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コラム(3日)、石破総理誕生で進む円安、持論封じ込められロケットスタート不発

円安が再び加速している。というか石破新総理が決まってから円相場は乱高下しているといったほうがいいのかもしれない。新総裁が何をやろうとしているのか、市場関係者が戸惑っている印象を受ける。石破氏は総裁選を通して「金利のある世界」を容認する発言をしてきた。だから9月27日の開票日に石破総裁が確定した途端、146円台だった円相場が一時142円台まで急騰した。決選投票の前の第1回投票で高市氏がトップになった時点では、143円〜144円台だった相場が146円台まで円安に振れた。同氏が「デフレ脱却まで金融緩和を継続する」と主張していたからだ。これに対して石破氏は「金利のある政界」への誘導を目指す日銀に理解を示す発言を繰り返していた。ありていに言えば高市氏の円安路線に対して石破氏は円高容認姿勢。真逆の方針を示していた。その円相場は現時点で147円15銭(10時18分現在)、総裁選の開票前に比べると2〜3円程度の円安である。

昨日行われた石破総理と植田日銀総裁の会談。ブルームバーグによると新総裁は「現在、追加の利上げをするような環境だとは思っていない」と述べている。日銀の金融政策については「政府としてあれこれ指図をする立場ではない」としながらも、「個人的には現在そのような環境にあるとは思っていない。追加の利上げをするような環境にあるとは考えていないと語った」とある。日銀の独立性という観点から見ると、これは極めて微妙な発言である。「追加利上げ」を否定しているのだが、この表現それ自体が「政府による圧力」と認定されても仕方ないだろう。個人的には明らかな“圧力”だと思う。前回の金融政策決定会合で0.5%の利上げを実施したことで「時間的な余裕が生じている」(植田総裁)。にもかかわらず新総裁は「利上げを急ぐ環境にない」と改めて主張している。この主張は利上げの是非を言っているのではないだろう。新総裁就任直後に暴落した株価や急騰した円相場に対する牽制の意味を込めたものだ。会談の中で「(総裁からは)具体的な指示はなかった」と説明した植田総裁の発言を見ても、新総理の意図は明らかだろう。

岸田前総裁は就任の記者会見でキャプタルゲイン課税に取り組むと表明した。その直後に株価が暴落したことをうけて、その後この課税については一切発言しなくなった。総裁・総理に就任して初めて理想と現実のギャップの大きさ知ったのだろう。石破氏も利上げ容認発言から金融緩和維持路線に何の説明もないまま、さりげなく基本路線を切り替えた。予算委員会か党首討論を経てからの解散という持論は森山幹事長に意図も簡単に無視された。石破氏の責任というより総裁選の政策論争は何だったのか、問いたくなる。いずれにせよ独自カラーを出せないまま、旧態依然とした自民党の体制に簡単に押し流されてしまうようでは、自民党の体質改善とか政治改革と言っても有権者は誰も期待しないだろう。安倍元首相はデフレ脱却に向けた異次元緩和という奇策でロケットスタートを決めた。長年党内野党に甘んじてきた石破氏にとっては、好き勝手に持論を展開することがロケットスタートを呼び込む唯一の戦術だったと思うのだが、どうやらその切り札は完全に封じ込められてしまったようだ。


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