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CLOSEのカウントダウン(その2)家族会議に学ぶ新規事業の撤退条件とは?

家族の選択

今回は、とある家族の家族会議をのぞいてみましょう。
どうやら父親の転勤が決まったようです。


家族会議の前日
:「…明日、いよいよ家族会議だな。」

:「うん。みんなで決める大事な話だから、準備してたほうがいいわね。」

長男:「どうせお父さんの単身赴任で決まりだろ。学校だってあるし、急に引っ越すなんて無理だよ。」

長女:「でも、私もお父さんと一緒にいたいな…」

:「だから、家族で話し合って決めるのよ。」

家族会議の開始
:「みんな、ありがとう。今日は、僕の転勤に家族と向き合ってるか、ちゃんと聞いてみたいと思っている。」

:「まずは、家族でついていくか、お父さんの単身赴任か。それをしっかり決めましょう。」

長男:「僕は正直、今の学校を続けたい。だから、お父さんが一人で行くほうがいいと思う。」

長女:「でも…家族がバラバラになるのは嫌だなぁ。」

:「私たち、もし転勤になった時の「事前のルール」にいくつかの条件を決めていたわよね。まずは、その条件に当てはめてみましょう。」

:「そうだな。確か半年前の家族会議で決めたね。無理にどっちを選ぶのではなく、前に話し合ったルールも見直してちゃんと考えて決断しよう。」

シーン3:事前に決めた家族のルール
:「じゃあ、ルール読み上げるわね。」
とスマホのメモを探す。

「あったわ!
まず、家族はできるだけ一緒に暮らしたい。
ただ、転勤に家族がついていく場合、学校や仕事に影響がないこと。
仮に、子供たちが現地で不安定になったり、生活が困難になった場合は、途中から単身赴任に変更することを検討する。
手続きが大変でも、家族を最優先すること。」

長男:「それなら、最初はついていく選択もありかも。ダメだったら戻ることもできるし。」

長女:「うん!それなら安心。」

:「それでも、その決断は簡単じゃないから、定期的に家族会議を開いて、現状を踏まえて話し合って約束しよう。みんなの気持ちや状況をしっかり確認して、無理がないように。」
(家族全員がうなずき、緊張が和らいだ空気に変わる。)

シーン4:最終決定
長男:「最初は嫌だと思ったけど、もしダメだったら、すぐに戻れるなら、どこでもいいかも。」

:「じゃあ、決まりだね。まずはみんなで一緒に行ってみよう。何か問題があったら、すぐに話し合って対処しよう。」

:「そうね。無理をせずに、柔軟に対応できるように、家族で一緒に進んでいきましょう。」

長女:「うん、お父さんと一緒にいられるなら、まずは新しい都市での生活もやってみたい。」

シーン5:転勤2ヶ月後の生活、家族会議の効果
:「さあ、2ヶ月経ったけど、どうしたの?問題はない?」

長男:「僕は大丈夫。少し慣れてきたかな。でも、やっぱり元の学校が恋しい時もあるけどこっちでも友達ができたし。」

長女:「私は楽しんでる!でも、みんなでまた話し合って安心だね。」

:「こうやって、定期的に家族的に会議開いててよかったな。
おかげで、無理なく続けられてる気がするよ。」

:「家族みんなで決めたことだからね。それが一番大事なこと。」

実話を元にしたフィクションです。

突然の家族会議の話にびっくりしたでしょうか?
もし、この家族が事前に家族会議をしていなかったら?

感情的になって、みんなバラバラのことを言っていたかもしれないし、一緒に行かなかったかもしれない。

何より家族の納得感がなかったかもしれません。

「いざ」と言う時は感情が先走ってしまい、冷静に考えられないもの。
これは新規事業を進める上でもとても大事なことなのです。

前回の記事CLOSEのカウントダウン(その1)では、大企業の組織の弱さから、新規事業のモチベーションの連鎖の難しさが発生し、本来うまくいく可能性があるのに、自らCLOSEに走ってしまう例を書かせていただきました。

(その2)では、「やめた方がいいけどやめれない」そんなケースでの学び取り上げたいと思います。

新規事業プロジェクトにおける「言えないホンネ」と先ほどの「家族会議に学ぶ解決策」について深掘りしていきましょう。



沈黙の重圧:言えない本音の正体

言っちゃいけないホンネとは?

新規事業担当者の多くが経験する「あるある」の一つに、こんな思いがあります。

「本当はこのプロジェクトをやめた方がいいと思っているけど、言えない。言っていいのかわからない。」

この思いの背景には、複雑な要因が絡み合っています。

1.サンクコスト効果の罠

これまでに掛けた時間や投じた開発コストが大きければ大きいほど、
「ここまでやってきたのだから…」
という思いが強くなります。

実際、ある調査によると、新規事業プロジェクトの約40%が、サンクコスト効果によって必要以上に長引いているという結果が出ています。

例えば、ある食品メーカーの新規健康食品開発プロジェクトでは、3年間で5億円以上の開発費を投じたにもかかわらず、市場の反応は芳しくありませんでした。

しかし、売り上げが多少あるのも事実です。
「これだけ投資したのだから」
「もっと売れる市場があるかもしれない。」
「もう少しで口コミが発生するかも。」

という思いが強く、誰もプロジェクトの中止を提案できずにいました。

2.権威への遠慮

社長や上層部が提案したアイデアの場合、それに異を唱えることへの心理的障壁が高くなります。

日本の組織文化における「上意下達」の傾向が、この問題をより深刻にしています。

例えば、社長が強く推進していたため、実務レベルで様々な課題が見えていたにもかかわらず、誰も反対意見を述べられずにいる例などは多くの会社で見られます。

結果として、顧客ニーズとかけ離れたサービスローンチとなってしまうのですが、結果が出ている頃には社長が交代していて責任もどこかにいってしまうケースです。

沈黙を破る:プロジェクト撤退の新しいアプローチ

沈黙を突破し次に繋げるには?

では、このような状況を打開するには、どうすればよいのでしょうか?

「勇気を持って言うのが正しいのです!」

確かにそうかもしれません。
しかし正しくてもそれを通すのは困難なことは容易にイメージできるのではないでしょうか。

我々がこれまでの経験を通じて最も重要だと考える解決策は、以下のアプローチです:

新規事業の撤退条件を設定し、社内審査ごとに更新する
このアプローチには、いくつかの重要なポイントがあります:

1.早期からの撤退条件設定

プロジェクトの開始時点で、具体的な撤退条件を設定します。例えば、「2年以内に顧客獲得数が100社に達しない場合」や「3年以内に売上1億円を達成できない場合」「検証する仮説が途絶えた時」などです。

そして、冒頭の家族のケースのように、「事前にルールを決めている」ことが重要です。
プロジェクトが走り出している最中に突然終了するかどうかを迫られると、当事者はなんとか無理にでも続けるエビデンスを集め始め出すことにも繋がり、冷静な判断がつきにくくなるのです。

逆に、日本の企業文化では、ルールを遵守することに長けている人が多いです。
撤退条件をルール化することで、個人の感情や立場に左右されない、客観的な判断が可能になります。

例えば、ある通信会社の新規IoTサービス開発プロジェクトでは、立ち上げ時に「1年以内に契約企業100社、月間アクティブユーザー10,000人を達成できない場合は撤退を検討する」という明確な条件を設定しました。この条件があったからこそ、9ヶ月後の中間評価で冷静な判断ができ、早期のピボットにつながりました。

2.定期的な見直し

社内審査のタイミングごとに撤退条件を更新します。
市場環境の変化や技術の進歩に応じて、柔軟に条件を調整することが重要です。

例えば、あるフィンテックスタートアップでは、四半期ごとに撤退条件の見直しを行っていました。その結果、コロナ禍による市場環境の激変にも迅速に対応し、事業モデルの軌道修正に成功しました。

3.忖度の排除

上層部からのアイデアだから、大手取引からの紹介だから。
このようなプロジェクトでは様々な忖度が生まれがちです。

このような不要な配慮を最小限に抑えるには新規事業の評価委員会に社外取締役を含めるなど、社内の人間関係や過去の経緯に縛られない、客観的な判断を可能にすることが重要です。

結論:備えあれば憂いなし

2回にわたるCLOSEのお話、いかがでしたか?

1.自分自身と向き合い、真の目的を見失わないこと。
2.冷静な時期=プロジェクトのスタートやフェーズが進むタイミングで、先に撤退条件を決める

自身に問い、仕組み化するのが大事なんですね、
2の先に撤退条件については、ハリウッドセレブが離婚の条件を結婚する前には契約書にして決めていると聞いたことがありますが、それにも似ているかもしれませんね。

事業CLOSEの話は少々ネガティブに感じるかもしれません。
しかし、終わりは次の新規事業に集中できるチャンスでもあるのです。
新たな門出に向け、失敗を次の糧にできるように悔いのない終わり方を心がけましょう。

それではみなさん、また別の記事で!


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