SS表情管理マスク
#日曜の夜中 、明日から頑張ろう!
#頑張って書いたので是非 。1分くらいで読めます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー俺は東京で冴えない会社員をしている。
今の時代、”個性”やら”自分らしさ”やらが流行しているが、そんなものは俺にとっちゃ作るだけめんどくさいってもんだ。
無難でいい。無難がいい。無難であることが俺の特技。それでいい。それでいい。
そんなある日。「表情管理マスク」なるものが販売された。
それは特殊メイクのように、その人の顔の造形に合わせて丁寧に作られている。顔の前面から首までピッタリとはまるマスクだった。そして、まるでその人の一部かのようにマスクは表情を自然に見せた。
その企業の売りは「その日の状況に合わせて、心と表情を同時にカスタマイズできます」とのことだった。
最初はみんな気味悪がっていた。「その人が後ろでどんな表情をしているか分からない」「心まで乗っ取られるなんて嘘だ。」なんて言って。
これは俺が後から聞いた話だが、表情管理マスクを販売する企業の最初の営業は、うつ病の人などを中心に回ったらしい。それが当たりだった。
表情管理マスクはうつ病の人の治療に使われるようになった。うつ病の人はこぞってこれを気に入ったらしい。笑い療法とはよく言ったもので、辛くとも苦しくとも、自然と笑顔になるのだった。そして心までも笑顔に、軽くなるのだという。
次第に、疲れた会社員も表情管理マスクを利用するようになった。
みんなのモーニングルーティンの中に、今日の表情管理が入るようになったって訳だ。気分に合わせて人々は表情マスクを決める。今日は真面目な会議だから真顔のマスク。真剣なプレゼン前には強気な顔のマスク。今日は楽しむ日だから笑顔のマスク。
ついに、テレビや新聞も取り上げ始めた。みんな大絶賛だった。これがないと生きていけない。売り切れ続出。
買い占めが各地で起きた。販売中止。店員に暴言を吐く人。客同士で喧嘩をする人。
売り切れちゃって人々はパニックを起こした。
なぜかって?
人々は表情を動かすのをやめてしまったからさ。表情管理マスクのおかげでね。
人々の顔の筋肉は衰えて垂れ下がり、自然に笑える人はほとんどいなくなった。
俺はといえば。。
無難な生活をしているから、笑顔である必要も、哀しくある必要もなかった。だからマスクをつけることはなかった。
おそらくこの国で1番笑える男になった。
はっはっは。