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住宅地を歩く、ヘンテコを見つけながら。

こちらに来てからというもの、歩くのが何より楽しい。
もともと散歩が好きで、留学先でも散歩を楽しむつもりだったため「やはり」という感じだ。

秋の一大イベントといえば、ハロウィンである。
10月に入るとどこへ散歩に出かけても、住まいの外装を飾るさまざまなアイテムに目が行くようになった。特に小人サイズのガイコツが戸口や庭の柵に吊り下げられている光景はあちこちで見かけた。

一口にガイコツと言ってもその装いにはバリエーションがある
ポーズも工夫されている
こちらはピエロとガイコツの合わせ技
大きめのものも。
片手をあげており、通りの人に声をかけているような佇まい
埋められているスタイルはなかなかレア
蜘蛛にマウントをとられているものもあった

一体こういうガイコツたちはどこで売っているのだろうと思っていたら、園芸用品の店で園芸用品を差し置き、イチオシ商品としてずらっと並べられているのを発見。

もはや一見して何の店だかわからないほど

また、生垣を引き延ばした白い綿で覆うようにして蜘蛛の巣を再現するやつ、も随所で見受けられた。綿の部分に紅葉した枯れ葉をくっつけたりしてリアルに仕上げている家も多い。

こんな具合でただ住宅地を練り歩くだけでも十分に楽しめる。
無論、こちらの住宅街の景色が東京の都市部のそれとかなり異なっていることは言うまでもないが、せっかくなので特に違う点についてを二つに大別して挙げようと思う。
まず一点は住居そのものの形だ。
こちらの家々は何軒かが連なり、玄関口や窓の配置、屋根、煙突、また建物の高さに至るまで同一の外観をしたものがずらっと並んでいることが多い。そういう中でもドアのデザインや色は各々異なっている(https://www.asahi.com/housing/world/TKY200809270102.html)ため、余計印象に残る。自分が住むならこの形の、この色のドアの家がいい、などと考えながらうろつくのも楽しい。また、高層マンションやビルなどはほとんど見ない。背の高いものといえば公園に生えている木ぐらいのもので、その他に朝日や夕焼け、夜空を遮るものがないためふと見上げた時に空が広く、美しく感じる。
二点目は道だ。こちらの道は基本的にきちんと区画整理されている印象で、幅もしっかりとあって、二車線であることに加え、両サイドに自転車レーンと歩道が確保されていることも多い。

と、ここまで述べてきたことを翻してみるとどうだろう。
つまり、家の外装、設計がばらばらで、細い坂道が急に斜めに走ってどん詰まりに行き当たるような、そんな場所にこちらでたまたま出くわすと、私は東京の路地を思い出す。
どちらも好きなのだ。
東京での散歩の楽しさといえば、住宅街に突然現れる傾斜のきつい坂を背にして信じられないぐらい薄いアパートが建っていたり、暗い高架線のそばに一軒だけ立ち退きを拒否したであろう廃屋じみた家があったり、暗渠を辿った先にコンクリートに埋まった橋の面影を見たり・・・そんな隠されたものを探すような発見や、それはおかしいだろう、という突っ込みどころの多さに宿っていると思う。

一方でこちらの住宅にそこまでの突っ込みどころはない。しかし、どこも古く歴史や文化を感じられるうえ、建材や装飾も安っぽくなく品があり、美的な面ではまったくフラストレーションが溜まらず、常に心が満たされる。町の区画やサイズ感にも余裕があって、自然とゆったりした気分になることができるだろう。

そして、そんな中でも道路標識のピクトグラムなんかは日本のものよりもどこかゆるかったりして、「見つける」楽しさがあるのもまた事実だ。

というわけで、せっかくあちこち彷徨ってきたので、散歩中に見つけたものの中から数点をここに記録しておこうと思う。

まずは、駅前で見かけた無機物感に欠けるゆるい電車のマーク。

速そうじゃない
簡潔な表現で「死」への注意を呼び掛ける標識
ささっと描いたような線がかわいらしい。工事現場にて。
日本のピクトグラムとは違い、プロフェッショナル性の感じられないところがよい
白いペンキの足跡もあれば、
コンクリートの乾かないうちに通過して行った獣の足跡もある
突然あなたの前に現れる
シェーの起源。
※1(赤塚不二夫がこの地に伝わる人魚の挨拶のポーズに着想を得たことは有名)
と、杉元佐一。
ここは中野ブロードウェイではなく、
日本から9,586㎞離れた地にあるチャリティーショップである
どういう経緯でここにあるのか教えてくれる者はいない

最後に犬の飼い主に向けた「うんちをそのままにしないで」というメッセージの看板。これがバリエーションに富んでいて、あの手この手で「うんちを道に置き去りにすると困るのだ」ということを伝えている。本来、そんな当たり前のことをあの手この手で伝える必要はないのだが、この町にはとにかく、うんちがたくさん落ちている。バナナの皮も落ちている。漫画的表現でしか見ないような光景もこちらではさほど珍しくない。さらに、割れたワインかビール瓶の破片、履き潰された運動靴、薄汚れた枕、などもときどき落ちている。

わかりやすいイラストのものから
キュートなタッチで莫大な罰金を科すものまで。
後ろ姿のパターンも用意されている
こちらには2種のカラバリが。
その瞳が困惑を物語っている
こういう実際の弊害を写真に収めたものはいくつも種類があるが、いかんせん実写なので割愛。

というわけで、今後も足元には気をつけながら、それでも町を歩き続けようと思う。

※1 冗談


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