労働審判第2回期日
まず労働審判第1回期日のあとですが、
僕は補充書面を作りました。
「答弁書について言っておきたいこと」を書いておくように言われてたので。
これも書くかどうか悩みました。
解決金の金額がすでに40万円と提案されているなかで、
(まして事実確認とかが行われないなかで)
書く意味あるんだろうか、と思いながら。
まあでも否定すべきことを否定せずにもおれなかったんで書きましたが。
で、無事提出しました。
それから被告から
「調停条項案」が届きました。
「被告が原告に金額40万円を支払う」とか、
「本和解条項に定めるもののほか何らの債権債務のないことを相互に確認する」
といったものとか、なんやかんや条項が記されていました。
被告はやっぱり口外禁止条項を付けようとしてきてましたが、
それは想定内だったので、驚きはしませんでした。
口外禁止は以前の労働審判でも、
審判員に「付けないとまとならないんだよ!」と恫喝するように言われてましたから。
これも異常なことであり、道義上看過できないことなんですが、
今回はこの問題は他の経験者に任せて多くは述べません。
(弁護士さん等が問題視してXなどでも指摘してくれてますので)
問題は別の条項、
接触禁止条項です。
「申立人は、正当な理由がない限り、相手方及び相手方の従業員(退職した者を含む。)に対して接触したり、接触を試みないことを約束する。」
というものです。
被告従業員は全国に10万人以上います。「退職した者を含む」、となるとその対象は累計で何十万とかあるいは何百万にもなります。
「正当な理由がない限り」とあるので、気にしなければよいかともいえますが、正当な理由があっても被告に正当な理由がないことにされかねません。
恐らく被告としては従業員に接触することで、こちらに真実を探られたくなかったのでしょうが、
あまりにも露骨であり無茶な条項です。
なのですぐに僕はこの条項はつっぱねることにしました。
こちらが拒否すればすぐに削除される条項だろうとも思ってました。
そして第2回労働審判期日となります。
主に原告と労働審判委員会のみでの話になります。
(被告は別室で待機)
そして調停条項案をもとにいろいろ話します。
こっちが「この条項はこうしてくれ」だとか「この条項は別に構わない」とか言って、話を詰めていく作業ですね。
で、問題の接触禁止条項の話になります。
原告「これはありえない。なんでこんな約束をさせられないといけないのか。これって例えば従業員と偶然会ったとして、『ちょっとお茶でも』とかダメってことでしょ?」
審判官「友人関係なら大丈夫」
原告「友人関係であっても被告に友人関係じゃないことにされる可能性がある」
審判官「それで被告に加担するなら、その人は友人じゃないですよ」
原告「一般的に人って上司に逆らえないみたいですよ」
審判官「……」
それから、
原告「これから知り合った人が偶然被告の従業員かもしれない。その場合明確な友人関係になる前に関わりを絶つしかなくなる可能性がある」
などと伝えました。
でも、審判官はこの条項を外そうとはしません。
接触禁止条項を付ける理由として審判官が述べたのは「人は主張をしたがるものなので……」といったものでした。口外禁止条項が付けられても、接触があればまた蒸し返されるのでといったことでしたが、
こっちが「だとしても口外禁止で足りるでしょ?」というと、
やはり審判官は「……」でした。
その後も、
こんな人を人とも思わない条項はおかしいという主張をさんざんしましたが、まったく話になりませんでした。
原告「接触禁止条項なんか付けるって聞いたことないですよ。昔労働審判しましたけど、まったくそんな話出ませんでした」
審判官「普通に付けてますよ。10年ぐらい前はなかったかもしれませんが」
こんなやりとりもありましたけど、
僕が労働審判をしたのはその時点から3年前でした。そして3年前は労働審判委員会からも弁護士からも被告からも接触禁止条項の話なんてまったく出てませんでした。
原告「解雇とかで付けますか?」
審判官「はい」
原告「そういう資料とかありますか?」
審判官「(迷いながら、紙一枚見ながら)はい…」
という流れで、審判官は僕のそばに来て、その用紙を僕に差し出しました。
審判官「ほら地位確認請求の」といいながら、その資料を指し示しました。
用紙の左上辺りに「地位確認請求」という言葉がありました。
それから審判官は用紙の真ん中あたりの
接触禁止条項について書かれてる個所を指しました。
「ほら」と審判官は言ってました。
それをきちんと読んだうえで僕は言いました。
原告「これ、別に地位確認請求にかかってないですよね?」
審判官「……はい。一般的なものです」
そういって審判官は逃げるように元の場所へ戻りました。
要するに、
審判官は誤魔化そうとしたんです。
地位確認請求の調停条項で接触禁止条項をつけるのは一般的であるというように見せかけようとしたんです。
文脈で判断すれば、そうであるんならそのことを裏付けるような資料を見せてくれとこっちが言っていることはわかってたはずですが、審判官はなんの裏付けにもなっていない用紙を見せたのです。
それで誤魔化せると思ったのでしょう。
そもそも前回期日で「こういった条項について考えて置くように」と一般的に付けられる条項の説明を審判官からされてましたが、そのときも接触禁止条項の話なんかまったくありませんでした。
こんな調子で審判官は執拗にこちらに折れさせようとしてきました。
原告「いったん(交渉を)向こうに回しますか?」
といってみても、引き続きこちらとの交渉を続けてきたり。
しばらくしていったん原告退室して被告に交渉の場を廻してもすぐに終わって、またこっちと審判委員会との交渉になったり。
あと、
審判官「どういった条件なら飲めるか?」
といった質問があったので、
原告「向こうが謝罪すれば。人を不当に貶めたこと。さんざん嘘を重ねたことを」
などと伝えましたが、審判官は被告にその条件を伝えもしませんでした。
そうしてどこまでも平行線なので、
「労働審判」を求めました。
「労働審判」とはいわば労働審判における判決ですね。
言葉が同じなのでわかりにくいと思いますが。
原告「口外禁止、接触禁止条項拒否します。その上で、労働審判お願いします」
審判官「調停条項案と同じ内容になります。接触禁止条項はまとめるために必要だと思うので」
審判官はそんな感じでしたが、そうはできないと僕は思ってました。
以前に別の裁判で、原告が断固として拒否した口外禁止条項を労働審判に付したことが労働審判法20条違反とみなされていたので。
でも結果は口外禁止条項も接触禁止条項も労働審判に付されました。
なので異議申立てをするしかないかと思いました。
労働審判に異議申立てをすると通常の訴訟へ移行することになります。
審判官はこのときこんなことを言ってました。
審判官「訴訟でも和解交渉はしますので」
訴訟でも折を見て和解交渉が行われるとは聞いていたので、
その言葉自体はなんでもないのですが、
警告するような調子で言ってたのです。
それが何を意味するのか、このとき僕はわかりませんでした。
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