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どこの父親も娘が可愛い

昨日は、上司が突然末席のパートのワタシに向かってわざわざ声をかけてきた。

「ごろねださん、今日は午後から娘の迎えのためお休みをいただきます」

とご丁寧に口上のたまい足取り軽く。ルンルンで帰られた。ルンルン。もしも尻尾が生えているのならば、その後ろ姿尻尾がブンブンに振られていたことだろう。

上司の娘さんはここから車で1時間ほどのところに下宿されていて、実家に帰られる時は、父である上司が必ず迎えに自家用車をぶっ飛ばす、うそ、法定速度内で迎えに参上する。

ただの予定ではなくて、突然の呼び出しであっても然り。娘が絡むとどんなことでも嬉しそうにニコニコしている。子どもへの、いや娘への愛があふれている。まあ、休みがいつでも取れるということは、それだけ職場に余裕があるとも言える。トップが年休を取りやすいということは末端のワタシたちも休みを取りやすいということを体現されている。よきかな。

雪の日だろうと雨の日だろうと風がどんなに強かろうと、上司はニコニコで娘からの連絡にいつでも対応する。なんなら職場のGoogleカレンダーにも、事前に分かっている予定は入っている。お前たち、娘の予定が一目瞭然なのだから、決して予定をいれてくれるな。次の日曜はピアノの発表会だ。「あいあいさー」。

同じく、身近にも似たような人間がいることに気づく。

ウチの夫。

娘のためにはエンヤコラ。明日はワタシの仕事の休みに合わせて、娘が寮に帰ることを決め、送っていくつもりでバスの予約も取っていたのだが、久しぶりに寮に帰る娘のためにと、結局夫も休みを取った…大切な年休を使って。そんなの使うのモッタイナイよ、と娘から注意を受けても何のその。休みを取ってまで送っていきたいんだと、娘への思いは強い。明日は家族総出の軽いイベントとなった。

次に会えるのは春休みの2ヶ月後。前の日の夜は娘のためにタコパ。夫が張り切って料理を振る舞う。こんな時しか出張ることは絶対なく、買い物料理まで担当した。最後の最後で父の味を刷り込んでいる。

娘が寮に帰っていくのは、どちらの親にとっても寂しいに決まっている。でも男親は女親とはまた違った寂しさから娘を思うらしい。来るときから、帰るときまで世話を焼いて、とことん娘に付き合い一昔前のアッシー君を見るよう。後ろ髪引かれながら別れを迎える。

それはどこの父親も同じなのかもしれない。父と娘の親離れ子離れの過程。いつまでこんなことが続くのかわからないけど、一生懸命の父親たちが切なく思えてきた。お金だけたかられ、冷たくあしらわれ、それでも娘に執着する。いつの時代の父親も同じように娘から扱われているのかも…

それでも娘は可愛い。
また息子と違った可愛さ。
またおいで、と。



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