見出し画像

事業アイデアの宝庫?バリューチェーン分析の実践編【フレームワーク#08】

皆さん、こんにちは。
MOONSHOT WORKS株式会社代表の藤塚洋介です。

前回は、既存事業の改善でも使われることの多いバリューチェーン分析の基本について書きました。

今回はより高度な活用方法や新規事業で使いたいという方向けの記事になっています。ぜひ読んでみてくださいね。


バリューチェーン分析の高度な活用:未来を見据えた戦略とは?

バリューチェーン分析は、静的な現状分析にとどまらず、未来を見据えたダイナミックな戦略策定ツールとして活用できます。高度な活用方法を理解することで、企業は真の競争優位性を獲得し、持続的な成長を実現できます。

RoboticやAIの活用によるバリューチェーンの進化

現代のバリューチェーンは、ITの活用なしには語れません。データ分析、AI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのテクノロジーは、バリューチェーンのあらゆる側面に革命をもたらしています。

購買:
需要予測に基づく自動発注システムにより、在庫最適化とリードタイム短縮を実現。

製造:
IoTセンサーデータの活用によるリアルタイムの生産管理、予知保全によるダウンタイム最小化。AIを活用した品質検査の自動化。
出荷:
最適な配送ルートの選定、倉庫の自動化による効率向上。

マーケティング&販売:
顧客データ分析に基づくパーソナライズドマーケティング、ターゲティング広告による効率的な顧客獲得。

サービス:
チャットボットによる24時間体制の顧客サポート、顧客データ分析に基づく個別対応。

これらのIT活用は、業務効率化と意思決定の迅速化だけでなく、新たなビジネスモデルの創出にも繋がります。

グローバルバリューチェーンの最適化:世界を舞台にした戦略


グローバル化が進む現代において、国際分業によるコスト削減、リスク分散、最適な生産拠点の配置は、企業戦略の重要な要素です。

グローバルバリューチェーンの最適化は、単なるコスト削減だけでなく、各国の市場特性に合わせた最適な製品・サービス提供、グローバルな人材活用、新たな市場機会の獲得など、多様なメリットをもたらします。

リスク管理の徹底:
地政学リスク、自然災害、サプライチェーンの混乱など、グローバルな事業展開には様々なリスクが伴います。複数拠点での生産体制構築や代替サプライヤーの確保など、リスク管理の徹底が不可欠です。

最適な拠点配置戦略:
人件費、関税、物流コスト、市場アクセスなどを考慮し、最適な生産拠点、研究開発拠点、販売拠点を配置することで、競争優位性を高めます。

サステナビリティ:未来への責任

環境負荷低減、倫理的な調達、持続可能なバリューチェーンの構築は、もはや企業の社会的責任としてだけでなく、長期的な成長戦略の必須要素となっています。

環境規制への対応、倫理的なサプライチェーン構築、再生可能エネルギーの活用などは、企業イメージ向上、コスト削減、新たな市場機会の創出にも繋がります。

透明性のある情報開示:
サプライチェーンにおける環境負荷や社会的な影響に関する情報を積極的に開示することで、ステークホルダーからの信頼獲得に繋がります。

循環型経済への移行:
製品のライフサイクル全体を考慮し、資源の再利用、リサイクルを促進することで、環境負荷を低減し、持続可能なビジネスモデルを構築します。

デジタル化の影響:変革の波に乗る

Eコマース、デジタルマーケティング、データ分析など、デジタル技術はバリューチェーンを根本的に変革し、新たな価値を創造する原動力となっています。
デジタル化は、顧客接点の強化、パーソナライズ化されたサービス提供、業務プロセスの自動化、新たなビジネスモデルの創出など、様々な機会をもたらします。

D2C (Direct to Consumer) モデルの台頭:
デジタル技術を活用することで、中間業者を介さずに直接顧客に製品・サービスを提供するD2Cモデルが実現可能になります。

ダイナミックな変化への対応:俊敏性とレジリエンス

市場変化、技術革新、パンデミック、地政学リスクなど、現代のビジネス環境は常に変化しています。バリューチェーンを柔軟に見直し、迅速に適応するための俊敏性(Agility)とレジリエンス(Resilience)が不可欠です。

シナリオプランニング:
将来起こりうる様々なシナリオを想定し、対応策を事前に検討しておくことで、予期せぬ変化にも迅速に対応できます。

データドリブンな意思決定:
リアルタイムのデータ分析に基づき、迅速かつ的確な意思決定を行うことで、変化への対応力を高めます。

これらの高度な活用方法を理解し、実践することで、企業は不確実な時代においても持続的な競争優位性を築き、未来を切り拓くことができます。


持続的な競争優位性を築くために

バリューチェーン分析から得られた示唆を行動に繋げる

分析結果を単なる資料で終わらせるのではなく、具体的な行動計画に落とし込み、実行、評価、改善を繰り返すことで、持続的な競争優位性を築くことができます。

定期的な見直しと改善

ビジネス環境は常に変化するため、バリューチェーンも定期的に見直し、改善していく必要があります。


応用編:強みを活かして新規事業を発想するためのバリューチェーン活用法


バリューチェーンに新規事業のヒントを探す

新規事業のアイデアがなかなか出てこない…
出たアイデアが、なぜ自社がやるのか?に答えることができない。
これは多くの担当者がじっくり悩んでしまう、特に大企業あるあるなのです。

しかし、ゼロから全く新しいものを考える必要はありません。
以前にアンゾフのマトリックスの活用の記事で書いたような、派生市場、派生の製品を狙う戦略が有効だからです。

しかしざっくり派生市場と言っても、どうやって、どの部分の既存事業を進化させるかは解像度を高めないとありきたりな事業アイデアになってしまうのです。

そこで、これまで見えづらかった自社の独自資源を使い、競争優位性を重視した魅力的なアイデアを発想するために有効なのが、バリューチェーン分析です。

バリューチェーンは、製品やサービスが顧客に届くまでの連続の活動を示しており、それぞれの段階でコストや価値が付加されます。

この各段階に目を向けることで、どこを強化し、どこを変えると新しい事業の可能性が広がるかが見えてきます。

ここでは代表的な戦略を見ていきましょう。

バリューチェーンの強い部分だけを切り出してビジネスにする
バチェーンリュー上の最も優れた部分を切り出し、それ自体をビジネスとして展開する方法です。

例えば、自社のアフターサービスが高く評価されているなら、そのノウハウを競合向けに提供するビジネスモデルを考えることができます。

品質管理において強みがある企業は、それをさらに進化させて業界の品質基準を打ち出し、評価するサービスができるかもしれません。お客様の競争を高めつつ、新しい市場へもアプローチできるようになるのです。
強みを極限まで磨き上げることで、周辺分野での事業拡大や、新たな顧客層の取り込みが可能になります。

このアプローチは、既存事業に依存せず、独立した新規事業として成立させることが可能であり、効率良く新しい収益源となります。

バリューチェーンの弱い部分を他社に任せる
同時にこの戦略ではバリューチェーン上の弱点を見つけて、それを得意とする競争にアウトソーシングする戦略です。
これにより、自社の資源を他の重要な部分に集中させ、新たな価値を考慮して広げます。 自社が製造は得意だが物流が弱い場合、物流を専門とする企業と提携することで、効率化が図れ、顧客への提供価値も認められます。このように、弱点を補ってもらえることで新たな競争力が生まれるのです。

サプライチェーンまで伸ばして新たなヒントを得る
バリューチェーンに加え、さらに視点を広げてサプライチェーン全体に目を向けると、思いもよらなかった発見があります。

グループ会社や、提携先、代理店など原材料や仕入れ元、物流パートナーなど、サプライチェーンの上流から下流までを俯瞰することで、新しい付加価値が見つかることがあります。

例えば、サプライチェーン上の販売チャネルを省いて直販にする。
強力な仕入れ先と包括パートナー契約を組んで同業界向けの仕入れプラットフォームを作る。

ワークフローの標準化ができていれば仕入れから販売までのサプライチェーン管理DXを提供する、などが考えられます。

いかがでしたか?自社の環境だけでなく、他の業界でそのようなイノベーションが起きていないか調査してみるのも良いでしょう。

MOONSHOT WORKSではバリュチェーン分析を起点としたアイデア創出のお手伝いもしています。本気でやってみたい方はご相談くださいね。

ツール:バリューチェーン分析チェックリスト

このチェックリストは、バリューチェーン分析を効果的に実施するためのガイドとしてご利用いただけます。各項目について、自社の状況を評価し、強み・弱み、そして改善の機会を特定してください。


主要活動:
1. 購買 (Inbound Logistics):
☐ サプライヤーとの関係は良好か?価格交渉力は十分か?
☐ 原材料・部品の品質管理は適切に行われているか?
☐ 在庫管理は効率的か?過剰在庫や在庫不足は発生していないか?
☐ ロジスティクスは最適化されているか?輸送コストは適切か?
☐ サプライチェーンの透明性は確保されているか?

2. 製造 (Operations):
☐ 生産プロセスは効率的か?生産性は高いか?
☐ 品質管理は徹底されているか?不良品発生率は低いか?
☐ 設備は最新の状態か?メンテナンスは適切に行われているか?
☐ 生産能力は需要に合致しているか?
☐ 環境への配慮は十分か?

3. 出荷 (Outbound Logistics):
☐ 倉庫管理は効率的か?保管コストは適切か?
☐ 配送システムは最適化されているか?配送コストは適切か?
☐ 納期は守られているか?顧客満足度は高いか?
☐ 返品処理はスムーズに行われているか?

4. マーケティング&販売 (Marketing & Sales):
☐ ターゲット顧客は明確に定義されているか?
☐ マーケティング戦略は効果的か?ブランド認知度は高いか?
☐ 販売チャネルは最適化されているか?顧客へのリーチは十分か?
☐ 価格設定は適切か?競争力は確保されているか?
☐ 顧客関係管理(CRM)は適切に行われているか?

5. サービス (Service):
☐ アフターサービスは充実しているか?顧客満足度は高いか?
☐ 顧客からの問い合わせ対応は迅速かつ丁寧に行われているか?
☐ 修理・メンテナンス体制は整っているか?
☐ サービスの質は競合他社と比較して優れているか?
☐ 顧客からのフィードバックを収集し、サービス改善に活かしているか?

支援活動:
1. 企業インフラストラクチャ (Firm Infrastructure):
☐ 経営戦略は明確で、全社的に共有されているか?
☐ 組織構造は効率的か?意思決定プロセスはスムーズか?
☐ 財務管理は健全か?
☐ 法令遵守は徹底されているか?

2. 人事管理 (Human Resource Management):
☐ 従業員のスキル・能力は、企業戦略に合致しているか?
☐ 人材育成は適切に行われているか?
☐ 従業員のモチベーションは高いか?
☐ 適材適所の人材配置が行われているか?

3. 技術開発 (Technology Development):
☐ 技術開発戦略は明確に定義されているか?
☐ 研究開発投資は十分か?
☐ 新技術の導入は積極的に行われているか?
☐ 知的財産管理は適切に行われているか?

4. 調達 (Procurement):
☐ 調達プロセスは効率的か?コストは適切か?
☐ サプライヤーとの関係は良好か?

よくある質問(FAQ)

Q1: バリューチェーン分析を行う目的は何ですか?
A1: 企業の競争優位の源泉を特定し、強化するための分析手法です。コスト構造の把握、差別化要因の明確化、業務プロセスの改善など、様々な経営課題の解決に役立ちます。

Q2: バリューチェーン分析はどのような企業に適していますか?
A2: 業種・規模を問わず、あらゆる企業に適用できます。特に、競争が激化している業界や、コスト削減、差別化戦略を推進したい企業にとって有効です。

Q3: バリューチェーン分析を行う上での注意点は?
A3: 各活動の相互作用を考慮することが重要です。個々の活動だけでなく、全体最適の視点で分析を行う必要があります。また、外部環境の変化や競合他社の動向も踏まえる必要があります。

Q4: バリューチェーン分析とSWOT分析の違いは何ですか?
A4: SWOT分析は、企業の内部環境(強み・弱み)と外部環境(機会・脅威)を分析するのに対し、バリューチェーン分析は、企業内部の価値創造プロセスを分析することに重点を置いています。両者を組み合わせることで、より効果的な戦略策定が可能になります。

Q5: バリューチェーン分析の結果をどのように活用すれば良いですか?
A5: 分析結果を基に、具体的な行動計画を策定する必要があります。例えば、コスト削減のためのプロセス改善、差別化のための新製品開発、顧客満足度向上のためのサービス強化など、具体的な施策を立案し、実行していくことが重要です。

このチェックリストとFAQを活用し、効果的なバリューチェーン分析を実施してください。

みなさん、2回にわたるバリューチェーン分析はいかがでしたか?
それではまた次の記事でお会いしましょう。


いいなと思ったら応援しよう!