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既存ビジネスを分解して新ビジネスを見つける!?ビジネスモデルキャンバス(後編)【フレームワーク#16】
みなさんこんにちは、新記事業コンサルタントの藤塚洋介です。
今回ご紹介する「ビジネスモデルキャンバス」Business Model Canvas(BMC)は、あなたのビジネスアイデアを具体化し、成功へと導くための強力なツールです。
前編では基本と間違った使い方を、中編では「既存の市場」からアイデアを見つける手法をお届けしてきました。
第3回目にあたる後編では、既存ビジネスをもとに新しいアイデアを生み出す手法をお届けしたいと思います。
1.アンバンドルの手法【基礎編】
そのやり方とは、既存事業のビジネスモデルを「アンバンドル(分解)」するという思い切った手法です。
あなたの既存事業が成熟しているほど、アンバンドルすることで新しい価値を見つけたり、特定の要素に特化した新規事業を創出したりできる可能性があります。
大手企業は複雑に多角化していることが多いですが、今回のアンバンドルでお伝えしたいのは複数の事業部を分社化したりすることではありません。
1つの事業そのものを「アンバンドル(分解)」してしまうのです。
では早速やり方をみていきましょう。
以下は、ビジネスモデルの分析とアンバンドルのプロセスをステップごとに説明します。
1. 現在のビジネスモデルを理解する
まず、既存事業のビジネスモデルを詳細ビジネスモデルキャンバスに記載しますす。できるだけ詳細に記載することをお勧めします。
今回は仮想のオンライン診断のビジネスモデルを例に進めていきましょう(図1)
![](https://assets.st-note.com/img/1734936547-dNI17z5GTPM2HErJw36YufmF.jpg?width=1200)
2.アンバンドルのヒントを得るための「問い」
ビジネスモデルを構成する要素を分解し、それぞれの独立性や強みを評価します。「アンバンドル」とは、複数の価値や活動が一つのモデルにまとめられている場合、それを分けて考えることです。
BMCのそれぞれの項目ごとの問いのポイントを見ていきましょう。
価値提案(Value Proposition)
提供している価値を分解し、特定の価値に集中する。
・どのような価値を顧客に提供しているか?
・特にコア商品やサービスが競合に比べて尖っているか
・さらにコアサービス、付加的なサービス、サポートに分割して考える
・一つに絞ったらどうなる?
例:パソコンメーカーが「本体販売」だけでなく「サポートサービス」を別事業として展開。
顧客セグメント(Customer Segments)
異なる顧客層が一つのサービスを利用している場合、それぞれのニーズに特化したサービスを検討します。
・誰が顧客で、どのように分けられているか?
・顧客を細分化した時に特に強い・ユニークなニーズを持っているターゲットは?
・顧客同士を繋げたら?
チャネル(Channels)
・顧客にどのように価値を届けているか?
・顧客ごとにチャネルが違うのであればそれも記載
・配送やサポート、オンラインとオフラインといったチャネルごとの価値を独立化。
例:オフライン店舗の体験提供とオンライン通販を分けて運営。
顧客との関係(Customer Relationship):顧客とどのような関係を築くのか?
・顧客セグメントごとのチャネル・関係をセットで考える
・顧客との関係が独特なセグメントは?
収益源(Revenue Streams)
現在の収益構造(製品販売、サブスクリプション、広告収入など)を分析し、新たな収益源を検討する。
・どの部分が一番の収益を生んでいるか?
・課金の方法の違いは?
・価格体系を見直した特化したら?
例:広告収益に依存するビジネスがプレミアムプランを導入。
主要活動(Key Activity):
なにが既存事業のコアコンピタンス(競争優位性となる活動)なのか?
主要資源(Key Resource):
価値を提供するために何が必要なのか?
・そのための資源は?
・その資源を欲している人や企業は?
・主要資源そのものを欲しがっている人はいない?
主要パートナー(Key Partner):誰と協力するのか?
・自社だけが独占できているパートナーは?
・パートナーの課題は?
コスト構造(Cost Structure)
・どの活動やリソースに最もコストがかかっているか?
・どれかをやめたり、逆に投資を増やしたらBMCはどう変わる?
いかがでしたか?
ここでは顧客セグメントの「病院まで移動が困難な方(運転できない、足が悪い、子育て、介護で離れられないなど)」を中心にした新サービスか考えていきましょう(図1)
3. アンバンドル後の事業可能性を評価
ここまでの作業まで分解して、「これ使えるかも?」とアイデアがが出た人はBMCの白紙を作って中心の「価値提案(Value Proposition)」にそのアイデアをプロットして、それが価値だった時のビジネスモデルキャンバスをかいてみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1734938205-Z9MwYDPSisy2vzQUbBcT3KeJ.jpg?width=1200)
例えば、既存オンライン診断サービスの、複数の顧客セグメントから「自宅からの移動困難者」だけに絞ると、仕事しながら子育てや介護で、病院だけに関わらず移動を伴う用事全てがオンランになると非常に助かることが見えてきたとします。
例えば食品など日用品の買い出し、子供の塾、そして嗜好品や趣味なども家で楽しめるといいかもしれません。
ニーズを「移動を伴う用事を全てオンラインで済ませたい」に置くことで、チャネル、関係、だけでなくキーリソースや活動などビジネスモデルキャンバス全てが変わるのがわかると思います。(図2)
ここまできたら分解した要素が独立して事業価値を持つかどうかを検証します。
評価基準:
収益性
アンバンドル後の各要素が独立して収益を上げられるか?
顧客価値
それぞれの要素が顧客にとって必要不可欠な価値を提供しているか?
競争優位性
アンバンドルすることで競合との差別化が図れるか?
運営効率
分割することで運営が効率化されるか、それとも複雑になるか?
このケースだと、3.競合優勢性が重要と考えられそうです。
数あるオンラインサービスの中でどう差別化するかが大きくポイントとなります。例えばターゲットの属性である、仕事しながら子育て、介護をしている方はとにかく時間がなさそうです。
オンラインの診察のついでにいかにスムーズに他のサービスに遷移できるか。その体験でいかに楽になるか?介護や子育ての負担軽減になるか?などの重要な項目で他のオンラインサービスを圧倒する必要がありそうですね。
4.新規事業の可能性を探る
アンバンドルされた要素のうち、以下の視点で新規事業化を検討します:
特化型の価値提供: 特定分野に集中することで、競合優位性を高める。
新しい顧客層の開拓: アンバンドルにより、異なるニーズを持つ新たな顧客を取り込む。
柔軟な収益モデルの導入: 分離した事業でサブスクリプションやプレミアムプランなど新たな収益モデルを試す。.
5. アンバンドルの事例
いくつかの事例を通じてアンバンドルの実際を理解します。
事例 1: 銀行
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従来、銀行は次の3つを一体化していました:
顧客関係管理(取引窓口)
リスク管理(ローン審査や投資)
商品開発(預金、融資、保険など)
アンバンドル後:
ネオバンク(スマホ特化型バンク)が「顧客関係管理」のみを特化。
投資専門プラットフォームが「リスク管理」を分離して展開。
事例 2: メディア
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従来、新聞社は次の3つを提供していました:
コンテンツ制作(ニュース記事の執筆)
広告掲載(広告主からの収益)
流通・販売(読者に新聞を届ける)
アンバンドル後:
ニュース制作のみの「オンラインニュース専業」。
流通特化型の「配達サービス」。
広告プラットフォームの独立展開。
事例 3: ECプラットフォーム
![](https://assets.st-note.com/img/1734943429-pG4JYgPbjR9TdZDlBWma6VFM.jpg?width=1200)
従来、ECサイトは次の3つを一体化していました:
商品販売
決済処理
物流サービス
アンバンドル後:
決済部分を「決済サービス企業」として独立化(例:PayPal)。
物流を分離して「配送特化サービス」に(例:AmazonのFBA)。
アンバンドルは、新しい視点から既存事業を再定義し、効率化や競争力強化、新たな事業機会の創出につなげる強力な方法です。
2.アンバンドルの手法【応用編】
![](https://assets.st-note.com/img/1734940436-RLDhougs3lykqbSjwF0QTeEc.jpg?width=1200)
マッキンゼーのコンサルタント、ジョン・ヘーゲルとマーク・シンガーの提唱した概念。世の中のすべてのビジネスは
①顧客リレーション(強力なチャネルと顧客維持)
②製品イノベーション(製品サービスの開発研究)
③インフラ管理(インフラ開発と規模の経済)
のビジネスの3つに分別することができるはず(図3)
で、これらは経済的に・文化的に・競争面から異なるにもかかわらず、複雑に同居しがちであるとしています。
それらを混同すると結局誰をターゲットにした製品・サービスかわからなくなるので、”アンバンドル(分社)し、企業はどれか1つに特化するべし、とした説なのです。
この説を利用し既存事業のリデザインを考えることができます。
例えば前述の移動困難者向けのサービスは上記の①顧客リレーション(強力なチャネルと顧客維持)と言えます。
オンライン診断ビジネスの顧客リレーションを使って同じユーザーをさらに維持していくようなサービスを重ねて提供するからです。
次に②の製品イノベーション(製品サービスの開発研究)で考えると、地域医療で提供しているものを、他の地域で困っている自治体に向けて提供する。全国向けにする。海外向けにする。医療を学ぶ人に提供する。
などコアな価値だけを法人事業者に提供する。というのが考えられます。(図4)※ビジネスモデルアイデアであり医療業界の制度。事情には配慮できていない可能性がありますが、モデルの考え方として参考にしてください。
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。
最後に③のインフラ管理(インフラ開発と規模の経済)に当てはめると通常リアルでしか提供できない、またはリアル提供が常識になっているものをオンラインにすること自体を支援をするサービスや、ITエンジニアがいない事業者のための保守支援サービスがあるかもしれません。(図5)
コロナ禍なら流行りそうですよね。
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いずれも自社の得意なところだけを切り出し、苦手なところはバッサリ切り捨てることで価値を尖らせることが期待できるのです。
最後に:ビジネスモデルキャンバス活用の総括
![](https://assets.st-note.com/img/1734943493-b1h60jkq4mtrugc3KEsIRQPG.jpg?width=1200)
ビジネスモデルキャンバスは、事業の全体像を可視化し、関係者間での共通認識を形成するための強力なツールです。
新規事業の立ち上げ、既存事業の改善、競合分析など、様々なビジネスシーンで活用できます。そのメリットは、視覚的に理解しやすい、簡単に作成できる、柔軟性が高い、共同作業がしやすいなど、多岐にわたります。
そして、デジタル化、グローバル化、サステナビリティなど、ビジネス環境は常に変化しています。これらの変化に対応するためには、既存のビジネスモデルを革新し、新たな価値を創造していく必要があります。
ビジネスモデルキャンバスは、これらの変化に対応するための思考ツールとしても活用できます。
ビジネスモデル編の三回いかがでしたか?
ビジネスモデルキャンバスを使った事業づくり、アイデアの検証、ビジネス体制づくり、事業計画への反映などは私の会社MOONSHOT WORKSのコンサルティング「スキルCUBE」でも支援しています。
みなさまのビジネスが発展することをお祈りしています!
よくある質問 (FAQ)
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Q: ビジネスモデルキャンバスはどんなビジネスにも適用できますか?
A: はい、業種・規模に関わらず、あらゆるビジネスに適用できます。スタートアップから大企業、NPOまで、様々な組織で活用されています。
Q: ビジネスモデルキャンバスを作成する際に、一人で考えても良いですか?
A: 一人で考えることも可能ですが、チームで議論しながら作成することで、より多角的な視点を取り入れ、より精度の高いキャンバスを作成することができます。
Q: ビジネスモデルキャンバスは一度作成したら終わりですか?
A: いいえ、ビジネス環境は常に変化するため、定期的に見直し、アップデートしていくことが重要です。市場の変化、顧客ニーズの変化、競合の動向などを踏まえ、必要に応じて修正・改善を繰り返しましょう。
Q: ビジネスモデルキャンバスとリーンキャンバスの違いは何ですか?
A: リーンキャンバスは、スタートアップ向けに特化し、ビジネスモデルキャンバスよりも、問題解決と検証に重点が置かれています。
特に「問題」「解決策」「主要指標」「顧客セグメント」を重視することで、素早い検証と改善を可能にします。
Q: ビジネスモデルキャンバスを作成するのにどれくらいの時間がかかりますか?
A: ビジネスの複雑さやチームの熟練度によって異なりますが、初めて作成する場合でも、数時間から半日程度で作成できることが多いです。