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元少年ゲーマーの保育日記#1〜年長クラス編

ゲーマーだった少年が、成長とともに
葛藤を経験し、保育士として働き始めた、
自伝的エッセイ風物語。
今回から新章、年長クラス編のSTARTです。
新米保育士編(全10話)はこちらから↓


【あらすじ】

将来の夢なんて何もなかった
少年ゲーマーフォルテ。

そんな彼が初めて
自分の意思で歩んだ保育士の道。

だが、就職した保育園は
高い離職率、
ピリピリした雰囲気、
はびこる同調圧力のオンパレードで
まさに、最悪の環境。

そんな新米保育士時代、
彼と一緒に組んだ保育士は
保育園で1番大きな影響力を持つ人だった。

彼女は、その叱責が
鋭く落ちる稲妻に似ていることから
カミナリ⚡先生と呼ばれていた。

フォルテは、彼女の超強大な圧力に
ボロボロになりながらも
保護者や子どもに助けられ
何とか1年を乗り切る事ができた。

そしてその2年後、
彼は1年目で担任した子どもたちを
年長になってからもう一度、
受け持つことになったのである。


      プロローグ

ある時、1人の新人保育士が
一緒に遊んでいた子どもから 
こう言われたという


『せんせーは せんせーなのに 
せんせーのかんじしないの なんでぇー?』


その新人保育士は
一緒に遊んでいた子どもに 
こう答えたという


「…う〜ん、多分それはね 先生が 先生に
なったばっかだからかなぁ。」


すると子どもは 
まるで全てを知っているかのように
ニヤリ😁と笑い
新人保育士に こう尋ねたという


『せんせー。ホクのパパはね、ゲームが大好きなんだ!せんせーも………きっと……好きでしょ😆』


子どもは天才だ。
目の前の大人が
どんな感じの人なのか
一発で見抜く。

ゲーム好きだと見抜かれた
新人保育士の名前はフォルテ。
少年の頃はゲーマーだった。

そして、今でも心は少年のまま…

そんな彼の心を見抜いたのは
当時3才児クラスだった
男の子👦のエス君。
フォルテの担任していた子どもだ。

そして、そのエス君のお母さんこそ
新米保育士時代、
先輩保育士による強大な圧力で
ボロボロになりはてたフォルテに、
年度末の懇談会で
救いの言葉をかけてくれた人だ。



 「エスは年中クラスには、フォルテ先生と
        一緒に進級したいそうですよ」


当時のオレは、この言葉がなければ
保育士を辞めていたかもしれない。

結局、オレは次年度
0才児クラスの担任となり、
エス君たち新4才児クラスを
持ち上がることができなかった……


時は流れ

〜1年後 3月31日〜

今日は進級式。

明日からクラスが変わる。

会場は終始、騒がしい。

特に幼児クラスの子どもたちは
先生が誰になるのか
気になって仕方がないのだ。

この保育園は
ずいぶんと長い間
カミナリ⚡一族という種族に
支配され続けている。

カミナリ⚡一族の保育士たちは
子どもたちや若手保育士に
カミナリ⚡を落とし続ける事で、
恐怖感をあたえ、気力を奪い
相手をコントロールしている。

だから、子どもたちは願う



『かみさま どうかビリビリ⚡の先生たちが
担任では ありませんように…」


だから、若手保育士たちは願う



『神様 どうか私を カミナリ⚡一族の
魔の手から お救いください…」


この担任ガチャで
当たりを引く確率は低い。

なぜなら、オレが新人だった頃よりも
一族はその勢力を拡大してきたからだ。

それはあと一歩で
世界を征服
保育園を制圧してしまう勢いだ。

一族を統べる女王とは
オレが1年目の時に
3才児を一緒に担任した経緯で
対決したのだが
その圧倒的圧力により
敗北してしまう。

しかし進級する直前、
オレは、子どもや保護者と連携し
カミナリ⚡の女王を揺さぶる一撃を与えた。

若手保育士の中で
カミナリ⚡一族の魔の手から
逃れる事ができたのは、オレ1人のみ。

きっとカミナリ⚡の女王は
オレに魔の手を伸ばし
再び、制圧するチャンスを
虎視眈々と狙っているに違いない。

だからこそ オレは願う


「神様 今年こそ カミナリ⚡の女王を討伐し
カミナリ⚡一族から 子どもたちを
解放できますように…」


  フォルテせんせ!ひさしぶり😁

年長クラスの担任発表の番が回ってくる。

オレは数週間前から
年長クラスの担任になる事を
知らされていた。

だから、子どもたちがどんな反応を
示すのか、ドキドキしっぱなしだった。


『はい、おまたせ。次はいよいよ年長さんの
番よー!年長さんの担任の先生は………………』


BigBoss園長がニヤニヤしながら伝える。

会場がどよめく。

次の年長さんたちは、
今までにない集中力で
BigBoss園長の言葉に耳を傾ける。


『まなざし👓先生と……』


瞬間、子どもたちは「えっ…」という
表情を見せる。

それもそのはず。
まなざし👓先生は、主任の先生だからだ。


実は、この保育園。
この時期から、すでに人手不足が始まっており
退職する人数に対して
入職する人数が追いついていないのだ。

基本24人という児童数に対して
年長であれば保育士1人の配置で
基準は満たしている。

だが、実際それでは回らない。

だから、幼児クラスも複数担任制を
取り入れていた。

しかし、複数担任制をKEEPできないくらい
人がいなくなっていたのだ。

これもカミナリ⚡一族による副産物…

いよいよ何とか対策をしなければ
ならないくらいの大問題なのだ。



まなざし👓先生は
カミナリ⚡の女王が一目置く、
数少ないベテラン保育士の1人。

だから、オレも安心している。

ただ、子どもたちにとっては
接点が少なく
いつも事務室にいる先生だったから
「えっ…」となったのだろう。

BigBoss園長の言葉が続く。


『………もう1人の先生は……フォルテ先生です。』


「…………………………」


あれっ?反応が…ない…と思った次の瞬間、


「わぁ😁フォルテせんせーだぁ😆」

一瞬にして周りがどよめく。

騒がしい。

この状況、
カミナリ⚡一族にとっては面白くない。
だからすかさず、プチカミナリ⚡が落とされる。

そして、静まる。

やっぱり異様だ、この感じ……

その後、新担任の挨拶を終え、
2人で手分けをして
「進級おめでとう」のメダルを
一人ひとりに手渡す。

メダルを渡していると



「フォルテせんせ!久しぶりだね、この感じ😁」


と声をかけてきた子どもがいた。

エス君👦だ。

クラスが変わってからも
何かしらで、会っていたのに

改めてみたエス君👦は
体つきがひと回り大きくなっていて

でも、屈託のない、
ひとなつっこい笑顔😁は、そのままで

その笑顔でこんな言葉を
かけられてしまったもんだから


もはやオレは、涙腺崩壊寸前だ。

でもやっぱり、とてつもなく嬉しい。

これからは
この子たちの成長を
間近で見ることができるから。

あの時、辞めないで

本当に良かった。


エス君👦の言っていた
「久しぶりのこの感じ」を
言葉で説明するのは難しい。

この子たちと培ってきた信頼関係が
担任として戻った時によみがえり

なつかしくて、安心できて、心があったかくなる 

そんな感じだったから。

今、こうして振り返ると
改めて確信する。

1年かけて積み上げた
子どもたちとの信頼関係が

その後の子どもたちの成長と存在を、
たまらなく愛おしく感じさせてくれる。

これこそ保育士の醍醐味なんだと。

                第2話に続く

マガジンにも掲載中↓

ここまで読んで下さりありがとうございました🙇



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書いたエッセイ集はコチラ↓
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