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ゲーマーだった少年も今では保育士やってます!#8〜新米保育士時代編


元少年ゲーマーが新米保育士として働き始めた、自伝的エッセイ風物語。今回は第8話です。
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【あらすじ】
保育園に就職して1年目。
一緒に組んだ先輩は保育園で
一番大きな影響力を持つ人だった。

彼女はその厳しい保育スタイルで
周囲から一目おかれており、
意見を言うことすらままならない。

また、彼女の発言も極めてシャープ。
まるで鋭く落ちる稲妻のよう。
そのためカミナリ⚡先生と呼ばれていた。

彼女の圧力に対し、反抗を続けてきた
新米保育士フォルテであったが、
そのストレスは限界寸前。

そんな折
旧友と会い、悩みを打ち明ける。
友のアドバイスもあり
カミナリ⚡先生の真実を
探ろうと決意した。


    カミナリ⚡が落ちる時

保育園に就職して
慌ただしく時間が流れ
気がつくとクリスマス。

もう年末を迎えようとしていた。

保育士1年目にして
カミナリ⚡先生という
超強力なMonsterクラスの先輩と
組むことになってしまった
この悲劇

よく、年末まで辞めずに
続けられたな、と
我ながら感心する。

なぜなら、彼女は
事あるごとにカミナリ⚡を落とすからだ。

『ちょっと⚡片づけができてないじゃない⚡』

        バリバリっ⚡

『ちょっと⚡もう少し静かに食べなさいよ⚡』

        バリバリっ⚡

『ちょっと⚡椅子をちゃんとしまいなさいよ⚡』

        バリバリっ⚡

『ちょっとあんた⚡いい加減にしなさいよ⚡』

      バリバリっ⚡ドカーンっ⚡

こうなると子どもも、
1年目のオレも、
ただ萎縮するのみ。

もはや、現実のカミナリと

目の前にいるMonsterが繰り出す
大技『サンダー⚡ボルト』の
区別すらつかないほど

疲れ切っていた。

『ねぇ、ふぉるてせんせ。
いま、外におちたバリバリっ⚡って、
カミナリ⚡せんせが、おとしたのかなぁ🥶』

「…うん…そうだね。でも…大丈夫だよ…
きっとこれは…外で、ゴミをポイ捨てした人に
カミナリ⚡を落としたんだよ…………………
ほら、聞こえて……くるだろ…
カミナリ⚡先生の……声………」

 〜幻聴〜
『ちょっと⚡ゴミはゴミ箱に捨てなさいよ⚡』

それからというもの
幻聴におびえ、放心状態。

さらには
カミナリ⚡を連日あび続けたことで
焦げきった体は
焼きすぎたスルメのよう。

そんな焦げたスルメのオレを
心配した友人が、
なかば強引に担ぎ出し
病院に運びこんだおかげで
ギリギリ命は救われたのだった…


   カミナリ⚡先生の真実

カミナリ⚡先生は過去
そのカミナリゆえに
子どもが保育園に行きたがらない、と
何度もクレームがあったらしい。

その都度、BigBoss園長が
カミナリ⚡先生に話をして
カミナリ⚡注意報を出してきた。

にも関わらずだ。
なんで、カミナリ⚡先生が
クラスのリーダーに
留まり続けることができたのだろうか。

理由の1つに、
離職率の高さがあげられる。
保育士が育つ前に
保育園の悪しき体質に
順応できない人たちが
次々と辞めていってしまうのだ。

2つ目は、
カミナリ⚡先生の立ち回りの上手さだ。
彼女は非常に世渡り上手だ。
保護者対応も見事にこなす。
結局、“対大人”に関しては
コミュニケーションを上手くとり
事を優位に運んでいく。

そして、最後。
彼女の保育士スキルの高さだ。
カミナリ⚡を頻繁に落とす一方、
そうでない時の彼女は
子どもと遊ぶのがすごく上手で
かつ、ユニークなのだ。
だから子どもの心をつかむのが上手い。

そして、子どもの様子をよく見ている。
子どもの機嫌や体調を
しっかり把握しているのだ。

確かにカミナリ⚡は周りを萎縮させているが、
知識も経験も高いレベルで保たれている分、
彼女よりも経験を積んだ保育士でさえ
彼女に口出しすることを
ためらうのであった。


   カミナリ⚡先生の影響力

カミナリ⚡先生を筆頭に、
プチカミナリ⚡を繰り出す先生が
何人もいる。

そのカミナリ一族のTOPに
君臨するのが、
カミナリ⚡先生だ。

プチカミナリにやられてしまったのは
チャラ先生とフトコロ先生(第4話、第5話参照)

たが、オレが入る前にも
数多くの保育士さんたちが
カミナリ⚡一族の前に
立ち向かうすべもなく
心を焦がされ
保育士生命を奪われていったらしい。

何年も続くカミナリ⚡一族による支配。
おそるべし。

そして、一族を率いるカミナリ⚡大魔王と
オレは今、一緒に仕事をしているのだ。

カミナリ⚡大魔王は1度、
オレをその権力下に置こうとしたが
その策略は失敗(第6話参照)。

それでも諦めようとしない大魔王は
再び、オレに話しを持ちかけてきたのだ。

『フォルテ先生⚡あなた⚡もう少し
全体を見るってこと⚡できないかしら?』

確かにオレは
全体をみるということが、苦手だ。

「あの…全体を見るって…具体的に
コツとかあるんすか?」

『いい質問ね⚡まずは立ち位置を工夫すること⚡
子ども全体を見ることができる場所に立つ⚡』

なるほど…
確かにオレはそこまで意識してなかった。

『次に、角度ね⚡どの角度から⚡カミナリを
放てば⚡ピンポイントで子どもに響くか⚡』

…………えっ!?
なんか…話しがズレてきたぞ

『角度を定めたなら⚡後はためらうことなく
カミナリを放つ⚡』

……いや、違う…オレが聞きたかったのは
そんな話しじゃないっ!

『最終的に響いているか決めるのは⚡
子どもへの思いと向き合い方⚡』

…良かった、まともになった。
途中…変だったけど…

要するに、子どもに何かを伝えるときは
短めに、わかりやすく、ということか。

『あなたなら⚡習得できるわよ⚡きっと』

………!まただ!

次の瞬間カミナリ⚡大魔王は
膨大な電力を身にまとった。

バリバリっ⚡バリバリっ⚡バリバリっ⚡

「はっ!……やめろっ…大魔王!
オレは…オレは…カミナリ⚡なんて

………………習得したくないっ!」

ビリビリっ⚡ビリビリっ⚡ビリビリっ⚡

「…や、や…め…てく…れ………………」


…………………フォルテは…

カミナリ⚡を……………

習得…してしまった…


知識や経験、技術がないくせに
リーダーに反発を繰り返してきた
新米保育士フォルテ。

きっと、全てが中途半端だったのだろう。
カミナリ⚡先生のプレッシャーに負けて
心が折れてしまったのだ。

そして、いつしか彼は
カミナリ⚡先生の目を気にして
保育をするようになってしまった…

                第9話に続く

ここまで読んで下さりありがとうございました🙇


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