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山人
朝熊山で師に出会った。
登山途中から現れて、なんともいい距離感で前を歩いてくれる。
途中、背中が見えなくなったと思ったらひょっこり現れて「早いですなー」とか「伊勢ですか?」とか。
これまたなんともいい具合に軽く声をかけてくれる。
そんなことを繰り返し、頂上で合流する。
聞けば御年85歳。
マッスルおじいさんにはみえない。背丈も自分と変わらない。
これが、驚くな。年間300登頂するらしい。
「夏も?」「今年は暑かったなー」。
「雨は?」「小雨だと傘さして登る。途中すべったりしてな。ふふふ」。
12月時点で300登頂が見込めないと1日2,3回登るらしい。
でも今年は忙しくて250くらいだと嘆いておられた。
富士山が見えたと、下山途中の方が言ってみえたが、我々の登頂時間には見えなくなっていた。
でも、「富士山、富士山、と思いながら見ると雲が尖って富士山に見えてくる。ふふふ」。
と笑っておられた。
「朝熊山は年に1,2回です」という自分に「ほー。その1,2回に出会えましたか」と何度も言ってくれる。
入信。名前も知らない山のお方に入信。
下山もふらりと降りていかれて、間を置かずに自分も下りたが、その背を見ることはなく下山した。