コラム(29日)、ゲンスラーS E C委員長の解任を宣言、トランプ氏
暗号資産の先行きに大きな影響を与えそうな発言がトランプ氏から飛び出した。ブルームバーグ(B B)によるとトランプ氏は27日、テネシー州ナッシュビルで開かれたビットコイン関係者のイベントに出席。「米国が地球上の暗号資産の首都となり、世界的なビットコイン大国となることを確実にするための計画を示そう。われわれはそれを成し遂げるだろう」と語った。その一環として2026年まで任期のあるゲンスラー委員長を解任すると発言、それも就任初日(On day one)に解任するとわざわざ付け加えた。集まった聴衆からは大歓声が上がった。米国は司法省が134億ドル相当のビットコインを保有する暗号資産大国。トランプ氏はこれを売却せず国家戦略的な備蓄に充当するとも発言した。同氏が再び大統領になれば、成長論と懐疑論の2つの要素に包まれている暗号資産業界が、再び急成長する可能性がありそうだ。S E Cはじめ暗号資産業界を管轄する主要な規制当局にも大きな影響を与えるだろう。
「規制はあるだろうが、これからは暗号資産業界を憎むのではなく、愛する人々によってルールが書かれるだろう」とトランプ氏は語った。さらに、「暗号資産業界についての大統領諮問委員会の設置、ステーブルコインの枠組み創設を約束し、取り締まりの規模縮小が必要」との考えも示した。規制と監視強化の間で苦戦を強いられている業界の中にはこの発言を、「歴史的瞬間」と捉える人もいるようだ。B Bは「トランプ氏は大統領在任中には仮想通貨について懐疑的な見方を示し、『ファンではない』その価値は 『薄い空気』に基づいていると主張していた」と指摘。2024年の大統領選挙キャンペーンでは君子豹変し、暗号資産業界を取り込もうと躍起になっていると解説する。“もしトラ”の一環だとしても、手のひらを返せることがトランプ氏の強みでもある。自らの発言に歓声を上げる聴衆を見て驚いたトランプ氏は「On day one, I will fire Gray Gensler」と繰り返したという。
日本の暗号資産業界も一部の関係者が活性化に向けて必死の努力をしている。その中心になっているのが自民党Web3PT。暗号資産の税制改正案など作成し、政府に実現を働きかけている。岸田首相も関連のイベントに顔を出して業界の発展に尽力しているようだ。だが、いずれもインパクトはほとんどない。トランプ氏の発言を受けて米民主党の暗号資産関連議員は即座にバイデン政権に、「政府の対応改善を要望した」という。いい悪いは別にして、このスピード感の違いが日米の決定的な差になっている。最先端技術での競争はあらゆる分野で起こっている。決まれば速いが、決まるまでに相当の時間を要する日本の“悠長”な政策決定プロセスには、世界の後塵を排する危険性が常に付き纏っている。要するに古い発想やプロセスでは追いつかないのだ。常に最先端で戦い続ける、国際舞台で競い合うスポーツ選手のような持続力と持久力を持たないかぎり、世界では戦えない時代になっている。