【Otoboke Beaver】、めっちゃ好きやねん。
■偶然観た動画に、めっちゃぶっ飛んでしもた。
米シアトルにあるラジオ局KEXPのスタジオライブ動画をチェックし始めてもう何年になるやろ。この局がイイんだわ。
と、同局の趣旨にあるとおり、westに限らず世界中の多様な音楽が、しかもライブで聴けるのですっごく重宝しているチャネルである。極々一例に過ぎないが、独glitter beatからアルバムを出したアフリカはモーリタニアのNoura Mint SeymaliもすでにKEXPに出演していて驚いたほど。局のポリシーに偽り無し。
そんなKEXPの日々を送っていた2022年12月、妙な名前の日本人バンドと覚しい動画がアップされた。Otoboke Beaver?? 変な名前やなぁ。あとでラブホの名前だと知った時は笑ったけどね。そういうセンス、好きよ。
「へえ、どんなもんやろ?」、とにかくクリックしてみた。で、もう出だしの「アイドンビリーブマイ母性」から完全に圧倒されてしまった。エエわぁ、Otoboke。
■Zappa meets フラワーショウ。よよよしえ嬢の存在は大きい。
超高速ハードコアパンクなノリに感動したのは久しぶりだった。
年寄りは新奇性のある未知の対象を自分にとって既知のものに当てはめて安心立命する悪いクセがあるのでお恥ずかしいが。音を聴いて真っ先に思い出したのはJohn Zornの『Spy Vs. Spy: The Music Of Ornette Coleman』(1989)だった。
突っ走る音とともに投げ出される歌詞、そのシニカルさにFrank Zappaも連想した。好きなんだよね、辛辣なsatireが。
”孫の顔見せて 見せてから戻す”、”先祖代々 地獄!自己実現”・・・実にコウジョリョーゾクに反した優れたセンスだと私は思う。音もだけど、言葉の拾い方に感じ入るわけですよ。
Otobokeの曲(+クリップ)で最高だと思っているのが、この「Don't Light My Fire ハートに火をつけたならばちゃんと消して帰って」。実に快感。
特にバンドのOtoboke役を担っているギターのよよよしえ嬢のキャラクターに注目してしまう。彼女の立ち居振る舞いには浪花の女流音曲漫才の内海桂子・好江、かしまし娘やフラワーショウ、ちゃっきり娘などと同じ匂いが漂うんだよね、関西エンタメの血脈は隠せないと言うか。
彼女のコミカルなキャラとNoisyなギタープレイという芸の取り合わせがとてもイイ。日本の”歌舞音曲”で感動したのは立花家橘之助「たぬき」以来、超絶の名人芸・橘之助の三味線曲弾きと同じスリルを感じさせる音だと思っている。
■日本のメディア、その沈黙ぶりに驚きつつ納得。
というわけで、KEXPの動画を観てコメント欄を確認したら、(当時は)まったく日本語のコメントが無かった。驚いたのなんの。
え?と思って、どんなバンドかと検索したら、日本語のページがほとんど存在していない。特に音楽メディア関係のサイトではほぼ完全な無視状態だった。wikiを読むとKEXP登場以前のキャリアも結構長いのに、だのになぜ。
KEXPのライブ公開から3ヶ月後の2023年3月3日に、『キャッチ!世界のトップニュース』(NHK BS1)にインタビュー出演したが、以後は沙汰止みだろか。未だに日の本でなく海外での認知が極めて高い状態が続いている、と思っている。
よーするに、歌詞に漂う非市民社会通念つーか、反国策的中身つーのが、当たり障りの無さが金科玉条のメディアにはそぐわないのだろう。そういう点で、皆様のNHK『キャッチ!世界のトップニュース』への登場は”皆様の総合テレビ”ではないから可能となったのかも知れない。
そういう自己規制があるとすれば、それはなにもOtobokeだけの話ではない。
たとえば、ちょうど1年前、ネットでOliver Anthony「Rich Men North Of Richmond」を公開から3週間目ぐらいに観た。コメント欄には世界中から
「自分自身のことだ」と共感のメッセージが次々に書き込まれていた。
面白いと思って海外のサイトを覗くと、アメリカでは階級社会についてエスタブリッシュメントとワーキングクラスの賛否両論、喧々囂々の議論をこの曲が巻き起こし社会現象になっていたのである。さらにこの曲は新人によるビルボード初登場1位という新記録も達成した。
ところが。
当時私が知る限り、社会現象化しチャート初登場1位となった時点でさえ、皆様のNHKをはじめ日本の大手メディアで取りあげたところは皆無だった。取りあげていたのはビルボードの日本サイトのみ。取りあげざるを得ないよなあ、自分ちで記録作ってくれたんだから。一企業のサイトなので記事は単に記録の事実のみで、階級についての議論などは省かれていた。
曲の内容からして、特に大手メディアの無視は予想していたが、ここまでとは思わなかった。驚いたというより呆れた。社会現象となったからこそ彼らは取りあげなかった、その実態を識らせることを躊躇ったのだと今も思っている。
◇ ◇ ◇
一ファンとしてOtoboke Beaverに願わくば、永遠に日本のメディアで無視される存在でありつづけて欲しいこと。海外での認知と人気はどんどん上がっているし、ビッグネームからのオファーも増えている。日本国内とかどーでもイイからさ。
(了)