続きます。
この星は「塔から落ちた人間を照らす明けの明星」ですが、まだ夜は明けていません。
次のカードは月であり、星が輝くのはまだ夜の時間だからです。
夜中に占星術師が天を見上げ、手に入れたものは何でしょうか?
彼/彼女が見つけたのは、明るく輝く「星」であり、その輝く星から見出すのは「予知・予兆」です。
その予知・予兆は「人々の明るい希望」かもしれませんし、「厄災」かもしれません。
「星」のカード単体では、希望なのか厄災なのか、その答えは出しません。
月や太陽より遠い宇宙から輝き、人はその星の輝きを頼りに手を伸ばし道標として、まだ続く闇夜の中をゴールに向かって歩み進めるしか無いのです。
星は「開いていない預言書」
星のカードの後には、一般的に良くないと言われている月が、その月に後にやってくるのは太陽です。
月と太陽という相反する二つのカードが控えています。
いくら明けの明星といえど、星は月と太陽の光の強さは超えません。
地球から見上げる明るさとしては、月にも敵わないからです。
星の予兆が、吉兆いずれなのか、月なのか太陽なのか、星には自身の予知の結果を言い切る力はないのです。
星は開いていない「予言書」です。
予言書を手にしたけれど、中身はまだ読めません。
ほら、満月の空の下では月明かりで預言書をかろうじて読むことはできても、新月の夜に星明かりだけで予言書の中身を読むことはできないでしょう?
星(サイン)を読む
星のカード単体が伝えるものの一つは、「先を読め」と言うことです。
次に進むマス目にあるものは、月なのか、太陽なのか。
星はそれ(予言書)を読む力を持てとあなたに語りかけます。
星は輝き、暗闇の中からあなたに光のサインを送り続けます。
そのサインを読み解くのはあなた自身。
占星術は現代では「占い」に一括りにされていますが、一昔前まではもっと生活に根ざしたものでした。
子供が生まれる時期を予測したり、種を撒く時期を知ったり、ナイルの川が氾濫する時期を把握するためのものでした。
星(サイン)を読むと言うことは、こういった予兆を読み取ることです。
星を読む力は、その読んだ先に、知っていれば避けられる不幸も、知っているからこそ確実に手に入れられる幸福にもつながります。
星が告げるものは「サイン」であり、そこからどう読み取り・どう行動するか、その人に任せられています。
これは、占星術であってもタロットであっても変わりありません。
星からの贈り物(エルピス)
贈り物の中に入っているのは何でしょうか?
箱を開けてみなければそれはわかりません。
星のカードとは、まだ箱を明ける前の贈り物みたいなものです。
それは「予兆というギフト」であり、
そこに詰まっているのは、月か太陽か、希望か幸いか。
それはまだわかりません。
塔から放り出されたあなたは生きています。
そして星あかりの下、星からのサインである予兆(預言書)を手に入れるのです。
そこには何が描かれているのか、何が入っているか、わからない。
あなたにあるものは「これからを生き抜く可能性」です。
そんなあなたにとって夜空に輝くあなたへの”サイン”は、星からの預言書という贈り物なのです。
占星術師たちがベツレヘムの星に導かれイエスの誕生を見届けたように、あなたにも導く星があることを、その星自身が伝えています。
星はただそこで輝いているだけ。
その星の輝きに気づき、サインを読み取り、歩みだすかは、あなたに一任されているのです。
希望を見出す〜タロット全体から眺めてみる:森下あかり的解釈
さて、タロットでは「なんでこのカードが出たのか」というのが、リーディングにおいてとても重要なポイントとなります。
類似のカードとの違いを見ていきましょう。
天体のカード3兄弟
並びもこの通りに番号が振られています。
この並び順にも意味があります。
それは明るさ(光の強さが弱い方から)の順番です。
星は自ら光を発しますが、月や太陽より遠い宇宙から輝くため、星の輝きは地上の生活に灯りという意味では直接的な恩恵や厄難は与えていません。
星一つは無数の輝きの中の一つであり、それはまた生活においては無視できる光でもあります。
月や太陽の灯りなしには人は生活ができませんが、星はそうではありません。
しかし人類は、星の輝きをもとに予兆し、星とともに生活することを選んできました。
この3つの天体の違いは、生活に必要な明かりの強さの違いが、リーディングの違いに反映されます。
星:予兆
月:不安・不運
太陽:豊かさ、幸運
です。
双六で説明すると、
星はサイコロを振る前の「このマスに行くかな〜?」って予感。
太陽と月はサイコロを振った後の「結果のマス」と解釈します。
星のリーディング:森下あかり的解釈
というわけで・・・
途中の解釈は違いますが、平くしてしまうと私も星の正逆はこんな感じ↓の読みをしています。
森下的コツは、一般的な解釈に「〜っていう予兆がある」とつけて読むということ。
一応、オリジナルの星の読みもつけておきます。
◆正位置
(文末に「っていう予兆がある」とつけると「星」の感覚が掴める)
道が開ける
最適解が出る
贈り物を受け取る、必要なものを手に入れる
失せ物、探し人が見つかる
◆逆位置
(文末に「っていう予兆がある」とつけると「星」の感覚が掴める)
手がかりがない
道が見つからない
贈り物を受け取れない、必要なものを失う
失せ物、探し人は見つからない
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