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『ずっと独身でいるつもり?』で幸せについて考える

試写会の良いところは、自分では絶対に選ばないような作品に巡り会えることだ。
フィルムマークスで夜の東京をバックにこちらを振り返る田中みな実のメインビジュアルを見にしても、私は素通りしていただろう。

「仕事」という名目は、自分の嗜好では辿り着かないようなものと出会わせてくれる。
そしてなんの思い入れもないからこそ、より引いたところで冷静に鑑賞できるのも楽しい。

話の軸になるのは同じ東京の空のもと、全く違った生活を送る4人の女。

売れっ子ライターの田中みな実。
彼氏と同棲予定だったマンションに一人で暮らすOL市川美和子。
パパ活を生業とする松村沙友里。
人気主婦インスタグラマーの徳永えり。

それぞれが自分の人生に優越感を感じながらも、その裏に孤独を抱えながら生きている。

簡潔にまとめると「多様性が重んじられるようになってきたと見せかけて、全然そうでもない東京で生きていく女の幸せとはなんぞ」という話。

そこに「私と一緒だ」要素がたっぷり散りばめられているから、同じ街の、同性の話として、自分にがっつり引き寄せて見てしまう。
それぞれのファッションも、この世のアパレルブランドを乱暴に4つにジャンル分けしたみたいな網羅感があって、誰かしらに親近感を持てるような仕掛けがある。

私はビジュアルの好みも相まって気を抜くと市川実和子に感情移入してしまった。

彼氏と別れ、一人で生きていくと意固地になっている彼女は登場シーンでもジムでストイックに体を鍛えている。
でも本当は、結婚すれば幸せになれると誰よりも信じていて。
あえてそんな楽な道を選ばず、一人で生きている強い自分に酔うことで孤独への恐怖を誤魔化している。

そんな自分の本心に、田中みなみの言葉をきっかけに気づかされる。

素直に結婚を目指してアクションしようかと思い始めたところで、
今度は、学生時代の同級生で現主婦インスタグラマーの徳永えりと話して、
「結婚していること」=「幸せ」ではないということを知る。

この世には私が絶対幸せになれる場所なんてないのか…。

家庭に入って呑気なやつらとは一線を画した孤独の世界にいられたのは、
確実に幸せな世界があってこそ成立するものだった。
結婚しても対等に孤独で不幸なら、人生ってなんなの?幸せってどうやったらなれるの?

「結婚したらさみしさは消えるんじゃないのかよーーーー!」

えりと話した帰り道、全力で自転車を漕ぎながら叫ぶ彼女の姿は、
いつかの自分を見ているよう。
同じような裏切りには何度も合っている。

これを手に入れたら、ここまで頑張ったら、幸せになれる。
世の中は私たちに、そういう刷り込みをしてくる。

でも、残念ながらそんな約束の地はどこにもない。
自分にとって何が幸せか、たった一人で向き合って考え抜いた先でしか幸せになれない。
もし、ここでは幸せになれないと思うなら、今より少しでも幸せになれるような場所を、また考えて考えて、そこに辿り着くための行動をして、行ってみて違ったらまた行き先を考える。
果てしなく思えるけれど、つくづくこれしかないと思う。

まずは自分がどうしてここに辿り着いたのか、問いかけること。

市川美和子も最後は「自分にとって」何が幸せなのかを見つめ直す。そして、彼氏と同棲する予定だった二人用の部屋を引き払うことを決意する。

この記事で他3人の登場人物のストーリーを説明することはしないけれど、世の中から容赦なく振り下ろされる「こうあるべき」を跳ね返して、それぞれが自分にとっての幸せに向けて一歩を踏み出すというのが、この作品のエンディング。

「ずっと独身でいるつもり?とか、世間一般でいう幸せが、私にとっての幸せと決めつけるような問いかけをしてこないでほしい。一見幸せそうじゃない生き方を幸せと思うなら、そこに迷う必要なんてない。私が幸せになる方法は、私が一番よく知ってるはずだから」

色んな生き方があっていいよねって言えるのは、
世の中でいう「幸せ」を手に入れている人だけみたいな風潮が確かにあって。
そんな空気を作っている一端を自分も担っているかもしれないと、
我が身を振り返らされるのでした。

※トップ画像は以下の映画公式HPより

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