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  ただのひと言

私は親から一度も誕生日を祝ってもらったことがない。
小学生のとき
初めて招待された誕生会。
プレゼントを渡すことすら知らなかった。
そのことを
あなたに話したら「そうだよ」と、
当り前のように返された。
「手ぶらだったのは自分だけだった」
と言ったら
「おめでとうって言うだけでいいでしょ」
と、あなたは言ったよね。
でも、
私には一度も言ったことがなかったよ。

ただのひと言、
そう、たった一度だけ
「誕生日だね、おめでとう」と、
親からプレゼントを受け取る
友達が羨ましく見えた。

丁寧な包装や、リボンが括ってなくていい
ただひと言
”あなたが生まれてきてくれて嬉しかったよ、おめでとう”
ただの一度でも、それを感じることができたなら…。

人は、
感情を言葉以外で受容することができる生きものだ。
だから
言葉はいらない、気持ちがあれば
ということもある。
態度で示すこともあるだろう。
でも、子供だった私には分からなかったし、あなたからは
なにも感じられなかったよ。

ありがとう以上に、使う機会が限られる
「おめでとう」は特別
だからこそ、使える機会があることが尊いのだと思う。

おめでとう、あなた。
おめでとう、あの人。
おめでとう、皆さん。
おめでとう、どこかにいる誰かさん。

富める人も貧しい人も、インテリの人もそうでない人も、先進国もそうでない国も、平和に暮らす人も、紛争に怯える人も
どんな環境でも
平等に誰もが一度はもらえる言葉。
「おめでとう」
あなたのこれからの一年が、今よりよいものでありますように、今どんな境遇にいても、生まれてきたあなたは
きっと誰かにとってかけがえのない人

地球上に生きる全ての人が
その言葉を受け取れるようになればいい。

たくさんの「おめでとう」があふれる世界に。



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