中論・認知行動療法
「中論(ちゅうろん)」は、古代インドの哲学者、龍樹(りゅうじゅ、ナーガールジュナ)が書いた本で、仏教の「空(くう)」という考え方を説明しています。 
「空」とは、すべてのものが固定された実体を持たず、互いに関係し合って存在している、という意味です。例えば、私たちは普段、物事が「ある」か「ない」かで考えがちですが、龍樹は「ある」とも「ない」とも言えない状態が本当の姿だと考えました。
「ある」と「ない」に対する執着を手放し、現実の真理を洞察する道を説いている。
この考え方を理解することで、物事に対する執着や偏った見方を減らし、心を自由にすることができるとされています。つまり、物事を一面的に捉えるのではなく、多角的に見ることで、より深い理解や平和な心を得られる、という教えです。
例えで言うと、アメリカの子どもとイラクの子どもを同じように見ることができれば、争いを避けることができる、ということ。これは、物事を広い視野で捉え、すべての人や物事がつながっていると理解することで、平和な関係を築ける、という考え方に通じます。
このように、「中論」は、物事を固定的に捉えず、柔軟な視点を持つことの大切さを教えているのです。
行動認知心理学における「抽象度」の捉え方にも近しいものがあり、物事をどの程度一般的または具体的に捉えるかを指します。この概念は、私たちが情報を整理し、理解する際に重要な役割を果たします。
例えば、ある対象を認識する際、その抽象度に応じて以下のように分類できます:
• 低い抽象度(具体的):「トイプードルのポチ」
• 中程度の抽象度:「犬」
• 高い抽象度(抽象的):「動物」
このように、同じ対象でも、どのレベルの抽象度で捉えるかによって、認識の範囲や視点が変わります。具体的なレベルでは詳細な情報に焦点を当て、抽象的なレベルでは広範なカテゴリや共通点に注目します。
抽象度を適切に調整することで、情報の整理や問題解決が容易になります。例えば、特定の犬種の特徴を理解したい場合は具体的なレベルで考え、動物全体の生態系を考慮する際には抽象的なレベルで捉えることが有効です。
このように、抽象度の概念を理解し、状況に応じて適切なレベルで物事を認識することは、効果的な情報処理やコミュニケーションに役立ちます。
私はこれまで、その場その場で人を判断しがちでしたが、相手の関係性や生い立ちなど、背景全体を考慮することで、なぜその言葉が発せられるのかを理解しようと努めるようになりました。たとえ相手が強い言葉を使ったとしても、その選択の意味を否定的に捉えずに受け止めることで、攻撃的な人に対しても穏やかに対応できるようになりつつあります。人間は自分も含めて不完全な存在であり、相手の不完全さを受け入れることで、ようやく自分自身も許せるようになると感じています。この姿勢を自然に身につけたいと思っており、『中論』の『行動認知療法』この考え方と通じる部分があるように思いました☺️