知らないと損をする”値決めのワナ”とは!?【チェックシート付き】
はじめに:起業家達の苦い経験
いかがでしょうか?
在庫の嵐、、、シャレになりませんね。
アイデア段階で「いいね」「欲しい」と言ってくれた人たちが、実際のサービスは購入してくれない。
それどころか時に反対のことを言う。
社内起業家の皆さんは、自社の商品を置き換えて考えてみてください。
ひょっとして「私も似たような経験しました。」と思っている方もいるかもしれませんね。
この現象を、私は”値決めのワナ”と呼んでいます。
皆さん、こんにちは。
MOONSHOT WORKS株式会社の代表取締役CEO、藤塚洋介です。
今日は、新規事業開発において、見逃しがちな”値決めのワナ”についてお話ししたいと思います。
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”値決めのワナ”は、なぜ起こるのか?
1. 「無料」と「有料」の心理的ギャップ
TEDの動画が780万回以上閲覧されているという米国のデューク大学の心理学及び行動経済学者ダン・アリエリー教授の研究によると、人は無料のものに対して非合理的な価値を見出す傾向があると言います。
人間の脳は、「無料」という言葉に対して特別な反応を示します。
無料と「1円」は1円の差どころか何十倍の差を感じるほどなのです。
無料で好評を得たからと言ってそのまま有料で始めるとユーザーはついて来ないかもしれません。
2. 社会的承認バイアス
私たちは他人の意見に影響されやすい生き物です。
特に日本社会では、「空気を読む」文化が根付いています。
インタビューの場合だと、「あなた」に気を遣っている可能性もあります。
インタビューは顧客にとって非日常体験です。
メーカーの新事業開発の担当という「身近ではない存在」に、思わず気を遣ってしまいポジティブな意見ばかり言ってしまうタイプがこれに当たります。
そして、アイデアを聞いた時、周りの反応が良かった場合につられて「良い」と言ってしまう人も少なくありません。
例えば、社内の審議会で多くの役員が「他の人が良いと言うので、自分も同調した」と告白したケースでは、最初に「良い」と言った人は誰だったかもわからなかったのです。
3. 理想と現実のギャップ
アイデア段階では、人は自分にとって最も都合の良い使用シーンを想像しがちです。
しかし、実際のサービスは必ずしも、その理想通りではありません。
この理想と現実のギャップが、購入を躊躇させる要因となります。
ユーザーテストでは高評価を得ても実際のサービス開始後、
「思ったより準備が面倒」
「やっぱりアプリより人がいい」
「効果が出そうだけど、毎日モチベーションが続かない」
といった理由で継続利用を辞めてしまうケースなどがこれにあたります。
購買に結びつかない深層 〜前編〜
それではこのようなことが起きる深層の理由を見ていきましょう。
1. 価値と価格のバランス
価値と価格のバランスといえば
「コスパが悪い。」
「モノが良いのはわかるけど高すぎて買えない。」
などがわかりやすいユーザーの反応です。
逆に「安すぎて買わない」というケースもあったりします。
このような傾向には購買者の心理を見ていく必要があります。
「美容に効く、低カロリーでタンパク質が豊富なスムージー」を開発している石川さんの体験その2を見ていきましょう
2. ペインポイントとの不一致※
私が関わった社内起業家には、一度思いついた解決策にしがみつき、「ペインポイント」まで戻れなくなっている方が多くいます。
かつて私もそうでしたが「自分の解決策に酔う」のが危険信号なのです。
もし、ペインポイントが違うと出来上がるサービス・商品は全然違うものになるのに、「解決策である商品」にしがみつくことで、ペインポイントを捻じ曲げてしまう例が後を立ちません。
例え話ですが、
「目薬を作ってしまったからと言って、腰痛の人に目薬を渡してしまうようなもの」と言えるでしょう。
さらには、
「このユーザーは目が疲れているはずだ」
と後付けするようなものです。
なので、私が最初に勧めるのは、サービスの開発とかビジネスモデルを疑う前に、ペインポイントが間違っていないか?を徹底的に見直すことです。
そして怪しければ顧客インタビューからやり直すことをおすすめします。
フレームワークだとVPC(バリュープロポジションキャンバス)が有効でしょう。
ズレていたらこれまで検討した解決策は全て捨てて、ゼロから考え直し違うサービスを作る。
それが結局は近道で、社内起業家はその覚悟が必要なのです。
3. 広すぎるターゲットに向け値決めをしてしまう
ターゲット層が広すぎて、払える価格が違いすぎるのも理由になります。
例えば若年層にも顧客層を増やす為、既存より比較的安価なラインを発売するとします。
しかし、狙った若年層には「まだ高すぎる」と受け入れられず、
従来のファンには「ブランドの価値が下がった」と不評でブランドイメージが落ちて離れてしまう。
結果的に、どの層にも響かない中途半端な価格帯となってしまう。
このような例も後を立ちません。
購買に結びつかない深層 〜後編〜
4. 最大の落とし穴は「あまのじゃく」なユーザー
皆さんは散々インタビューやアンケートで価格の調査して値決めしているのではないでしょうか?
それなのに実際は売れない。
我々は顧客の本当の意見を聞けているのでしょうか?
そんな方は、一度顧客を疑ってみましょう。
なぜならインタビューの最大の落とし穴「あまのじゃく問題」が「顧客側」に存在するからです。
あなたは、このような「直接的」なインタビューやアンケートをしていませんか?
それ以外どうするの?と声が聞こえてきそうですね。
ちょっと衝撃的かもしれませんが、実はこのような手法では
「本当のことを教えてくれない」確率が高いのです。
あなたの調査結果には「2タイプのあまのじゃく」の結果が混じっているのです。
いかがでしょうか?
ひょっとして皆さんも、聞かれた側になってみると思い当たる節があるかもしれません。
このようなデータを元に価格を決めていたと思うと、ゾッとしますね。
これまでの事例のような結果になるのもうなづけるでしょう。
解決策:実践的アプローチ
では、この課題をどのように克服すればよいのでしょうか?
以下に、私たちが実践している方法をご紹介します。
1. 仮説検証では「コア機能」のみを「本当に売る」
アイデア段階での反応を鵜呑みにせず、小規模なMVP(Minimum Viable Product)※を作成し、「実際に課金」を伴う形でテストすることが重要です。
MVPには、試作品にコストや時間をかけずに素早く検証するという目的もありますが、もうひとつ、ユーザーが感じる本当の価値の対価がわかるという目的があります。
つまり、パッケージや付加機能の「余計なデコレーション」にユーザーも販売するあなたも騙されず、本当に欲しいものへの対価がいくらか?わかりやすいのです。
【実践ポイント】
MVPは最小限の機能に絞る
有料での使用を依頼し、実際の支払い意思を確認する
フィードバックを分析し、試すサイクルを「何度も」回す
2. 価格分析テクニックを使い「本音」を調査する
「一体いくらなら買うのか?」
価格について直接質問すると、本音を教えてくれにくい「あまのじゃく」に変身してしまう、やっかいな問題があると書きましたね。
それではどうやって調査したらいいのでしょうか?
答えは出来るだけ「本音」に近い答えを「間接的に質問する」という手法です。
例えば、以下のような手法があります。
先の石川さんのケースは、PSM分析の③「最低品質保証価格」を下回っていた可能性がありますね。
「間接的に質問する」効果として、ユーザーは本心でないことをいうのが難しいとされています。
「要はあまのじゃく」になりにくいのです。
ところで、こんなに手法が確立されているのに、間接法を使っている人はわずかなのが残念に思います。
価格分析のテクニック詳細は機会があったら記事にしたいと思います。
3.コスパを決める
京セラの稲盛和夫さんの「値決めは経営」という有名な言葉がありますが、価格設定は多くの変数が絡み合う「科学」であり「芸術」だと思うのです。
顧客が痛みを感じる「ペインポイント」や「解決策」があっていても、値決めひとつで売れる売れないが大きく変わるのです。
あなたが「売りたい価格で売る」ために大切なことは「価値」と「対価」のバランスです。
最近いい傾向だと思うのは「価格差別法」と言われる、個々の顧客が払っても良いと思う価格に合わせて、顧客ごと、またはタイミングごとにに価格を設定する方法です。
同じ商品で、買うとき、買う人によって値段が変わるやつです。
予約時期で価格が変わる「航空運賃体系」や学校への「アカデミックパック」提供、ホテルで当日に安くなる「宿泊料金」などがありますね。
これは新しいようで、スーパーのお惣菜が夕方安くなる、新幹線の子供運賃など昔からあるものの拡張といえますね。
「価格差別法」はユーザーと提供者のWin-Winになりやすいと思うのです。
終わらない、顧客への価値提案ジャーニー
このように仮説検証時にユーザーに価格調査をするのは非常にセンシティブです。
みなさんも、顧客との対話を大切に敏感に反応を確認しましょう。
また、「自分で営業し売ってきた」皆さんも「営業マンや、ネットで売れる仕組み」にしないとスケールすることはできません。
ここに悩む方もいらっしゃると思います。
そして、売れる販売プロセスを構築し、検証するフェーズを乗り越えたあなたは、リリース後も世の中の変化に合わせ継続的に価格と価値提案を見直す必要があるのです。
さて、価値提案を諦めなかった石川さんはどうなったのでしょうか?ストーリーその3を見ていきましょう。
顧客への価値提案は終わらない、だから楽しいのかもしれませんね。
まとめ:「値決めのワナ」を避けるためのチェックリスト
それでは、恒例のチェックリストで皆さんの現状を確認しましょう。
発売前に以下のことができているか、YesかNoで答えてください。
アイデア段階での反応を過大評価していない
コア機能だけのMVPを作成し評価してもらった
コア機能だけのMVPを作成し課金してつかってもらった
MVPの利用フィードバックを元に何度かブラッシュアップしている
MVPを引き上げると伝えると、ユーザーから「ないと困る」置いていってほしいと言われるレベルになっている
価格設定は適切か、顧客の感じる価値とバランスが取れているか? ※「コストに見合わない」「相応なコストだね」「コスパがいい」の3択で「コスパがいい」のみチェック
チェックリストの使い方
・3番がNOの人は特に危険信号です。
・NOが3つ以上の人はペインポイントを見直してみましょう。
・設問1つでもNOがあればその項目を注意して再確認しましょう。
さて、みなさんはいかがでしたか?
新規事業開発において値決めはその後の事業全体に影響を及ぼす、重要かつダイナミックな挑戦と言えるでしょう。
ぜひ、あなたの選択やあなたのアイデアをコメント欄で共有してください。一緒に、未来を創る旅に出かけましょう。
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