Prologue小学校のころから読書が好きだった。喘息持ちで、休み時間に走り回れなかったというせいもある。 図書館の小説棚はだいぶ読んだ。江戸川乱歩の明智小五郎シリーズ……というより怪人20面相・少年探偵団シリーズとか、赤川次郎とか。 その頃に記憶したものはずっと残っているのか、よほどショックを受けていたのか、どちらかはよく分からないけれども、ちょくちょく思い出すものがあったりもする。 例えば、明智小五郎のなかでは、エレベーターの中での殺人事件がある。もちろん、密室。エレベ
今日も今日とて電車は行くよ。仕事に向かう僕らを乗せて…… 毎日同じ時間の電車で同じような顔ぶれで乗る電車。 時間帯が違っても同じ駅、同じ乗り場、同じ車両、同じドア、同じ乗換え……変わりばえしない反復動作。 それでも、たまには面白い光景に出くわすよね。 迷惑です! 朝の電車。 「ちょっとやめてください!」 一つ隣のドアのあたりで女性が大声を上げた。 車内に緊張が走る。おっと。痴漢か? そうはいっても、そんなに混んでいるわけではない。酔っ払いでもいるのか? 静まり
その昔、人工知能を搭載した車のアメリカドラマがあった。主人公と会話をし、たまに冗談もいい、自分で考えて行動する自動車。 AIとはそういうものだとイメージづけられ、そんな車が走る「未来」が「現実」となりつつある今だけど……じゃぁ、「今の未来」はなんだろう。 AIBO:我が愛慕 古い話をする。時代は、2000年になったばかりのころ、携帯電話が普及し始め、名刺にメールアドレスを載せるというのも定着し始めたころのことだ。 銀行に入社したばかりの僕は、ある投資信託のファンドマネー
路線価上昇…… いまだに、こういう記事を見ると小さくため息が出る。無人のATMコーナーを管理している時から20年近い、癖だ。 電話に出ると、「どこそこのATMコーナーを貸している、何々という者ですが、ご相談したいことがあるのでお時間もらえませんか」……“そういう話”はだいたいこうやって突然始まる。 「いつもお世話になっています。けっこうですよ。お都合のよろしい時間帯をお伺いできますか」 「ご挨拶していないのはこちらも同じなので、大手町に伺おうと思っています。差し支
そこは、集会室なのか広い物置なのか、よく分からない部屋だった。 どうぞ、といわれて通された私と迫田は長机の前に立つと改めて自己紹介をして頭を下げてからパイプ椅子に座った。 夏場ではあるが、クーラーが効いているわけではない。机の上に置かれた小さいグラスに麦茶が入っていたが、ガラスの表面についた水滴も全て落ちていて長机の上にグラスを中心とした水たまりを作っていた。さぞぬるくなっているだろう。もてなすつもりはなく、お供え物のように置いてあるだけだった。 2メートルほど離
【2023/1/14校了】 流行りものには金のかからない範囲で一通り触れてみる主義。でもなぁ、、病気は違うだろう。。。 といいつつ、ついに罹ってしまった… コロナ禍 不穏な空気が漂い始めたのは2019年の年末ごろで、「中国で未知のウィルスによる肺炎が増加、実質の都市封鎖」とかいうニュースだったと思う。 未知のウィルスでロックアウトといえば、だいぶ古いが「アウトブレイク」という映画の印象が強い。エボラウィルス熱を扱った映画で、原作を読んだが、描写が生々しくてホラードキュ
注:これはエッセイ的な小説(フィクション)です(笑) 「お前、そんだけ文章書くの好きなら小説家にでもなればいいじゃないか」 と言われたことは、何度かある。そして、続けて「物語を描くだけで稼ぎになればいいよなぁ」という、「競争率の高い不労所得を得られる商売」のようなイメージが続く。なかには「いいなぁ。俺も小説の一本でも書いてみるかな。実は、構想はあるんだ」と言う奴までいる。 小説を書くというのは簡単な話ではない。心得のある人は、よく「とにかく何でもいいから一本書き上げるこ
本稿は献血やドナー登録を勧奨するものではありません。 仲のいい友人も、献血に協力したい思いがありながら鉄分が足りないといって断られて凹んでたりします。そういう、体質によりどうしようもないこともありますからね…… ただ、その「どうしようもないこと」に、ちょっとだけ踏み込んでみた話です。 バックグラウンド人には運と不運とがある。 それは如何ともしがたいもので、先天性か事故かは別として、障がいを持ちながら生きている人がいて、そういう人たちを「可哀想/大変そうだけど……しょうが