無音の私の幸せなひとり時間
最近のワタシの一人時間は無音である。
若い頃は好きな曲をYouTubeで流しては、子どもが覚えてしまうくらいずっと聞いていた。
ワンオペで昼間子どもと二人きりのことが多かったからかもしれない。音が、にぎやかな音が、救いだった。夫が仕事から帰ってくると、考えたことやその日の出来事をあーでもないこーでもないと「オチはなんだ」とか言われながらしゃべっていた。
今、田舎に引っ越して良かったことは、一日だれともしゃべらないことがないことだ。買い物に出れば、必ず知り合いに行きあう。逆にスルーできない、スルーしようものなら、後からチクリと言われる。田舎の人の目は四方についている(名言)。スーパーは良く言えば、情報交換の場、もしくは干渉の場、である。
この間なんか、スーパーで知らないおじさんから声をかけられた。知ってる人ならまだしもこの人は知らない。その上、初対面の私のことを「イモウト」と呼んでくるツワモノ。そんな人は知り合い史上初めてだ。
精肉コーナー。
晩はカレーか、はたまたお好み焼きかと悩んでいると「イモウト、どの肉がやわらかい?」と横から突然の質問。周りを見ても私の他にだれもいない。しょうがない、身体を向き直り話を聞くと、どうやら近所のさらに違うおじさんのために肉を買いたいのだが、歯がなくて年寄りだからどんな肉を買うか迷っている様子。歯がなくて、肉を食べるって歯茎で食べてんのか…なんてことを妄想しつつ、しゃぶしゃぶ用の薄切り肉なら歯がなくても噛み切れる、いや食いちぎれるかなんてアドバイスのような独り言を発すると「イモウト、ありがとう」さらっと受け止め颯爽とレジへと去っていく。
田舎にはいろいろな人がいる。声をかける時はこんにちは、からなんて学校での常識は通用しない。肉の種類から始まる挨拶もあるのだ。そして、相手のことを貴方でもお嬢さんでもおばさんでもなく、イモウト呼びする世界が…
都会にも色々な人がいるが少し自制が入るのか、常識外と思われることでも、想像できる範囲内だったりする。まだまだ常識人なのかもしれない。
そんなわけで、昼間の喧騒から逃れるべく、寝る前の3時間は無音の世界に浸る。私の耳はひとり時間の間、周りの雑音をシャットアウトしてしまうのである。
昔と違い、今、逆にしゃべりたそうな夫。ワタシが話を聞かないと不満をもらす。あの時のワタシと逆だね。オチがない、などと言わないようにして、聞いてあげようではないか。