05「君を論じたい」/錆付くまで
1月20日リリースアルバム「錆付くまで/宮下遊」の感想noteとなります。
特典のコンセプトブックや対談CD、非公開MVについてもネタバレ有で触れてるので、未読未視聴の方はご注意ください。キルマーアレンジCD買いそびれ民(憐)。→2月27日追記:親切な遊毒者様に1枚譲っていただきました。ありがとうございます!note追加します。
錆付くまで/クロスフェード
生成された構造が錆付く前に、文字に留めておこうと思った。
難解にして辛辣。曲のすべては謎に包まれているのにオープンな製作陣
【君を論じたい】
公開MV↓
君を論じたい/てにをは×宮下遊
錆付くまでのアルバムにおいて、【君を論じたい】に何かしら位置付けを与えるとすれば「ファンにとっての我が家」「宮下遊キャラクターソング」と言ったところでいかがだろう?
実際に個室のみを舞台に完結するMVだったし、ボーダー服を着た細身で中性的な白髪の青年という造形から、おそらく多くのファンが「元祖本人イメージに寄せているな……」という幸せな勘違いを抱きFAを続々生み出したし、果ては「君=ユウ=遊」などという考察まででっち上げられた。
MV制作に関わったお二方の話によればどうやらそれらは意図して仕掛けられたものではなく偶然だったようで、奇跡的にファンへのご褒美がマシマシされた。色々と思い出深い曲になったのではないか。
【君を論じたい】は、てにをは氏と宮下遊氏との対談CD、発売後に配信されたMVシナリオ・編集担当のXI氏とイラスト・キャラクターデザイン担当のeba氏のトーク回において、作り手が楽曲についてあれこれおしゃべりする機会が非常に多かった。その名の通り、よく論じられている曲なのだが、論じられれば論じられるほど何故か謎が深まるばかりで、一向に掴みどころがなく、あらゆる可能性が飛び交って、私はいまだに落とし所をつけられずにいる。
てにをはさん大好きモードの宮下遊氏がハイテンションで曲を褒めまくり、照れて謙遜する優しいてにをは氏、昔馴染み故の気安さから宮下遊を陰でけなし実世界で彼に奴隷扱いされるXI氏、今回初めてMV製作に携わったというeba氏のフレッシュさ。製作陣はこんなにも和やか。アットホーム。でも曲だけは「表現したかったもの」は流石に分かったけど肝心な「解釈」がなかなか入り組んんでいて構築が難しい。賑やかな家族にやたらと可愛がられている、来客には無愛想なペットみたいな作品だ。
「君」と何度も連呼しながらも、つとめて他者の存在を排斥した最も閉鎖的なナンバーであるように思える。その閉ざされた印象は、非常に陰鬱な空気感を纏いつつも伝えたいことが伝わるようには保証された【ハチェット】とはまた別で、伝えるべきことこそ、絶対に分かるようには伝えない。
真相が分かってしまったら最後、物語が終局に向かうミステリー小説のように。知りたいけど知らないほうが物語は続いて素敵かもしれない、そんな「分からないけど楽しい」を噛み締めるに未だ止まっている。