コラム(16日)、改めて驚く米国の“凄さ”、スペースXの挑戦
イーロン・マスク氏率いるロケット開発企業SpaceX(スペースX)が今週、火星探索を目指すStarshipの巨大ブースターの回収に成功した。失敗を繰り返したあげくの成功、そのスピード感には目を見張るものがある。Starshipの打つ上げは、2023年4月が最初。その後矢継ぎ早に試験を実施、今回は数えて5回目となる。最初の試験ではロケット推進ブースターである1段目と2段目がともに発射直後に空中で爆発した。当時ニュースでこの映像を見ながら、「これで開発はかなり遅れるだろうと」と思った記憶がある。ただCNET Japanが昨日配信した記事を読むと、「(この時)中継で映されたSpaceXの管制センターからは歓声が溢れていた」とある。素人目には明らかな失敗に見えるが、開発者の狙いは別のところにあったのだろう。爆発を見越した試験だったということか。
Starshipの開発はその後も失敗続き。8カ月後の2回目も飛行時間が伸びたもののやっぱり爆発。3回目で始めて安定した飛行に成功し、4回目試験では第2段ロケットの地球への帰還に成功している。そして今回が5回目。「第1段ブースターを射場の『箸』で回収すること」に成功、巨大ロケットの再利用に道を開いた。CNETの記者は「失敗があったときに(JAXAやNASAなどでは)報告書を上司に提出するが、SpaceXはその間に改良試験が終わって、次のロケットを打ち上げるくらいのスピード感がある」(宇宙ビジネスメディアUchuBizより引用)と書き加える。日本なら失敗の原因と責任の追求に何カ月も、ひょっとすると何年もかかるかもしれない。イーロン・マスクという稀有な経営者がいるからできることかもしれない。民間企業とはいえこのスピード感には驚くばかりだ。
Starshipの開発試験の翌々日にはNASAの無人探査機(Falcon Heavy<ファルコン・ヘビー>)の打ち上げを実施した。搭載したロケット(Europa Clipper=エウロパ・クリッパー)は木星の衛星エウロパの観測を目指している。機体にはカメラの他に分光計・レーダー・磁力計など9つの科学機器が搭載されており、「氷の外殻の下に存在すると予想されている内部海の特性、表面・氷・内部海の相互作用、内部海の生命居住の可能性などを探ります」(YAHOOニュース)とある。こちらはNASA主導のプロジェクトだが、民間企業がこれだけの実績を残すこと自体いかにもアメリカ的だ。冒頭のStarshipの成功は初回打ち上げから、発射台で巨大ロケットの回収を実現するまで、わずか1年半の出来事だ。「失敗は成功の母」を実践している。マスク氏は「2026年までに人類を火星に送る」と宣言している。こういう実例を見ていると本当に実現しそうな気がしてくる。
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