1950’s C&Wテレビ番組とThe Collins Kids。
■偶然見かけたC&Wのテレビ番組動画にハマる。
もともと洋楽ロック派だったのでC&Wにはあまり興味がなかった。せいぜい気に入ったといえば、映画『Blues Brothers』(1980年)の白人パブのシーンでBBバンドにカヴァーされたTammy Wynetteの「Stand By Your Man」くらい。
でもネットの時代になって、偶然見かけたこの番組でC&Wに惚れた。番組のタイトルは『Ranch Party 』。
上記は番組Fullの動画。司会はカントリー歌手兼俳優のTex RItterである。
『Ranch Party』という番組が面白いのは、純然たる正調C&Wだけでなく、ロカビリーのミュージシャンも出演するなど、その間口が広かったこと。例えばCarl Perkins。
○Carl Perkins -Blue Suede Shoes(1957)
◇ ◇ ◇
この番組の動画を観ていてC&Wに惹かれたのは、この人と出会ったから。
Patsy Cline。この出演はデビューして2年目。堂々たる唄いっぷり。
○Patsy Cline-I've Loved And Lost Again(1957)
カントリー界における女性シンガーの地位を確立し、唱法でも多大な影響を与えたイノベーター。言葉が分からずとも、Clineの歌声は胸に迫るものがある。wikiによれば「1973年のカントリー・ミュージック殿堂の額によると『古さを感じさせない彼女の遺作は彼女の芸術的才能の証しである』」と書いてるそうだけど、しみじみその通りだと思う。
◇ ◇ ◇
○Johnny Cash-I Walk The Line (1957)
1956年4月、SUNレコードからリリースされた「I walk the line」はJohnny Cashにとって初のC&WチャートNo.1ヒット。若いよなぁ、黒尽くめでもないし。中年になって以降の姿しか知らなかったから、この動画を観たときは驚いた。人に歴史あり。
■ラジオからテレビへ。メディアの変遷とともに。
この番組、そもそもの始まりはロサンジェルスはコンプトン(N.W.A.だね)にあった旧タウンホール・ビルで、土曜日の夜に地域で活動しているC&Wのレコーディングアーティストを出演させて開催されていたダンス&ショーのイベントだったという。
それが1951年から『Town Hall Party』としてラジオで放送されるようになり、その後土曜日夜10時から1時まで長時間生放送されるテレビ番組となった。英wikiによれば,アメリカ軍を通じて世界で放送されていたそうだ。
そして1957年、30分の番組として再編成され、当時はテレビ西部劇ブームだったために『Ranch(牧場) Party』とタイトリングされてオンエア。それが今に残るこれらの映像である。
■The Collins Kidsがええんですわ。
で。この番組を観て私が一番の贔屓になったのは、先のwikiで最も人気があったと書かれていたThe Collins Kidsだった。姉Lorrie Collins と弟Larry Collinsのコンビ。Kidsというグループ名のとおり、1954年に番組のレギュラーとして加わった時、Lorrieは12歳、Larryは10歳だった。
○The Collins Kids - Hop, Skip and Jump(1957)
「Hop, Skip and Jump」や次の「Hoy Hoy」も姉弟の代表作。ご覧のとおり、基本はロカビリー路線。リリースは大手Colombiaレーベルからだったが、チャートアクションは今ひとつだったよう。イイのにねえ、不思議。
○The Collins Kids - Hoy Hoy(1958)
Larryが手にするのはモズライト特注のWネックギター。生涯、彼のトレードマークとなった。
リイシューの名門、熊家族こと独BearFamilyがこの番組でのThe Collins Kidsの映像を集めた2セットのDVDをリリースしていたが、さすが熊さん抜け目ない。これらのyoutube動画も熊家族DVDをソースにしてアップされたものではないかと思う。
まあ世の中、好きな方がいらっしゃるもんで、日本人親子(母と子)でCollins Kidsのカヴァーやってるバンドの動画を観たことがある。感心しましたよ、ほんとに。
■Larry Collinsのギターの師匠がまた凄い!
モズライト特注のWネックを掻き鳴らすLarryだけど、それは彼のギターの師匠に倣ったモデルだった。
その師匠、Joe Maphisはカントリー界のギタリストでは有名な人。数年前だったか、日本のギター雑誌でC&Wギターリックス(Guitar Licks)の特集号が出た際に当然ながらメンツに入っていた。
○Joe Maphis & Larry Collins- Hurricane (1958)
次の動画では、マルチプレイヤーぶりを見せつける。素速く正確なピッキング。この曲を聴いていると、Commander Cody & His Lost Planet Airmenのカヴァー版「Hot Rod Lincoln」を思い出してしまった。
○Joe Maphis Pickin' & Singin'
Joe MaphisはColombiaからのアルバム『Fire on the Strings』がフルでアップされている。カントリー系の早弾きは好きだね、音もクリアーだし。Joeのプレイは最高だと思う。
○Joe Maphis 『Fire On The Strings』(1957)
■番組と、大人になったKidsのその後。
1958年になって番組を取り巻く状況が変わったという。ミュージシャン組合の料金が上がったことでレコーティングアーティストの確保が困難になり番組の規模が縮小、レギュラーメンバーの多くが去った。
それに伴ってか、テレビ番組のタイトルも『Ranch Party』から『Town Hall Party』に変わり(戻り?)、収録もタウンホールでの公開ライブ形式に変わったようだ。それらの動画も残っている。しかし視聴率競争に勝てず、結局番組は1961年1月に終了してしまう。
○The Collins Kids - Night Train To Memphis(1964)
そしてThe Collins Kidsも大人になった。姉Lorrie Collinsは『Ranch Party』時代の後半にRicky Nelsonと恋人関係になって結婚するかと思われた。が、1958年に17歳のLorrieは2倍年上のJohnny Cashのマネージャーと電撃結婚、Rickyは見事に振られた。人生波瀾万丈。
ビートルズとBritish Invasionがアメリカポップス界を激変させる中、姉弟は1967年まで活動を続けた。その後、Larryはコンポーザーの道に進み、1973年にHelen Reddyが歌った「Delta Dawn」がチャートトップに昇る。
○Helen Reddy- Delta Dawn(1973)
Reddyの「Delta Dawn」はリアルタイムで聴いていたけど、この曲がLarryの作品なんて当時はまったく知る由もなかった。もともとThe Collins Kidsに接する機会は、あの当時皆無と言ってよかったから。
でも、2人の死はリアルタイムで接することになってしまった。
姉Lorrieの死後もロカビリーフェスティバルのステージで演奏を続けていたLarryも、ついに今年1月鬼籍に入った。
いまは彼らのTeen時代の映像を拝みながら、ふたりを偲んでいる。RIP.
(了)
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