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たとえ混んでいても医者に足繁く通う理由

わが町には呼吸器専門医がない。
予約して車で1時間かけて通わなければならない。夏場の快適な時期は良いが、冬場1、2、3月は命がけのドライブとなる。命がけで医者に通うのである。

というわけで、前の晩遅くに次の日の予約を取ろうと、サイトを開く。
良かった、まだ空いてる。
希望する朝イチが空いていた。
どうして毎月通う医者なのに前日予約しかできないんだろうと、自分のだらしのなさに落ち込む…

朝、家族を送り出してすぐワタシも出発。1時間かけて着いたメイン駐車場は、開院30分前でもすでに満車。この間覚えたばかりの狭い角地の信号脇が一つ空いている。警備のおじさんに目配せして手招きしてもらい中へ。あれ、前の車ハザードついてるよ、気づきおじさんに伝えるも、「もうどうしよもないね」とさじを投げている。ワタシが通う呼吸器内科は、「医療モール」で何軒か医院が入るため駐車場は共通利用となる。そうか、ワタシもあきらめ、自分は違うよね、と改めて振り返りみる。

すでに院の中は満席。
一体開院何時だ、と思いつつ、先生の善意にありがたく従う小市民。一見健康体に見えるワタシ。今回風邪を月初めに引いてから調子が悪い。
しかしいつもの調子の良さで、隣に立っているおばあさまに席を譲り、空いたと思ってさらに隣の席に移ったら、そこもすぐに乳児を連れたお母さんが近づいてきた。どうぞと善意の塊むき出しに、席を立つも「立ってたほうが子供の機嫌がいいので」サラッと言われる。そうだった。ホンの10年前わたしもそう言う側だった。戻りますね、とだれにいうでもなく元の席へ。その時の若いワタシもこうしてほしかったはず…

予約の時刻から30分ほどで診察に呼ばれ、先生のカオを拝みすぐさま点滴室へ。リクライニングソファに今日は誘導された。靴を脱ぐんだった。たまたま100均のハロウィンコーナーで手に入れた、甲におばけのついた(ワタシが履くとオバケも太る)300円の靴下を履いていた。看護師さん、ちらっと見やるも、忙しいのか点滴前の吸入開始する。

時期が時期だけに、点滴室も満員御礼。隣の人すごい咳してる。溢れてくるものに溺れそうな勢い。明日も点滴に来てと言われるも、自営だからと拒否してる。動けなくなっちゃうよ、とやんわり看護師さん言うが目は笑ってない。ついたてを挟んで向こう側にいる知らない貴方、どうかお大事に。

点滴の間、退屈なワタシはいそいそとnoteを作成。今日はどちらでもいいと言ったら、針を右手に刺されてしまい、いい機会だからと利き手と逆の左でスマホに入力。ボケ防止にちょうどいい。

隣のおじさんやっと咳が治まってきた。楽になったね、と思いつつ自分の咳も治まっていることに遅ればせながら気づく。

ここは、鎧を脱いで咳ができる唯一の場所(家以外で)。咳は生理現象だが、普段コントロールしているワタシ。
いいんだよ、ここでは我慢しなくて…と待合室で咳をこらえる仲間たちを横目に自らをも慰める。

そんな私たちを診察室で待ち受ける先生は、まさに腐海の森に不時着した爺たちにナウシカがマスクを外してみせたように、マスクを外して笑っている。
「姫さま…」

ちなみに先生は男性。
そんな先生が、ナウシカ同様、私たち患者の心を鷲掴みしているのは言うまでもない。



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