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「意思決定ができず時間だけが過ぎる…」 社内起業家の焦りとは?

 新規事業に取り組む「社内起業家」の皆さん、事業のアイデア出しに苦戦していませんか?
そして、アイデアはたくさん出たけど、どれにすればいいか、今一つ決めきれずに時間だけが経過して焦っている、そんな経験はありませんか?

皆さん、こんにちは。MOONSHOT WORKS株式会社代表の藤塚洋介です。
私は新規事業開発コンサルタントとして、これまで70以上のプロジェクトに携わってきた経験から、アイデア出しから意思決定を進めるための重要なポイントがいくつかあることに気づきました。

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今回は経験や失敗談も交えながら、成功させるためのコツについてお話しします。


「積み上がるばかり」のアイデア

アイデアがどれも世の中にあるものに見えてしまう

社内起業家にとって、アイデア出しはとても重要なプロセスです。

いろんなアイデア出しの方法を学んで、沢山出してみたものの、アイデアがありきたりと思えたり、競合と差別化できなく思えたり、過去の経験からうまくいかないイメージが浮かび、インタビューやアンケートでいくらエビデンスを集めてみるも決め手が見つからない。

その結果、時間だけが過ぎて何にも着手しない経験をした方も多いのではないでしょうか。

 私が以前出会った社内起業家は、ワーキングマザー用アプリのアイデアを考えていました。

彼が最初は良いと思ったアイデアも、調査を進めると既存のアプリと似ているものばかりで、差別化できる要素が見つからず、もっと何かあるはず!と諦めずにアイデアを増やし続けました。

ふと、気づいたらアイデアの山が100個以上あるのにも関わらず、1年経っていました。いまだにリサーチばかりで、そこから先に進めるための意思決定をできずにいたのです。

意思決定できない「3つの原因」

では、なぜ意思決定できないのでしょうか。
主な原因は以下の3つに分類できます。

  1. アイデアの仮説構築スキルが原因:何個作っても「ありきたりなアイデア」になってしまい、「差別化ができない」失敗イメージや「なぜ当社がやる必要があるのだろう」とそもそも論が頭に浮かんでしまう。

  2. 事業戦略が原因:かつてのAppleやFacebookなどの「ブルーオーシャン」だけが新規事業だと思っていて、その他のやり方があるのを知らない、理解していない。

  3. 決め方の軸がないことが原因:アイデアの質を測れない=アイデアの評価基準がない、測る手法を持っていない。

みなさんは3つのパターンに心当たりありますか?
1つだけ当てはまるケースは少なく、2つか3つ、またはすべて当てはまる人も多いように思います。

ある食品メーカーの社内起業家は、自社の強みである「発酵技術」を活かした新事業のアイデアをチームメンバーと共に考えていました。

・発酵技術を応用した新しい健康食品の開発
・発酵技術を使った環境にやさしい食品容器の製造
・発酵技術を活用した新しい調味料の開発

しかし、どのアイデアも競合他社との差別化が難しくどこかで聞いたことのあるようなものばかりでした。

そして、経営層から求められる数十億の市場規模や収益性の見通しに及びそうになくチーム内部でも中々まとまりませんでした。

それでもなんとか議論して残ったアイデアの候補が数件ありましたが、社内の評価基準がなく、どのアイデアを優先して進めるべきか判断できずにいました。

結局、アイデア出しの段階で止まってしまい、新事業の立ち上げに踏み切れない状況が続いていて、更なる「良いアイデア」に出会えるまで数を出し続けることに時間を掛けていました。

このように、自社の強みを活かしたアイデアであっても、意思決定に苦戦するケースは多くの社内起業家が経験していることでしょう。

「意思決定できない」から”3ステップ”で脱却


それでは、この意思決定できない状態から脱却するにはどうすればよいのでしょうか。

1.仮説構築スキルを鍛え「課題の解像度」を上げる

良い新規アイデアは「顧客も気づいていない」場合がほとんどです。
つまり単純に聞いても分からないのです。

だからこそ仮説構築能力が試されます。難しいと感じるかもしれませんが、これは普段から「観察力」や「洞察力」を鍛えることでトレーニングが可能です。

そして仮説の「解像度が上がる」まで、焦らずしっかり時間をかけることが大切です。多くの社内起業家はここに時間をかけることをまどろっこしく感じ、すぐに思いつくサービスや商品を考えてしまうのです。

皆がやらない、だからこそ、あなたが競合に差をつけるポイントになりうるのです。アイデアは「数」ではなく「質」で勝負するという意識を持ちましょう。

ところで「解像度が上がる」とは?

「解像度が上がる」「具体性がある解像度」とはこの場合

「誰のどんなシーンで」
「どんな課題があって」
「それどうしたい」

を Before Afterで語った時に

「シーンが目に浮かぶ」かつ「新しい」
と思えるのが
「具体性がある解像度」です。

例えば最低このケースくらいまで解像度を上げるということが求められます。

先のワーキングマザーのケースを見ていきましょう

彼は「子育てママのあらゆる不便を解決したい」と課題設定しアイデアを考えていました。これでは聞こえは良くても、数ある競合と見分けがつきません。

この解像度ならどうでしょうか。
「ベビーカーを使うワーキングマザーが」
「新幹線で神奈川から北陸に帰省する時に」
「ベビーカーを載せられるエレベータの場所が限定されている」
「だから遠回りしないといけない」
「普通の人より30分早く家を出ないといけない課題」を
「ワーキングマザーこそが誰よりも早く新幹線に乗れるようにしたい」

これくらいで、どうでしょうか?
何がしたいか一目瞭然で、まだ叶っていない=「新しい」と思いませんか?具体性がある解像度というのはこういうレベルです。

実際はもっともっと解像度を上げつつ、沢山検証するのです。

アイデアの数も大事ですが、一定数出たら良さそうなものをピックアップして「仮説の解像度を上げる」事でアイデア評価がやりやすくなるのです。

「そうはいっても、知らない業界のことを、具体的な仮説を立てられない。」「顧客にインタビューしてから解像度を上げればいいのでは?」という声もよく聞きます。

ですが、最初に仮説が荒いと、どの部分を深掘りしていいか分からず、結果膨大なインタビューをしても、ありきたりな結果しか返ってこないものなのです。

もちろん顧客を知ることは大切ですが、1次情報だけでなく、具体的な仮説をもつことで、いきなり深いインタビューに入ることができ新しいアイデアが発見しやすくなるのです。

ある社内起業家は、インタビューだけ繰り返しても、顧客も気づいていない課題は掘り起こせないと感じ、アルバイトとして顧客と一緒に数ヶ月働きました。

働く側の立場になることで、これまで知り得なかった顧客の不満や、自然と行なっていた工夫、顧客企業らしい文化をしることで潜在的なニーズを発見し、斬新なアイデアを生み出すことができたのです。

このことからもアンケートやネット記事だけでなく、「自分ごととして課題を捉える」ことが本質的な課題に近づく一歩と言えるでしょう。

本質的な課題に辿り着いている感覚が出来ると、「よし、ここまで考えたのだからこのアイデアで試してみよう」とか「具体的にどちらのケースを解決したいか?」自身も周りも意思決定しやすくなるものです。

2.小さく始め、育てるストーリーを描く

次に、「新規制が高く、かつ大規模な事業のアイデアに挑戦するのが新規事業の醍醐味」という既成概念に囚われ、いきなり「初手で自社にとって経験のない、かつ大きな市場を作ること」に執着してしまうことです。

ですが、一度考えてみてください。
自社の既存事業の商品を新たなユーザー向けに改良することで新規顧客を獲得したり、既存顧客に重ね売りを生み出すような商品開発などは新規事業にあたりませんか?!

「え?それは既存部門の仕事で、新規事業チームの仕事じゃないって言われました。」「規模が小さすぎる」って思いましたか?そう思った方は、もう少し読み進めてみてください。 

確かに、既存事業を拡大するだけで終わるのなら、新規事業チームの仕事じゃないかもしれません、ですが新たなユーザー層ができればそこを足がかりに新商品を開発することもできるし、少し改良した商品を作ればその価値にあった新たな市場を開拓することも可能です。

重要なのは新規性ばかりでなく、小さく確実に始めたとしても、
「将来どこに進出したいかストーリー性がある企画」にするということです。 

これにより提案を受けた側も、「確実にいけそうだし、将来性も楽しみだね」となり納得感が増すのです。

例えば、先の事例であげた「忙しいワーキングマザーこそが誰よりも早く新幹線に乗れるようにしたい」という新規事業のケースを見ていきましょう。

最初の商品は「家から新幹線の駅、ホームまでのベビーカーの通路やエレベータの位置、並ぶ位置などを音声で教えてくれるアプリ」だったとします。
そしてアプリだけでは目指す事業規模に対しあまりに小さかったとしましょう。

ですが、初めにワーキングマザー市場を抑えることで、STEP-2で「ベビーカー利用者向けスーパーアプリ(日常生活のあらゆる場面で活用シーンをもつ)」へ発展することが狙えます。

さらにSTEP-3として「アプリと連動したベビーカーそのものを製造販売する」という、ものづくりの市場に参入できるかもしれません(価値の拡大)

また、このアプリの基礎を別のユーザーに転用し、「高齢者向けの旅行・交通アプリ」や「ハンデがある方向けのサービス」もできるかもしれません。(ターゲット市場の拡大)

このように、まずはSTEP-1で自社の既存技術をほぼそのまま活用し、新たな顧客セグメントに向けた「使い方」を開発することで、新規事業の立ち上げに成功した例など、いくらでもありそうです。


3.重要な軸を定量化して比較する

自社らしい評価基準を考える

ここまで多くのアイデアが出て、どれにしようか迷った時、スコアリングすることで、複数の市場参入アイデアが出た時に冷静に比較することができます。なぜこの市場なのか?と問われた時も答えることができるでしょう。

どんな会社にも合う魔法の評価基準はありませんが、できるだけ数値化して定量的に測れるようにするのをお勧めします。

自社の事業で大事にする「市場性」や「顧客課題の重要度」「新規性」などに加え、自社が決めている参入ドメインに合っているか、などをスコアリングすることがポイントになります。

スコアリングは少し専門知識も必要ですが、一般的に多くの企業では「真ん中によりすぎる」傾向が多いので、差がつくように5段階ではなく4段階にする、など工夫をしたり、より重要な項目に加重係数※を設定するのもいいでしょう。

※参考までに我々MOONSHOT WORKSのコンサルティングでは10項目程度のスコアリング項目があり、「顧客課題」に関する項目を最も加重係数を挙げています。つまりスコアリングした後に、×4とか×3とかするのです。これにより、評価項目の重要度のバランスを保つことができます。

そして、評価した数字を並べて安直に高い方に決定してはいけません。
数字はあくまで参考にしつつ、社内起業家として、チームとして、本当にやりたいもの、モチベーションが湧くものを選ぶのが成功への鍵となります。

例えば、ある社内起業家は、各アイデアを「市場成長の可能性」「顧客にとっての課題の重要度」「自社との適合性」「実現可能性」の4軸で数値化し、最も有望なアイデアを選択することができました。
「現在の市場性」ではなく「成長性」というところがポイントですね。 

この経験を経て、チームのルールとし、最終的にはこの会社の新規事業の評価軸となりました。

このように意思決定のプロセスは簡単ではありませんが、上記のステップを踏むことで、適切な選択肢を選び、ビジネスの成果につなげることができるでしょう。

まとめ 意思決定を焦らず乗り越えるために


この記事では、意思決定ができない3つの原因を分析し、その状態から脱却するための具体的な方法を提示しました。

  1. 仮説構築力を鍛え、顧客の潜在的なニーズを発見する

  2. 斬新なアイデアだけでなく、既存事業の延長線上にある新事業も探る

  3. アイデアを数値化し、定量的に評価する基準を設ける

これらのステップを踏むことで、社内起業家は適切なアイデアを選択し、新規事業の立ち上げに向けて意思決定を下すことができるでしょう。

意思決定のプロセスは簡単ではありませんが、粘り強く挑戦し続けることが重要です。社内起業家の皆さん、この記事を参考に、新規事業の成功に向けて一歩前進してみてください。

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