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やってはいけなかった医療③
定期入院
2002年10月以降、2週間に一度の治療につき、4~5泊程度の入院が続いた。
入院時には、風邪を引いているわけでもないのに、鼻汁培養検査が毎回行われた。カッラカラに乾いている鼻にチューブを入れて、無理やりサクション(吸引)する。
当然えずいて嘔吐することもあった。医師に尋ねると「どんなばい菌が、どの位いるのか調べる必要があります。」とのことだった。
また、胸部・腹部のレントゲンを毎回撮っていた。発病してから何回撮っただろう。微量とはいえ、放射線被ばくによる白血病の再発リスクが高まるのではないかと心配になった。
医師に尋ねると「そういう(再発リスクが高まる)報告はありません。」との返答。必要性を尋ねると、肺や腸の状態を見るばかりでなく、心臓や肝臓の状態を確認するとのことだった。
触診や聴診、血液データを見れば、ある程度のことが分かるのではないかと疑問を持ちながらも、それ以上は尋ねなかった。
しかし、次の入院からぱったり検査が行われなくなった。もっと早く質問すれば良かったと悔やまれた。
当時は、いつでもどこでも検索できる時代ではない。子どもたちが寝静まった後、ノートパソコンを電話線に繋いで白血病について調べた。本も購入して、自分なりに情報を集めた。
小児白血病のリスク分類は、発病時の年齢と初診時の白血球数で決まるが、森仁の場合、A病院入院時の白血球数10万超ではなく、個人病院受診時の37,870をもって、中間リスクに分類されていた。
また、MRD(微小残存病変)という、わずかな白血病細胞を調べる遺伝子検査があることを知った。治療途中でMRDが確認されれば、サルベージプロトコール(=より強い治療)に移行する必要がある。
この遺伝子検査で白血病細胞がないことが、本当の意味での寛解といえる。
その検査結果をB医師から聞いたことがない。それについて、医師に尋ねた。
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「森仁君のタイプの白血病ではその検査はしません。調べたとしても4割程度しかわかりません。明らかな重症例や染色体異常がない限りわかりません。少し残っていて治療を変えたとしても成績は同じ。わかるといって親に期待を持たせる先生もいるが、実際再発するかしないかはわかりません。9割の完全治癒率は変わりません。3年の治療を終わった段階でも調べません。」と答えていた。
また、発病から1年の間に行われるべき治療は、感染などで7週遅れたが、1クール以上抜けた状態で2年目の治療に入った。
このことも、後々まで心に引っ掛かっていた。
2回連続同じ治療が行われそうになったり、本来終了するはずの薬を入れられそうになったりと、病院のチェックが甘く、親が常に気を張り詰めて見ていなければならない状況だった。
治療開始から1年10ヶ月後、抗がん剤(内服薬)の袋を見ると薬が増量されていた。医師に尋ねると「いいえ、増量していません。」との返答。自分のメモを確認後再度尋ねると「増量していました。私の勘違いでした。」と。
薬袋に印字されている量を見て偶然発見することができたが、親が管理できない注射薬は果たして計画的に増量されていたのだろうか。
これまでの経過もあり、一気に不安と不信が募った。
医師の説明は以下の通りだった。
〈薬の増量について〉
厳密なものはプロトコール上でなく経験上で見ます。プロトコールって厳密にやるものではと思っていらっしゃると思いますが、少なくいくよりは多めにいきます。
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〈1年目の治療で1クール以上遅れがあったが、2年目の治療に入ったことについて〉
遅れないでやるのが完全なプロトコールなんです。でも、そうはいかない。何らかの理由で遅れてしまった時、寛解導入までは全部やる。その後をどうするのかは結論は出ていない。ただ寛解導入まで全てしていれば、次に入ってもいいだろうということになっている。そこの部分はDr.の判断に任されている。1クール抜けても成績は変わらない。腫瘍細胞が増えることが心配だと思いますが、それはありません。
~中略~
1クール遅れた分、延ばすかどうかグループの責任者に聞くといいですよと判断を任される。
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セカンドオピニオン
匙加減で進められていた治療に愕然とし、セカンドオピニオンを受けることにした。
B医師から大学病院を批判する言葉が度々聞かれていたため、中立的な立場での意見を希望し、(公財)がんの子どもを守る会に相談。市内のC総合病院へ月1回非常勤で来ているD医師を紹介してくれた。
D医師は普段県外の病院に勤務されており、その病院ではA病院と異なるプロトコールを使用していた。
D医師は長時間にわたり話を聞いてくださった。
本来、医師を擁護する立場であるが…という前置きで「悲惨だったね。可哀そうだったね。(何も起こらなくて)不幸中の幸いだったね。」「全国だいたいの血液腫瘍の先生を知っているけれど、その先生(B医師)のことを知らない。医大の〇〇先生のところへ行ってごらん。」と紹介状を書いてくださった。
数日後、A病院と同じプロトコールを使用している大学病院を受診。
そこで、A病院が研究グループに所属していないことがわかった。
無断でプロトコールを入手して、治療を真似ていたに過ぎなかったのだ。
研究グループに所属しているというのは嘘。
所属していないことがわかっていたら、A病院で治療を受けさせなかった。
ショックだった。
即、大学病院への転院を決意。
セカンドオピニオンの結果と転院理由を書いて、A病院の看護師に渡した。
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